CoC探索者の過去的なsomethingCase.1 精神科医・桶川圭
「父を救いたかった」
「母を救いたかった」
そう言葉を零す少年の齢は13歳。両親は家に押し入った強盗の手によって奪われ、彼が駆けつけた時にあった熱も気づけばとうに消えていた。
桶川圭の家庭はごく一般的な家庭と言ってもいい。父は大手企業に務めるサラリーマン。母は専業主婦であり、圭も外で友人と泥だらけになるまで駆け回っては午後のチャイムで帰宅するヤンチャな少年であった。そんな彼が中学に上がってすぐの頃、彼が部活動で夜遅くに帰宅すると不思議と家の電気は消えていた。開けっ放しの鍵に嫌な気配を感じた圭は直ぐにリビングへと駆け込む。
机の上には赤黒い液体のかかった圭の好物の回鍋肉。家族3人の食卓を囲んでいた椅子は無惨にも倒れていて、そのうちの一つは足が根元から折れている。床にもばら撒かれた赤黒い液体は転々と奥のシステムキッチンへと続いていた。
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