「……はぁ……」
今日も一人。
人が賑わう神社、周りを見渡せば家族や友達やカップルで来ている人ばかりで俺みたいなやつは当然、浮いた存在。
「なんでこういう日まであの人は仕事なんだろう……」
本当だったら守沢先輩と二人で初詣に行けるはずだった。なのに、現場側のミスで突如ドラマの撮影をやり直す事になってしまったらしく、演者やスタッフの予定が合う日が今日しかないという理由で守沢先輩は仕事を選んだ。……そりゃそうなんだけど、最近中々会える日がなかったから久々に話せると思って楽しみにしてたのにな……。
そんな寂しさとか悔しさとか恨みとかを一旦忘れることにして、御賽銭に俺があの人に抱えてる気持ちの分お金を入れて、神に強く祈った。
__あのとき一体何を祈ったんだろう。
先輩に会いたいとか話したいとか、流星隊がこれからも仲良くあってほしいとか、家族が健康でありますようにとか、それも思うけどそんな単純な願いじゃなくて。
もっと、こう……自分では制御出来ないほどの心の中の怪物が支配していくような……、思い出すのも怖くなる。
どうせ神頼みなんて気休めみたいなものだ、願いを忘れるくらいがきっとちょうどいい。そう思ってたのに、神社に出ていた屋台の方を見ると見覚えのある赤茶の髪が女性と一緒に歩いていた。
多分あれは紛うことなき守沢先輩だ。俺があの人のことを間違えるわけがない。
でも、ドラマの撮影が終わったと考えてもなんで二人で神社に行ってるのかな……って思い始めたら急に恐ろしくなった。先輩は俺よりも大事な人が居て、俺よりも好きな人が居る、嫌だ、そんなの嘘だ……。だって、あの人は俺の笑顔がいちばんの宝物だって言ったんだ……!なのに、そんな俺よりも宝物だと思えるものに出会ったんですか……、もう俺は、守沢先輩にとって宝物じゃなくてただの意志を持つ置物でしか無いんですか……。
……視界がぼやけてふらふらする。
捨てられるかもしれないことが今は何よりも怖い。あの人はもう俺を追いかけて来てはくれない、この虚しさをあの人には分かってもらえない。
だけど、俺も守沢先輩のことは何も知らないんだから責める理由が無い。
俺じゃ先輩の目線を奪うことも出来ないんだ。
燃えるハートの男に心を凍らされた俺は深く傷付き、痕が消えることはなかった。