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    屍屋@榎土の人

    @akbnssg

    成人とっくに済んだもの。エログロゴアはポイピク避難勢。幕末〜明治期と禁酒法時代あたりが好きです。主に最近明治の政治家にトチ狂っているし【腐った解釈が大いに有】。あくまで歴史をモデルにしただけの個人の創作。榎本総裁と土方陸軍奉行並にトチ狂うたアカウント

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    屍屋@榎土の人

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    榎土
    なんかちょっと耽美寄りなので注意

    #泡沫の戯言
    #創作幕末
    creativeEndOfEdoPeriod

    朧月「そうやって人を狂わせてる自覚あるのか?アンタ」
     いつもと違うどこか抑揚のない声が感情を見せずに発した。そんなもの余程俺よりもアンタの方がわかっちゃいないだろうと榎本は今にも言いそうになったのを、寸でのところで飲み込んだ。結局は互いに何かを狂わせているのだと、理解をした。それは決して愛や恋などというものではない。近いもので言えば執着や独占欲に近しいだろうか。気軽に欲を吐いたとしても引きもしなければ同じような境界線に棲むその男はいつも受け入れるものだから、感覚が麻痺していただけだ。
    「……お互い様じゃないか?」
    「言うじゃねぇの」
     あぁどうして自分は、彼の首に手をかけたのだったか。視界に映る自分の手を見て思案する。衝動は確かにあった、だが、それだけじゃないはずだ。決して彼を殺したいと言う、敵対心や猜疑心からくる殺意ではない。もっと別の…焦燥と執着と憧憬と。
    「榎本さん……いいよ」
    「……。」
    「アンタになら、かまわねぇよ。」
     許諾の言葉を吐いて、目を閉じるその姿はどうしようもなく綺麗なものだと脳が判断をする。
     彼は今確かに、自分にであればこのまま殺されることも構わないと言い切った。その言葉を理解するのに見惚れていたせいか数秒時間を要したが、あまりにもそれがとんでもないことであることぐらいはこの螺子の外れかけた脳でも分かる。試しに少し力でも入れてみようか、いやそんなわけにもいくまいよ。と手を離そうと試みたがそれは自分の下にいる男によって拒否された。スルリと自分の手を撫でるように掴まれて思わず息さえ呑んでしまう。
    「……、君さぁ俺がしないこと分かってるだろ」
    「さぁな。流石に腹の内まで読めるような芸達者になったつもりはねぇからな」
     くっくっと自分の手が触っている彼の喉が嗤う音が、動く感触がした。何故だかたったそれだけのことで今にも気が触れてしまいそうで思わず力みかけた時だった。
    「あはは……!冗談だよ、悪かった悪かった」
    そう言って急に土方は手を掴んだまま移動させて心境の読めやしない薄い笑顔を貼りつけた。
    「冗談……ね。随分悪趣味だな」
    「そうかもしれねぇな」
     スルスルと移動させられた己の手はそのまま土方の意志によって彼の頬を撫でさせられる。野郎に撫でられるなんて嫌だろうにと至極真っ当な思考に一瞬陥りもしたが、その手に水分が当たったことによって正常な思考回路など吹き飛んでしまった。
    「ひっ、土方くん!?」
    「うるせぇ」
    「えぇ……」
     なぜだか悔しそうに泣いていたその顔に思わず驚いたものの、これ以上追求するのも気が引けるとそのままにしてしまうのは、自分の中の何かが満たされていく気がしたからだろうか。
    (きっと、こんな顔見た人はいないんだろうな)
     自分でも呆れるほどの執着……独占欲だと思った。過去は知らないが恐らくは自分だけがこの、鬼だのなんだの言われた男自ら泣き顔を晒されていると。それだけ自分がこの男の人生にこの短期間で食い込んでいるのだと実感する。
    「……もっと、アンタの夢を一緒に追ってみたかったよ」
    「……もう一緒に追ってくれないのか?大丈夫だよ土方くん。きっと出来るさ」
     それは普段ならふざけながらでも外堀を埋めてから自信を持って言う自分にしては珍しく、根拠のない台詞だった。戦において何も大丈夫なことなどない。いくら用意周到に勝つための道筋を立てていたとしても死ぬ時は死ぬものだ。そのぐらいの心得はしてあるが。
    「……、かっちゃんが……夢枕に立って、言ったんだよ迎えに来たって」
    「…………」
    「別にいつ死んだって構わねぇけど、俺は、アンタのでっけぇ夢をこの目で見たかったよ」
    「……、あのさぁ、こういうところで昔の男の名前を出すのは野暮じゃないか」
     グッと手に力を入れて自分を狂わせるそいつを押し倒してやった。その言葉も動作もなにかを考える前に出たものだった。
    「まだ死なれちゃ困るんだよ」
    「……そんなもん、運命とやらにケチつけてくれ」
    「死ねなくすればいいんだろ?それに絶対に死ぬかなんてわからないし。」
     スルスルと手を肌を伝うように撫で下ろしていく。
    ちょうど心の臓の真上あたりで止めておけば、一定の拍子で動く感触がした。
    「生きてるだろ、死人の言葉より自分の命を信じろよ。生きてる相棒の言葉を信じてくれよ。」
    「……。くすぐってぇよ」
    「わざとに決まってるだろ。……どう?少しは生きる気になったかい?」
    「さぁな、どっちだと思う?」

    「参ったな、腹の内まで読めるほどの芸達者になったつもりはないから分からないな」

     真似するなよ、と一言だけ言って笑った彼はまるで朧月のように儚げだった。


    (君を思い出にして生きる俺を恨めばいい)
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