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    屍屋@榎土の人

    @akbnssg

    成人とっくに済んだもの。エログロゴアはポイピク避難勢。幕末〜明治期と禁酒法時代あたりが好きです。主に最近明治の政治家にトチ狂っているし【腐った解釈が大いに有】。あくまで歴史をモデルにしただけの個人の創作。榎本総裁と土方陸軍奉行並にトチ狂うたアカウント

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    屍屋@榎土の人

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    榎土大捏造
    ありがとうございます自己満です

    BL未満(近しい表現有り)

    #創作幕末
    creativeEndOfEdoPeriod
    #泡沫の戯言

    感情「…………。それで?」
    (うわーーーー怒ってるよなぁコレ……)
    極度に冷え込む箱館に聳える五稜郭。此処を要に創立した蝦夷共和国の総裁は、目の前で仁王立ちしている男に見るも無残なほどに怒られている状況である。間違ってでも彼に駄々をこね、譲り受けた自身のかわいいかわいい小姓である田村銀之助、もしくは彼の優秀で勝気の小姓の市村鉄之助が入ってこないことを願うばかりだ。
    「分からなくはねぇよ、浮かれたい気分もよ。だけどな、雪さえ解けりゃいつ戦が始まってもおかしくはねぇし内部に潜り込んでない絶対の可能性なんてねぇんだぞ、おい聞いてんのか榎本さん」
    「うん、聞いてるぞ。」
    確かにこの日は特別で、蝦夷共和国の創立記念に宴会騒ぎであったし、榎本武揚は立場上酒を飲まねばならない。まぁ米の水……で酔いが回ることは無いはずだが。それにしても目の前にいる男が自分を見るその顔は、いつ見ても整っており妙に長い睫毛も白い肌も、纏う雰囲気さえも同性だと分かってるいても色気のあるものだと話を聞き流しながら思っていた。
    「…………、分かってんのか?アンタには生きてて貰わなきゃ困るんだよ……」
    (ー……あ)
    誰を思い出したのか、その精悍な顔つきが後悔に歪んだ一瞬を綺麗に捉えてしまった。同時に意味の分からない感情だけが渦を巻く。自分の知らないところで自分が詳しく知りえない相手を思って、よりによって自分の目の前で顔を歪められてしまっては、榎本の中に巣食っていた独占欲によく似た感情が黒く変色するような、そんな音がした。別にこれは愛や恋とは違うものな気がしたが、その感情の正体までは分かりはしない。それでも、土方がそのような表情を自分以外ですることが何処かいけ好かないのだ。
    「……なんだよ」
    「え?」
    「え?じゃねぇよ。急に人の腕掴んどいて何も無いとか言わせねぇぞ、なんだ?まだ浮かれてたいってか?」
    「……いや、そうじゃないが…………。…………。」
    「ハッキリしねぇな、言えよ。とりあえず言え」
    言え。そう言われたとて、まず言葉に起こすことが難しい感情であることを理解はしてくれないのだろう。しかしあこのままだと言うまで永遠と説教をされるに違いない。得意の口先三寸で誤魔化しておきたいが、どうにも土方にはそれが通じないこともわかっていた。おそらくは彼も自分と同じで口が上手い部類の人間だからだろうが、通じないとわかっている相手にそれを使うなどそれほどの愚策はない。ここは正直に言う方がきっとこの男から逃れるには手っ取り早いのだが、それを言うとなんだか負けた気になる。
    (恋煩いよりも面倒だなこりゃ……)
    顎に手を添え暫し返答を思案しながら、土方を覗き見ようとすればバッチリと視線が混じり、早く言えと言わんばかりの表情でこちらを睨んでいる。
    「あー……うーん…………餅をやいてた、んだな。うん」
    「はぁ?」
    「……そうか、……はぁーーー」
    「いや、盛大な溜息つきたいのはこっちだが?」
    言葉にしてようやく簡単なことに気がついた。嫉妬だった。気づいてしまったら後は簡単なことで、自身が抱く感情がとんだ歪なものでそれを制御すればいいのだと理解はした。できるかは別として、だが。何せ無意識に嫉妬心を燃やしているのだから、どうにも手の打ちようがない。気づいた今でさえ未だ煮え切らない靄を抱えているというのに、だ。
    「……で?アンタは何に餅を妬いたんだよ榎本さん」
    顔を上げれば此方をニヤけた表情で見ている土方がおり、自分がつい、遠巻きに言った言葉の意味を理解されていると気がつくのに時間は掛からなかった。
    「悪趣味だな…………」
    「どっちがだよ、今の流れはアンタのが悪趣味だと思うぜ。……で?」
    「…………、言うまで終わらないやつじゃないだろうな?これ」
    「分かってるんじゃねぇか」
    くっくっと喉を鳴らして笑う土方はさっきとうってかわって楽しそうで、その目に映るのが榎本武揚という人間であることが無性に喜ばしかった。
    (代わりでもいいと、思った。君は随分戦慣れしていて頭が回るから俺達には欠かせない存在になるだろうって打算で君を連れて来たけどー……)
    今は嫌だ。と脳内がそう言っている。自分は彼にとって唯一の何かしらでありたいのだ。親友や恋人なんかじゃなくて構わない。それでも何か、唯一の存在でありたい。
    「…………、君の今の相棒は俺だろ」
    「……あ?うん、そうだな」
    「別に新撰組を忘れて俺と生きてくれなんて言わないが、……言うつもりも毛頭ないが、…………なんというかな……」
    「ー……」

    「あ、これだ。俺といる間ぐらい俺を見ちゃくれないか?」

    「は……?」

    まるで自分自身で「都合のいい男にしてくれ」と言っているようなもんだとは思ったが、自分の中の答えに一番近い言い回しがこれだったのだ。実に、しっくりきた。一人で勝手に納得していれば、さっきまで怒ったり揶揄ったりと忙しかった土方からはなんの反応も帰ってこない。それもまぁ致し方ない。告白紛いの口説き文句のようなものをまさか男からぶつけられるなど思ってもみなかったのだ。それも自分を救った男からそのような重たい感情が向いていた等これっぽっちも思っていなかったのだから。
    近藤の時のように、大勢、群衆、仲間のための優しい大将であると思っていたからだ。その大勢の中の一人にしか過ぎないだろう。だからこそこちらが抱える拗れきった憧憬になど気づかない、もしくは気づいていて知らない顔ができるのだろう。と思い込んでいた土方からすれば、とんでもない事態なわけだ。
    「……?土方く……ん……?」
    「…………………………。」
    「顔、真っ赤だけど……」
    「うるせぇ!アンタには分からねぇだろうよ……っ今日はもう戻っちまえ、酔いつぶれてくりゃいいだろ」
    「えっ、えっ?さっきと言ってること逆じゃないか!?」
    「うるせぇー!」
    まるで幼子のようなやり取りをしつつ、半ば強制的に榎本を外に出してしまえば、ズルズルと徐々に脱力し座り込んで行く。
    「…………勘弁してくれ……」
    こんなところまで来て、やっと、叶うのかと。

    (あなたの愛刀でありたいだけだった)



    「……………………。勘弁してくれよ…………」

    一方で無理に外に出された、榎本の方も困惑したように来た道を戻っていた。
    (なんだ、あの顔。…………、調子狂うな)

    (それでもやはり、愛でも恋でもなくて、君は夢そのものだ)
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