氷室が先に片思いするか検証という名の妄想■氷室俊介
一人のことが好きだったかと聞かれると、好きだけどそれは恋愛というより神仏に誓うイメージだった。だもので、その、どこか神々しかった一人を人間へと引きずり落とそうとしてる富永くんにも、氷室は好意や興味を持っていた。あの閉鎖された村で崇められて朽ちていく運命だった一人がこれからどうなっていくのか、遠くから見守りたいと思い、でもやはり、自分の手で親友を因習から救いたくなかったかと聞かれたら、それは救いたかった、というのが本音だった。因習が追ってこれない異国の地に逃げられるよう、氷室が地位を築き、後ろ盾になりたかった。
米国に来たあとは、別に一人は氷室と一緒にならなくて良い。自由になった一人は、一人自身のために生きてほしいと思っていた。
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