身を低くしたエースは、草の中から飛び出して向かいの薔薇の木々の間に体をねじこんだ。その際に枝で頬を引っ掛けたが、すでに体中が傷だらけだからさほど気にすることでもない。それよりも、早く落ち着ける場所に行きたかった。昼過ぎからこんな調子だから人の気配を探りすぎて疲れていたし、体力だって既に限界だ。普段なら数歩で行ける距離なのに、今はとんでもなく遠く感じる。
(なんとか、日が暮れる前に)
いつも以上に敏感になっている鼻に薔薇の匂いは少々きついが、ここ以外に安全な場所も行くあても無かった。
(よし。次で寮の前まで行ける)
後ろ足に力を込めると、掠める枝も踏んづけた花弁も気にせず一気に駆け出した。と、その瞬間、体が宙に浮いた。
「なぁん、なぁん」
「こんなところで何してるんだ?」
(ゲッ。デュースじゃん)
「どこからきたんだ? 野良猫か?」
目の高さまで持ち上げると、手首をぐるりと回して全体を確認される。尻尾を膨らませて威嚇すると、頭を撫でられた。それがあまりにも優しい手つきだったから、空気が抜けたみたいに警戒心が萎んでいく。
「怪我はしてないみたいだな」
「なぁん」
(離せ、触るな)
「可愛いなあ。天気も崩れそうだし、とりあえず僕の部屋に来たらいい。その代わり、静かにしていてくれよ」
「んにゃ! みゃあ、みゃあ」
(やめろ。離せって、バカデュース)
「そうか、そうか。僕もうれしいぞ」
初めて聞く優しい声に、背中のあたりがむず痒くなる。足で掻こうとしたが、デュースの腕が邪魔で出来なかったので擦りつけてやった。
「可愛いなあ。お前も嬉しいよなぁ」
(んなこと言ってねえ)
よりにもよって、こんなやつに捕まるだなんて……垂れ下がった尻尾で力なく腕を叩いてみたが、嬉しそうに目を細められるだけだった。
デュース・スペードとは相容れない仲だったと思う。
くそ真面目で融通が効かない彼のことを、入学当初は面倒くさくて関わりたくない人物だと認定していた。それがいつの間にか観察対象に変わり、オモシロイヤツになっていた。第一印象はクールだったのに本当は暑苦しくて、最初とは違う意味で面倒くさい男だったが、そこもエースの好奇心を擽った。
今日だって、アイツのために入手したジョークグッズで揶揄ってやろうと思っていたのだ。それなのに、なんの間違いか自分が猫になってしまった。こんなところを寮長に見られでもしたら、絶対に怒られる。お洒落な首輪をつけられてしまう。
そう思って隠れていたのに、まさかコイツに見つかるなんて最悪だ。本当なら今頃、猫になったお前をオレが抱っこして、弄くり回してるはずだった。
胡乱げに目を向けると、デュースはにっこり笑った。ルンルンとスキップするリズムのせいで体が揺れる。普通に歩けないのか。既に逃げ出したいが、やっと見つけた安住の地だ。ほこほこと温かい腕に抱かれては飛び出すことなんて出来ず、んなぁと不満気に鳴き声をあげることしかできなかった。
ジャージに包まれたままベッドの上に降ろされると、エースは首だけをぴょこりと出した。ぴるぴると耳を震わせているのは、意識してではない。しかしそれを見たデュースは、慌ててカーテンを閉めて外界と遮断した。エースを驚かせないよう静かにベッドの縁に顔を乗せると、出てくるまでじっと待っている。いつも騒がしい室内は静寂に包まれ、小さな心音だけが聞こえてきた。
「腹減ってないか? ミルクくらいしかないだろうけど、それでもいいか?」
猫と意思疎通なんて出来るわけないのに、デュースは安心させるように喋りかけてくる。穏やかな声色で近づきすぎないよう距離をとりつつ、しかし撫でるのは我慢できないのか、指先でついっと触ってきた。伸びてきた手に警戒したエースは再びジャージの中に潜り込むと、ぷるぷると震えながらデュースを見つめた。びびっているわけじゃないが、いつもと視線の高さや大きさが違うから落ち着かなくて唸り声をあげると、デュースは困った様に笑った。
「ミルク持ってくるから、少し待っててくれ」
「みゃぅ」
(さっさと行け)
「良い子だな」
大きな手で撫で付けられると、無意識にゴロゴロと喉が鳴る。猫が喉を鳴らすのは幸せを感じたときや機嫌がいいときだと聞いたことがあるけど、そんなことはない。
(べつに、ぜんぜん、きもちくなんてないし)
ふにゃんふにゃんになりそうな意識を奮い立たせ、猫パンチを繰り出してやった。いくらバレていないからといっても、やっぱり恥ずかしい。シュッシュッと高速で動かしてみたが、ぺちぺちと当たるだけでなんの効力もなさそうなのが悲しいけど。そのうえ可愛くてたまらないといった表情をされては完敗だ。己の無力さを実感して尻尾と共に項垂れた。
ミルクを飲んでいる間も、デュースは熱心に見ている。マジでホントにどっかに行っててほしい。そんなに見られてたら飲みにくいったらないのに、飽きもせず眺めている。ぴちゃぴちゃと舐めるだけで、はわわわと瞳を輝かせているこの男は一体誰だ。
「可愛いなあ。お前は本当に可愛い。この毛色が最高だ」
レンガ色の赤毛が気に入ったのか、やたら褒めてくれる。人間のときの髪色と同じだから、まるで自分が褒められているみたいでドキッとしてしまった。
「僕のいちばん好きな色なんだ」
青緑の美しい海。揺れる水面には小さな毛玉が映し出されていて、それが自分だと気付くと途端に照れくさくなった。毛並みのいいぴんと立った三角の耳に、たしたしとシーツを叩く愛らしい尻尾。頭のてっぺんからお尻までのなめらかな曲線美。ふわふわもふもふの完璧なフォルムは、撫でて吸って愛でたくなる。
(猫のオレも可愛いじゃん)
前脚で口の周りのミルクを拭って舐めると、ピーコックグリーンの波紋が広がりキュッと細くなる。
(そんなに見るなよ)
纏わり付く視線が鬱陶しくて後ろを向くと、今度は背中にビシバシ感じる。長い尾をぶんっと振ると、おぉっと感動した声が聞こえた。面白くて二回左右に動かすと、その度に声をあげる。
(コイツおもしれえって、えっ)
「ふぎゃっ」
「ふわふわの毛だな。ん――。甘くていい匂いだけど、どこからきたんだ? アイツも甘い匂いがするんだけど、ケーキばっかり食べているせいかな」
ひょいと持ち上げると、いきなり背中をくんくん嗅がれた。猫だと言っても、意識はある人間なので恥ずかしくてたまらない。みゃあみゃあと鳴き声をあげて抵抗してみたが、聞き入れられなかった。それならばと、必殺の猫パンチ。フシャーと威嚇しながら、むにむにと肉球で押し返す。
(降ろせ。触るな! わっ。そんなところに鼻をおしつけるな)
抗議しながら手足をばたつかせても、顔を殴られても、デュースはデレデレしながらされるがままだ。
「可愛い手だな。マシュマロみたいだ」
ひっくり返されて対面すると、今度は肉球をぷにぷに堪能しながら、柔らかい、素敵な毛艶だ、こんなに綺麗なピンク見たことがないと賛辞を述べる。猫相手に、真面目な顔で口説いてくるから笑えてくる。そんなに動物が好きだとは知らなかった。
(そんなにこれが気に入ったなら、今度はオレがしてやるよ)
揺れていた尻尾をするりと手首に巻き付けて、みゃふっと鳴いてからからデュースの方に足を伸ばした。
むに、むに、むに、むに。
頬に当てて左右交互に足を動かしてやる。デュースの肌は、男の癖に滑らかで整っている方だと思う。なかなか触り心地がよくて頬擦りしたくなったのは、マーキング的な意味で動物としての性なんだろう。猫の身体で一番困ることは、少しでも気を緩めると舐めてすり寄って、匂いをつけたくなってしまうことだ。それでも心は人間なので、どうにか野生の本能を振り払う。
一際ぐうっと力を込めて押すと、デュースがふっと口元を緩ませた。
「猫のマッサージも癒されるな」
(そうだろ、そうだろ)
得意気に鳴きながら足を動かすと、なぜか喉がごろごろ言いだした。安心する様な心地良い様な不思議な気持ちだ。どうしてそんな風に感じるのかはわかないけど、とにかく今は、ふみふみするのに忙しい。
「ありがとう。今度はお前をマッサージだな。ここはどうだ? いいか?」
耳の付け根を撫でてから、額を揉んでいた手が顎の下に。エースの目がくうっと細まると、同じところを撫でられた。足の動きが止まり、デュースの撫でテクニックを堪能する。優しい手つきでゆっくり触られたエースの口からは、くふぅと満足そうに息が漏れ出した。
「眠いのか?」
言いながら持ち方を変えられた瞬間、肉球が頬ではない何かに触れた。びびびと背中に電気が走ると全身の毛が逆立ち、小さな体を思いっきり仰け反らせる。暴れながらにゃうん! と、爪が出たと同時に嫌な感触がした。それでも止まれなくて、猫パンチと猫キック繰り出した。
「ちょっ、どうした。何で暴れるんだ」
(やだ! 離せ! そっちがその気なら、もう噛みついてやる)
口を思いっきり開いて食いつこうと顔を寄せたが、デュースを見たと同時にピタリと止まった。
「ふぎゃっ」
(ちっ、ちっ、血――ー!!)
口の端には、赤い線が浮かび血が滲んでいた。ぷくりと浮かんだ赤に、エースは激しく動揺して慌てふためく。
――やべぇ。怪我させちゃった。ちょっと遠ざけるだけのつもりだったのに。
ふみゃ、ふみゃ鳴くと、デュースは考える素振りをして困ったような顔をした。背中を包み込んであやすように、ぽふぽふ触られる。
「お腹空いたのか? ミルクだけじゃ足りなかったか」
(オレは、どんだけ食いしん坊なんだよ……)
傷をつけられた本人が全く気にしていないから、余計に罪悪感をおぼえてしまう。赤くなったそこにそっと顔を寄せると、髭がくすぐったいのかデュースは小さく笑った。
(ごめん)
乾いた傷口をぺろりと舐めると、血の味がした。はっと驚いた気配を感じたが、気にせずチロチロと舌で撫でながら、にゃあにゃあと謝罪をする。身動ぎするからうまく舐められなくて、ちょっとは大人しくしろと視線を向けると腰のあたりを撫でられた。
「痛くないから大丈夫だ。お前を見ていると、アイツの事を思い出してしまうんだ。本当はもっと仲良くなりたいし、それ以上も……いや、むりだな」
苦しそうに吐き出された言葉に、小さな心臓がきゅうっとなった。誰の事を考えているのかはわからないが、きっとそいつはデュースの好きな人なんだろう。片思いをしているなんて知らなかったし、苦しそうに悩んでいる表情は初めて見るものだった。
「アイツがお前みたいに猫だったら、こうやって捕まえておけるのにな。本当に可愛くて、いつも見ていたいんだ。これが恋ってやつなんだろうな」
切なく捩れた心は消し飛んだ。この男、とんでもない事を考えている。デュースの想い人に早く逃げる事をおすすめしたい。
胡乱気に目を向けると、応援してくれるのか? ありがとうなと、ふざけたことを言われた。コイツの頭の中はハッピーセットか?
でも、これだけ思われるなんて、ある意味幸せなことかもしれないな。
ふみゃふみゃ鳴きながら、てちてち舐めると、デュースは破願した。
「お前は僕のそばにいてくれるか? もし、エースが猫になったら仲良くしてやってくれよな?」
(はっ? オレ?)
びっくりして傷口を舐めていた舌が止まった。中途半端に口からはみでて間抜けな姿だけど、それよりもとんでもない発言が聞こえた気がする。
「猫になったら、きっとお前みたいに素敵な赤い毛だと思うんだ。ふわふわで撫でてみたいんだけど、どうやったら触れると思う? 猫を撫でる練習させてくれってのはどうだ? いちごジャムみたいな美味しそうな瞳だって、いっそ誘われてるのかと思うよな。たまに上目遣いで見てくるんだけど、もしかして本当に!? はあ。目だってこうキラキラしてて……」
嬉しそうに語っていたデュースの口も止まった。そして、観察するようにじっと見つめる。
(もしかしてバレた?)
そーっと舌をしまい、ぶみゃんと首を横に向けると、すかさずデュースの顔が追ってきた。
「お前……本当に野良猫か?」
さっきまで透き通った海だと思っていた瞳が、濁った底なし沼みたいに見えてきて怖くなった。爪を出さない様に前足を唇に押し付けて、こっちをみるなと抵抗してみたが凝視されている。ぎらぎらと獲物を狙う視線に、猫としての本能が白旗をあげはじめた。
「みぅ、みぅ」
「……エースか?」
「みゃぅん」
ついに名前を呼ばれ、これ以上は誤魔化せないと思って返事代わりに可愛く鳴いた。すると、デュースの耳がぼっと赤くなった。それは頬、首、鎖骨に広がり、見えている部分は綺麗に染まっていく。
――絵の具を垂らしたみたいだ。
「どういうことだ。なんで猫なんかに」
そこまで言うと、デュースは不機嫌そうに顔を歪めた。
「まさか、お前、また僕を揶揄うために」
――ヤバイ。
「まあいい。言い訳は戻ってから聞く」
腕の中から逃げ出そうと試みたが、しっかり掴まれていてはそれも出来なかった。
(それより、オレのこと捕まえたいってなんだよ。誘ったことなんてねーし、変な事言うんじゃねぇ)
後ろ足でゲシゲシと蹴りながら、尻尾でびたんびたん叩いてやる。
「なんだ。抱っこされて照れてるのか?」
(ちっが――――う)
「お前は猫になっても可愛いんだな」
(お前はなんかキャラ変わってねーか?)
「なんかバレたと思ったら吹っ切れたのかもしれない」
(いや、言葉わかんの?)
「当たり前だろ。首輪のことだろ? 野良だったら首輪なんてできないけど、中身がエースなら必要だよな。僕は深紅がいいと思ってたけど、自分の色で染めるのもいいよなあ。どっちがいい?」
(通じてねえじゃねーか)
目を吊り上げてシャーッと威嚇してるのに、デュースはデレデレにこにことご機嫌だ。いつものきりっとした表情は抜け落ち、人格まで変わったみたいで少しだけ怖くなった。伺いながら鳴くと、大きな手が尻尾の付け根をくすぐる。むずむずと落ち着かない奇妙な感覚は初めて感じるもだった。
「本物のエースにはいつ戻れるんだ? このまま猫ってわけじゃないんだろ? ああ、でも猫のままでも可愛いからいいな。いや、何もできないから駄目だな」
(何をする気なんだ! って、そこ触るなよ)
触ってほしくないのにもっと撫でてほしい。くすぐったいのに気持ちがいい。
無意識にデュースの手に擦りつけると、心得たとばかりに撫でられ、自然と甘い声で鳴いてしまう。
心地よい体温に包まれて揺らされると、次第に意識が遠のいていき、強張っていた身体が緩んでいく。くしくしと顔を撫でていると、頭の天辺でちゅっちゅっと聞こえてきた。何かはわかっている。だけど、わかりたくないから知らん顔を決め込んだ。
「寝るのか? 明日が楽しみだな。はぁ……可愛い。食べてしまいたい可愛さだ。天井知らずか? 人間でも猫でも可愛いなんて、俺をどうしたいんだ。クソっ。忍耐を試されているのか? 猫だったら手を出されないと思っているんだろ……っんぶ」
(うるさい)
普段の五割り増しで喋る口を、肉球で塞いでやる。そのままふみふみしていると、背中を撫でている手が震えだした。ゆりかごのつもりだろうか。そんな機能はいらないので、早く寝かしつけてほしい。猫の身体は本能に忠実で、我慢ができないみたいだ。
くぁあっとあくびをして、ふりふり尻尾を揺らめかせる。手首に巻きつけてやると、特別甘い声で「おやすみ」と囁かれたから、みゃぅと返事をしてから眠りについた。
――ンぁっ……やぁ。……っんぅ……
鼓膜を震わせる艶めかしい声は、隣の部屋とかじゃなくて同室というか、もっと近くで聞こえている気がする。くちゅくちゅといやらしい水音までしてくるから、こっちまで変な気分になるのは致し方ないことだった。学校で、それもこの寮内でAVを見るなんて度胸がありすぎる。
――……はぁ、かわいい。この耳も項も背中も、全部舐めてやりたい。
荒い息遣いが生々しくて、すぐそこで感じているみたいだ。全身舐め放題なんてマニアックすぎるものを見るのはどんなやつだろうと興味がわくのに、耳に入るのは聞き覚えのある声でエースの胸はざわつく。ついでに頭の中の警鐘が、けたたましく鳴っている。
目を開けるな。触れるな。話しかけるな。
――いきなり猫から戻るなんて……しかも裸って、クソッ、腰を揺すなっ! どれだけ煽れば気が済むんだ。
首筋にねっとりと何かが這い上がってきて、思わず頭を下げると、ちくっと痛みが走った。確認したくても、背後から拘束するように両腕ごと締め付けられては身動き一つ取れない。
――あぁ、背中も赤くなってる。熟れた苺みたいで食べ頃だよな。
肩から肩甲骨に降りると、背骨を辿っていく。猫のとき気持ちよかった場所を撫でられ、時々柔らかく挟まれると、その度に嬌声は大きくなった。
AVだと思っていた声が、まさか自分の口からでているだなんて信じたくない。そうなるとさっき聞こえた言葉は、自分がされていることになる。
背中に感じる体温も、吸い付かれる感覚も、回された腕の力も全てが。
「ひっ……んぅ、やっ……」
「……堪らないな」
耳孔に熱い息を吹き込まれる。
小刻みな振動を感じながら、なんとか止めようとデュースの腕に手を添えた。
力が入らなくて払うことすらできないが、オレが起きていると分かれば一旦引くだろう。
そう願いを込めてそっと触れると、後ろでハッと驚いた気配を感じた。思惑通りデュースの動きが止まったが、それはほんの僅かな時間で二人再開される。
(え? 止まらないの?)
抜け出そうと身をよじると、肩に顎を乗せられた。耳朶を食まれ、くちゅりと舌を差し込まれた。
「……イキそうなのか? まだそっちは触ってないのにやらしすぎるだろ」
「っ、じゃ……い……あぁっ、とまっ……んぁっ」
「お前、止まるなって……わかった、任せとけ。このままイカせてやるから」
猫のときも思ったけど、コイツと意思疎通できる人間はいるのか。普通、こういう事はお互いの同意が必要のはずだけど、オレは知らない間に許可していたのか。
そんな事を考えていると、太腿ににゅるりと何かが嵌まり込んだ。猫から戻ったとき裸だったせいで、ダイレクトに感じる。自分のより太くて長い気がするけど、男としてのプライドがあるから認めたくない。
「エースの太腿、柔らかくて気持良いな」
「やぁ、って、でゅ……っんぅっ」
激しい律動に思考を持ってかれていく。
気持ちよくて、何も考えられない。
好きだ、可愛い、食べたいくらいだと囁かれながら、震えるほどの快楽を叩き込まれると、その気になってくるから恐ろしい。
ほんの少し揶揄ってやるつもりだったのにどうしてこうなった。
締め付ける腕の力強さに翻弄されながら、眩い世界へと導かれていくのだった。