あだしゅ140字SSお題『これ以上甘やかして、どうするの』
「悠くん、ごめん。朝食作らないで寝過ごして……」
僕の代わりに朝食を作ってくれた恋人に頭を下げた。
「許しません。でも透さんが一日そばにいるなら許してあげます。……なんて」
笑って言う悠くんに罰でも何でもないじゃないかと思う。本当にこの子は甘いな。僕をこれ以上甘やかしてどうするの?
お題『裏切り、ごめん』
後悔をしたのは犯人が分かったあの日だけかもしれない。今こうして犯人に繋がる証拠を燃やしても後悔なんてない。むしろ足立さんとの絆が深まったことに喜びを感じたんだ。きっと幸せになれるって思ったんだ。
みんな、裏切ってごめん。でも俺は足立さんの隣に居られるなら何でもできる人間なんだよ。
お題『そろそろ気付いてよ』
ずいぶんと白々しい笑顔が似合うようになったじゃないか。僕をかばった罪悪感はもう消えたのかい?
それならそろそろ気付いてよ。僕は君が思うよりずっと執着心が強いんだよ? それともそうやって僕を焚き付けているのかな?
だったら体にたくさん教えてあげないといけないねぇ。可愛い僕の悠くん。
お題『新手の誘い文句ですか?』
「悠くん、服脱がしてよ〜」
酔ってご機嫌な透さんが猫なで声を出す。何を求めているのかは何となく想像できた。
「それ、新手の誘い文句ですか?」
「正解。ベッド行こ。酔ってるけど君を喜ばすことはできるからさ」
俺が拒否しない前提で話すんだから……。透さんの言葉を否定する訳はないんだけど。
お題『なんで怒らないの!』
「なんで怒らないの!」
冷えた夕飯を前になんで僕が怒ってるんだか。
「怒りませんよ。ベッドに来てくれるなら」
有無を言わせない笑顔。これは朝までコースだ。やっぱ夕食前に寝たの怒ってるな。
諦めた僕を見て悠くんの笑みが深くなる。はぁ、怒られた方がマシだと一晩掛けて体に叩き込まれそうだ。
お題『美味しそうに見えた、なんて末期だ』
酒の勢いってヤツは怖い。上司の家で男を押し倒してんだから。
「俺を足立さんの好きにして下さい……」
頬を染める彼が美味しそうに見えた、なんて末期だ。
はは、男としての機能は使えるらしい。ならヤることはひとつだ。
唇を奪うのに躊躇がないとかどうかしてるよ。全部誘った悠くんが悪いんだ。
お題『ただの友達は、こんなこと、しない』
「俺たちの関係って何でしょう?」
男ふたりの乗った狭いベッドの上で足立さんに尋ねる。
「友達かな? 肉体関係だけの、ね」
彼の言葉はきっと正しい。でも優しい手付きも行為中の熱い視線も体だけの友達に対するもの?
本当は違うって希望が捨てられない。ただの友達は、こんなこと、しないなんて。
お題『酷い男』
「えらいえらい」
倒れ伏した仲間達のそばで足立さんは頭を撫でてくれた。
「花丸あげるよ」
俺の手に描かれた花丸は目に見えずとも幸せの証とばかりに心を温めた。
仲間を裏切ったというのにこんなにも満たされてしまうなんて……。
あなたは酷い人だ。けれどそんなあなたを誰よりも愛している。