夏五版ワンドロワンライ第76回お題「鳴り止まない」 あのときからずっと、拍手が鳴り止まずにいる。
「――――る、すぐる!」
肩を叩かれて、我に帰る。息が触れ合うほど近くに訝しげな表情をした親友の顔があり、思わず仰け反った。
「なに、さとる」
「何って…お前、どうしたんだよ。着いたぞ?」
夏油の態度に少々気分を害した、もとい拗ねた顔を隠さずに唇を尖らせ、親友――五条は屈んでいた上体を起こした。
瞬時に視線だけを動かして周りを確認する。見慣れた車の後部座席、嗅ぎ慣れた芳香剤。大きく開けられたドアに半ば寄りかかるように五条が立っている。
ああそうだった。
朝早くから、五条と一緒に高専を出発した。もちろん、任務のためだ。隣県にある廃校が今回の目的地である。取り壊しが決まったが、工事に入ろうとすると立て続けに怪奇現象が起こり、ついには怪我人まで出たのでなんとかしてほしいという内容だ。
2132