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    𓄿𓅓𓄿𓏏𓍯𓅱

    絵描きでもなければ字書きでもない

    表に出るような人ではないので身内だけで盛り上がれれば良いです

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    POIPOI 29

    やっと翠千のモチベが回復してきたから文字だけでも復活させたいねっていう

    そしておまたせしすぎましたごめんなさい

    高峯26歳、守沢28歳です

    1つの花と2つの意味 俺は守沢先輩のことが好き。いつからだっけ……。
    恐らく高校生の時からずっと好き、多分。
    もう、10年も片想いしてるなんて女々しいと自分でも思う。だけど、あの人の笑顔や眩しさがいつの間にか自分の人生に無ければならないものになってた。
     それを見るのが俺の唯一の楽しみだった、救いだった。
    でも……、救いであると同時にその時から俺は呪われていたのかもしれない。あの人に対する感情が全部花となって俺から吐き出されるようになった。最初は少しだけだったのに、守沢先輩への想いを自覚して強くなっていく度に悪化していた。この病気は薬とか治療法とか分からないらしいから、せめて守沢先輩にバレないようにゆるキャラを見てその瞬間だけどうにか隠していた。
     今までは。

    ___でも、もう無理かもしれない。
    なぜなら、守沢先輩は俺の知らない誰かと一生を誓う、それを知ってしまったから。
     あの人は昔も今も皆から愛されててテレビでもずっと引っ張りだこだった。そんな人が誰かと結婚して、家庭を築いて……想像するだけで吐き気が……
    「ゔっ、ゔっぁあ……ぁ……」
    またやってしまった。こんなこと知りたくなかった。嘘であってほしかった。
    辺り一面鮮やかな赤の欠片が散りばめられている。それが自分が吐いたものだと認識すると汚くて、そしてまた息をするのと同じように花を吐いていく。
    「はぁ……はぁ……」
     ただでさえもう地獄の底にいるのに。
    〜〜〜♪
    今一番見たくない文字、今はもう聴きたくない流星隊の……コメットショウのときに披露した曲。そう、守沢先輩からの着信だ。
     どうせ無視したってまた掛けてくるに違いないから仕方なくスマホのロックを外して無機質な物体を耳に当てた。
    「もしもし!俺だ!」
    「うるせえ……今気分悪いんで要件なら手短にしてくれます?」
     久しぶりに聞いた先輩の声は昔から変わらない元気な声。なのに、どこか大人びていてそれだけでも俺はまた先輩に置いていかれた感覚になっている。
     そんなことを知らずにあの人は話を勝手に続ける。
    「それはすまない!実はお前に結婚式に来てほしくてだな」
    「……え」
     俺は膝から崩れ落ちることしか出来なかった。先輩が結婚するだけで俺は今すぐにでも死にそうなのに。その様子を見届ける、つまり事実を突きつけられるということ。
    ……無理に決まってる。
    「おーい高峯?もしもーし?後でメールと招待状送るから後で見といてくれると嬉しい!」
     もう何も聞こえない。聞きたくないだけ。
    そう思いながらまだ聞こえてくる元気な声を遮断した。
    少し心を落ち着かせて俺は先輩からのメールを見る。どうやら流星隊のメンバー皆来るみたいで、俺だけあの人を祝福しないことは許されないような状況に置かれていた。
    「諦めないといけないんだ……上手く笑えるかな……」
     俺は真っ暗なスマホの画面で自分を映して歪に笑う。その笑顔は見るに堪えなくて、どうすることも出来なかった。

     あの日からずっと誰にも伝わることの無い気持ちを吐き続けてたら、ついに俺の恋を本当に諦めなければいけない日がやってきてしまった。
     式場に着き、近くにあった椅子に腰を掛けていたらあのうるさい声が俺に話しかけてきた。
    「高峯!来てくれたんだな」
    「うわ……久々に生で聞くとこんなうるさかったっけ……?というか着替えるの早くないですか」
    「そうか?もしかすると、少し気分が浮ついているのかもしれないな!」
     あぁ……そうだよね、この人はこの日を待ち望んでたんだもんね。こんな無邪気に喜んじゃってさ……。それにしても、白のタキシードに身を包んでヘアアレンジが施されている雰囲気の少し違った守沢先輩は……この世のものとは思えないほど本当に綺麗だと思った。
    「どうしたんだ?もしや俺のこの格好いい姿に見惚れちゃったか?……って高峯の格好良さには敵わないけどな」
     そうだよ、とっくの昔からあんたに惚れてるよ……、このままだと俺は守沢先輩に酷いことしか言えないかもしれない。早く渡すものだけ渡しとこう。
    「話を遮るようで悪いんですけど守沢先輩、これ……今のうちに渡しときます」
    「おおっ!とても綺麗な花束だな、俺が貰ってしまってもいいのか?」
    「他に渡す相手いないでしょうよ……」
    (あんたのせいで出来た花束なのに貰ってさえくれなかったらどうすればいいんだよ……)
    「……そうか、ありがとう!大事に飾らせてもらう!」
     これで多分良かった。守沢先輩のことだから俺の吐いた花の意味どころか、俺が吐いたものだとも分かるはずが無い。もう、俺の役目は終えた。それをあの人の笑顔を見て確信したから、その笑顔は役目を終えて安心してしまった俺の最期の景色だった。

    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

     さっき俺は高峯から綺麗な花束を貰った。……それだけなら良かったんだ。そんな高峯は嬉しそうにする俺を見て微笑んだまま、くれた花束のように綺麗な顔で床に倒れ込んでしまった。その後、奏汰たちが駆けつけて高峯を病院まで運んでもらったが、新しく来た連絡には「みどりはしょくぶつじょつたいになっていて、そせいもむずかしい」とのことだった。要するに、高峯はもうすぐ死んでしまう。
     俺はなにか間違えてしまっていたのだろうか。だとしたら一生をかけて償わなければならない、大切な仲間を救えないでヒーローなんて名乗れない、名乗る資格なんかない。
     今の俺に何が出来るのだろうか、もうヒーローと呼べないような俺が意識のない高峯の側にいるだけで何か変わるのだろうか、また前に戻ってしまうのか。
     式どころでは無くなってしまった今、俺は高峯からもらった花束を抱えて病院へ駆けつける事にした。
    ………
    「みんな……!高峯は……!」
    「守沢先輩来たッスね、翠くんはこの通り意識が戻らないッスよ」
    「急いで来たのはわかるでござるが、その花束は一体?」
     病室には俺以外の流星隊が揃っていた。だが、誰一人として笑顔なんて浮かべてなかった。
    「あぁ……、これはさっき高峯から貰った花束だ、とても綺麗だろう?」
     俺が花束を見せた瞬間、場が凍りついた気がした。やってはいけないことでもしてしまったのか……?そう疑問に思っていると奏汰が口を開いた。
    「きっとそれは、みどりです」
    「?確かに高峯から貰ったものだぞ?」
    「そうじゃありません、みどりからつくられたんです、その『はなたば』は」
     高峯から作られている?それはどういうことなんだ……?俺には何もわからず聞こうとしたら南雲が説明してくれた。
    「要するにその花束は病気によって翠くんから吐き出されたものッス、その花に養分を吸われてたんスよ……10年前から」

    「10年……?そんな前に何が……あっ……、」

    「俺の……せいなのか……?」

     あいつと出逢ったのは10年前だ、もしかして高峯はずっと俺のことで苦しんでいたのか……。
    「一概には言えないでござるが、この花達の花言葉とかを調べてみると恐らくそうでござるな……」
    「ちあき、それにはあまりさわらないほうがいいですよ、みどりと『おなじ』になっちゃいますから」
    「……そうか、ありがとう」
     隊員達からの言葉を聞いて俺は病院の屋上に立ち寄った。白い天井、先が見えない廊下、無機質な匂い、動けない過去、どれを取っても病院にはあまりいい思い出が無い。

     でも、俺のせいで高峯がここで死んでしまうなら俺もそうするべきなんだ。もう救えない、だから自己満足にはなってしまうが。片手にはカンパニュラの花を、もう片方の手でフェンスを掴んだ。
    「ヒーローとしても先輩としてもこんな不出来なやつですまない、高峯」
    「本当は気付いてたのに……ごめんな」

    偶然にも赤の流星と緑の流星は同時に光を失った。
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