「ーーーーー あ」
闇の中、言葉を発したような気がした。「気がした」というのは本当に自分で発したのか分からなかったからだ。意識はここにあるのに自分が自分じゃないような、どこまでが自分までなのかが分からないような不思議な感覚。
あれ?そういえば僕はどんなだったっけ?
分からない、いや…違う。「思い出せない」
名前も、自分がどんな人物だったのか、何故ここにいるのか、何故記憶を失ってるのか。
何も「思い出せない」
何かないのか、手探りで進んでいると、もふもふした何かにぶつかった。
「あっ白澤様だ!やっと見つけた!」
「えっと…君は?」
「シロ」と名乗るもふもふの塊は僕を探してここまで来たらしい。しかし真っ暗な場所を進んでいるうちに、方向が分からなくなり、途方に暮れていた時僕に見つかったようだった。「白澤」というのは僕の名前らしい。
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