漂泊者(白芷の服ってなんか色っぽい) 白芷と昼食を共にしていた漂泊者は、かねてより思っていた事を不思議がって聞いてみた。
「白芷の服ってセクシーだよね。なんか白芷っぽくないような……?」
さらりと聞く漂泊者に、白芷はわずかに口元に笑みを施す。少し考えてから「あなたは、私の服装についてどういう印象を持った?」と白芷が聞き返した。
漂泊者は首を傾げて答える。
「白芷に似合ってて綺麗だと思う。何か改めて考えたらちょっと不思議だって思ったけど」
そう返すと、白芷は口元に手を当てて、目を瞑りながら淡々と答えた。
「一般的に視覚から得られる、精神的な充足感は少なくない。共鳴者にかかる精神的負荷は、通常より命に関わる重大なものであることもあるわ。……つまりそういうこと」
最後だけ言い淀んで、しかし白芷は終始いつもの真面目な様子で答えていた。少し間を置いて「一応、これは華胥研究員の制服でもないし、そういった服装規程もない。……風紀も大切だから」と付け加えた。
漂泊者は思い起こすと、よく考えたらモルトフィーも胸元を過剰に露出した服装をしていたことを思い出す。なるほど理にかなったものだったのか……と納得させられた。
漂泊者は真面目な白芷の講義内容に茶々を入れてはならないと思ったが、口元の笑みを抑えられず、そっと口元に手を当ててしまっていた。むしろ真面目な理由が存在すると思っていなかったのだが、白芷らしい答えが今回の場合は何だかとても愉快に聞こえてしまった。
漂泊者の内心を透かしたように、白芷のジッと見据える視線が突き当たる。
漂白者は視線を逸らして咳払いする。
「私の服も、実は癒し効果があるかな?」
「……そうね。理に適っている」
「ふふ。そっか」