「おー、バスケ部のくせに焼けたな」
鬼みたいな合宿から帰った翌日の、思う存分惰眠を貪り、疲れた体をいたわった夕方だった。ハルトは3ヶ月ぶりに美容室へ向かった。134号線、海を眺めながら走れる道はこの季節、朝から常に渋滞している。動かぬ車の列を尻目にハルトは自転車で海風を切り、目的地へと向かう。海辺の駐車場に止められたヴィンテージのエアストリームまでは自転車で十分ほど。ハルトを出迎えたエアストリームのオーナー、リョータさんは人の悪い笑みを浮かべてからかうように言った。
「毎朝山中湖一周したからね、嫌でも焼けるよね」
「海で日焼けじゃねーのが残念だな。湘南っ子なのに」
「いや、これから行くし。本格的に焼けるのこれからだから。山中湖で終わってたまるかよ」
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