Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    maroumahoyaku

    @maroumahoyaku

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🍶 🍷 🍺 🍻
    POIPOI 37

    maroumahoyaku

    ☆quiet follow

    続き。ラブホにいるけどお話してる。
    どうするか考えてないので行き詰まっている…。

    一度頭の隅に追いやった違和感は、そこで確実に根を張っていた。今までのセックスを思い返してみても、「強くして」「激しくして」とねだられることはよくあったし、実際そのとおりにすると気持ちよさそうな反応を示していた。セックスなので当然なのかもしれないが、ランガは剥き出しの本能でほぼ全力を出してしまっているし、それは暦の身体に残る痕からも窺い知ることができた。この前の夜だけじゃなくて、それより前も、申し訳ない気持ちで胸が焼けることは度々あったのだ。

    だからこの際、はっきりさせておきたかった。痛いのが好きなのか、そうじゃないのか。そうじゃないなら、セックスの最中におけるある種のリップサービスとして受け取るつもりだ。ランガはできるなら、優しく、壊れ物を扱うみたいに、丁寧に暦を抱きたかった。
    ランガに、セックスについて相談できる友人は暦しかいない。直接聞く以外なかった。

    「暦」
    「ん〜?」
    「ラブホテル行こう」

    ぶーーーっと飲んでいたサイダーを噴き出す。ここが学校の屋上でよかったな、と、コンクリートに吸われていく炭酸を見つめながらランガは思った。

    「おまっ、こんなっっ、ばかやろ!!だ、だれも聞いてねえよな……」
    「できれば今日がいい」
    「な、なんだよ急に……もしかして、あのことまだ怒ってんのかよ…」

    「あのこと」というのは、暦がシャドウの病院から飛び出した拍子に向かいの道路で車に轢かれて、表沙汰にならないようにするためにラブホテルに連れ込まれた時のことだ。話を聞いた時、暦が悪いのか、大人が悪いのか、怒ったらいいのか、憐れんだらいいのか分からなくなった。ただ、胸がきゅうっと痛くなったから、そのことを伝えたら、真っ直ぐな目で「…ごめん」と言ってくれた。それでもうランガの中では終わったことだ。

    「ううん、違うよ」
    「じゃあなんで、しかも今日って」
    「セックスしたいから」

    正確にはセックスについて話がしたいからだった。しかしランガも、今唐突に「セックスの時痛くされるの好き?」と聞くのは、ナンセンスだと分かっていた。野暮というやつだ。正直そっちの方がてっとり早いが、ただでさえ日本人は奥ゆかしい。

    「…………おう」

    前髪の先を触りながら、暦の顔が髪と同じくらい赤く染まる。照れた暦の顔が好きだ。もっと暴きたくなる。

    「だから、いい?」
    「わ……わかったよ。今日はSもないしな。一回着替えてから」
    「着替えがいるの?」
    「制服じゃだめなんだよ。高校生だってバレたら使わせてもらえねーの。最悪補導される」

    それは困る。分かった、と頷いて、封を開けてそのままになっていた焼きそばパンにようやくかぶりついた。






    ホテルの部屋には真ん中に大きなベッドが一つ。変に装飾があるよりセックスするための部屋という感じがしてエロい気がした。

    「暦、シャワーは?」

    ランガは聞きながら、ばさっと脱いだシャツを床に落とす。部屋の物色とかテレビでエロい映像見るとか、そういうジャブ的なのはないんだな…と暦は心の中で思う。

    「……そんな汗かいてねえし、大丈夫」
    「汗?」

    ランガの目がすうっと細められる。

    「まさか、自分でほぐしてきたの?」
    「そりゃそうだろ…やること分かってるんだから…」

    人のことは言えない。自分だって乗り気じゃないかと、暦は段々と恥ずかしくなってくる。

    「だから遅かったのか…」
    「い、いそいでるみたいだったし、お前…早く、その、挿れたいのかなって思ったんだよ…」

    語尾は消え入るようだった。暦の顔を挟んで上を向かせる。少し開いた唇に噛みつくようにキスをした。

    「んぅ…っん、んん…んぁ…」

    ランガの手の上に手を添えて、二人でベッドに倒れるように誘導する。反発の強いスプリング。下になった暦が倒れこまないように、ランガは腕で体を支える。
    唇を離しながら暦の体をゆっくりと横たえていく。ぎらぎら光る目に見下されながら、暦は、食べられる快感を思って身震いした。

    「すぐに抱きたいわけじゃなかったんだけど」
    「………そうなの?」
    「うん。でもそんな気分にさせられた。暦はすごい」

    二言目には「暦はすごい」と言う。口癖みたいだ。

    「じゃあ何?今からシャワーでも浴びるつもりか?」
    「そういうの、煽るって言うんだろ。早く抱いてほしくて試すようなこと言う。暦、よくやるよね」

    冷静に分析されると腹がたつ。そんなこと言って、自分だって煽られてるくせに。
    ズボンを脱がそうとするランガの手を無視して、きれいな背中にかかとを入れてやる。

    「痛い…」
    「お前が盛り下がるようなこと言うからだろ」

    とは言え、ヤりたくなくなったわけではないから、腰を上げながら自分で上着を脱いでいく。

    「そんなに何度も蹴ったら痕になっちゃうよ」
    「痕くらい…スケートやってたらしょっちゅうだろ?」
    「……暦のここみたいに」

    裸になった暦には、まだなくなりきらない痕が体中に薄く残っていた。

    「あの日のこと、暦、覚えてる?」
    「あーーー………うん、まあ」

    覚えていないと言ったら、詳しく話して聞かせるつもりだった。覚えているなら、きっと答えられるだろう。あの日の暦は、普段とはだいぶ違っていたから。

    「暦はさ、ああいうセックスがいいの?」

    今日の目的が果たされようとしていた。暦はランガの下で、赤面して、困ったように眉を下げている。

    「ああ…いや、なんか……なんかさ」
    「うん」
    「お前にされるのは、気持ちいいんだよ」

    本当に好きだったみたいだ。ランガはゆっくりと目を見開いて、信じられない気持ちで暦を見る。

    「噛まれたり抓られたり叩かれたりするのが?」
    「そうだよ………結局言ってんじゃねえかお前」
    「だって信じられない…痛いじゃない…」

    指で痕をなぞりながらランガは驚愕する。この痕のことも全部謝って、舐めて薬を塗って絆創膏を貼りたいくらいなのに。

    「まあお前はそう思うよな」
    「俺はって何?これまで育ってきた環境の話?家族?友達?心に傷をつけられた?誰に?」
    「おいおいおい暴走すんなよ」

    虐待やいじめまで想像の幅を広げていたのだろうか、と、ランガの口から転げ出てきた単語を聞いて暦は思う。やけに心配させてしまっていたみたいだ。

    「そんなたいそうなもんじゃねえよ」
    「じゃあなに………」
    「きっかけがあったわけじゃなくて。痛いの耐えてると、気持ちいい〜!ってなる瞬間があるんだよ」

    言葉を尽くして答えてくれているはずなのに、ランガにはさっぱり分からなかった。

    「だからたぶんお前には分かんない感覚なんだって」
    「嫌だ………分かりたい」
    「はは、もうちょい蹴られてみるか?」
    「痛いから嫌……」

    暦の肩口に顔を埋めて、押し当てたおでこをぐりぐりと動かした。
    この体に触ったことのないところはもうほとんどない。どんな反応が返ってくるかもだいたい分かる。暦に理解できない部分があるというだけで、とても不安になる。

    「いいんじゃねえの。俺たち他人なんだし」
    「他人って…!」
    「違うからいいんだろ?じゃなきゃ好きになんねえよ」

    白い歯を見せて笑う。暦の言葉も、笑顔も、どうしようもなく好きだと思う。

    「……暦はすごい」
    「お前そればっかだな」

    くしゃくしゃと前髪をかき混ぜられる。

    「別に俺に合わせたセックスしなくてもいいんだし」
    「でも俺、お前のこと分かりたいよ」

    ええ?と暦は怪訝な顔をする。

    「無理すんなよ」
    「無理じゃない。暦が気持ちよくなるセックスがしたい」

    何かにこだわっているようで、こうなるとランガは頑固だろう。暦はもう、交わすのは言葉よりも、体の方が良かった。

    「じゃあ、うん。お願いします」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍💘💖💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works