Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    kusabuki2

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    kusabuki2

    ☆quiet follow

    (春クリ)ファーストステップ【二次創作】
    あめさんのTRPG平安譚8陣のたかーきらさまの転生後と従者の内麻呂くんの転生後のCP。

    【二次創作】ファーストステップ(春クリ)昼休み、彼女は学校の図書室へ向かい、彼の姿を探した。彼女は中学1年生で名前はクリス、探している相手は中学2年生で名前を春といった。

    明確な待ち合わせはしていないが、姿を見つければ席を並べるのが恒例だった。閲覧席を見渡すが、今回はいないようた。彼女は本を読むことが嫌いではなかったし、むしろ好きな方だと思っている。しかし、今日に限っては全く読む気が起きなかった。

    仕方なく彼女は、適当な本を手にとって窓際の席に腰かけた。窓から見えるグラウンドでは、女子生徒達がソフトボールをしている姿が見えた。彼女の通う中学校は部活動への参加が推奨されており、クリスはアイドル部に所属していた。今日も放課後はダンスと歌の練習をする予定だ。

    彼女はぼんやりと外を眺めながら、昨日の出来事を思い返していた。昨日の帰り道、別れ際、春に抱き寄せられた時のだ。優しい彼の腕に包まれたとき、クリスは心臓が跳ね上がるような感覚に襲われた。しかし、次の瞬間にはその感触は消え去ってしまった。まるで夢でも見ていたかのように。

    (あれは本当に起きたことだったんでしょうか?)

    クリスは自分の記憶力を疑っていた。彼女が覚えているのは服越しに体温が伝わる瞬間までで、その後はもう何が何やら分からなくなっていた。

    「あっ」

    不意に、視界の端に彼を見つけた。グラウンドの隅でサッカーを観戦している。彼の姿を目にすると、反射的に身体が動いていた。廊下を走るなという張り紙を横目に早歩きし、一階へ降りると上履きからローファーに履き替えた。校庭の隅、ちょうど木陰になっているところに春はいた。彼女は呼吸を整え、前髪を直してから、ゆっくりと口を開いた。

    「こんにちは、春さん」
    「ああ、クリスちゃん」

    そう言って振り向いたのは、紛れもなく彼女がよく知る人物だった。

    「お隣いいですか?」
    「ええ、もちろん」

    彼女は、春の隣に肩を並べた。心地よい風が吹く。春の髪が揺れていた。

    「放課後、一緒に帰りたいです」唐突に、しかし自然に口から言葉が出た。
    「あー……」

    春の顔が曇ったように見えた。

    「ごめんなさい、放課後はちょっと用事がありまして」
    「えっ」

    思わず声が出てしまった。しまったと思った時には既に遅かった。

    「予鈴が鳴りましたね。それじゃあまた」

    春がその場を後にする。呆然と立ち尽くす彼女だけが残された。

    (どうしたんでしょう、いつもと様子が……)

    その時になって初めて彼女は理解した。自分は彼に避けられているということを。
    結局、その日の授業はほとんど身に入らなかった。午後の授業が終わると、いつものように図書室へ向かった。閲覧席を見渡しても彼の姿はない。クリスはとぼとぼと部活動に向かった。部活動といっても、特にこれといって変わったことをしているわけではない。歌とダンスの練習をして、時々ファンとの交流会があるくらいだ。アイドル部の活動は、どちらかといえばタレント寄りのもので、アイドルらしい活動はほとんどないと言ってよかった。だから、アイドルとしての活動時間は週に2回程度しかないのだが、クリスにとってはその時間がとてもかけがえのないものに感じていた。ダンスと歌の練習を終え、学校を出る頃にはすっかり暗くなっていた。家までの道を歩く足取りは重い。今日の出来事を振り返りながら、彼女の心にはぽっかりと穴が開いていた。思い当たる節がないわけではなかった。

    (やっぱりあの時……)

    昨日の帰り道、春に抱き寄せられた時のこと。

    (抱きしめ返してしまったのがいけなかったのでしょうか……)

    自分の行動を思い出すと顔から火が出るようだった。しかし、後悔はしていない。なぜなら、

    (私、嬉しかったんです。春さんにあんな風にされて、すごくドキドキしました。もう一度、確かめてみたいって思っています……)

    そう思う一方で、彼女にはその一歩を踏み出す勇気がなかった。また昼休みのときのように避けられてしまうかもしれない。それが怖かった。そんなことを考えているうちに、いつの間にか家に着いてしまっていた。
    夕食も入浴も済ませ、後は寝るだけになった頃、クリスは自室のベッドに腰かけていた。部屋の中には時計の音だけが響いている。

    (今日も来ませんでした……)

    スマートフォンの通知欄を確かめるが、春からのメッセージはなかった。いっそ自分から送ろうか。何度も考えたが、指を動かすことはできなかった。

    (嫌われてしまったのでしょうか……?)

    最悪の想像が頭をよぎる。それを振り払うように頭を振る。

    (いえ、きっと何か事情があったんだと思います。明日になれば……)

    自分に言い聞かせるように呟くが、胸中は穏やかではなかった。明日こそ話をしてみよう。そう決意すると、クリスは眠りについた。

    ***
    翌朝、目が覚めると真っ先にスマートフォンを確認した。画面に表示された時刻は7時半過ぎだ。画面には新着メッセージを知らせるアイコンが表示されていない。

    (今日も連絡なし……)

    落胆するが、いつまでも落ち込んではいられない。身支度を整え、クリスは登校した。教室に入ると、そこにはいつも通りの光景が広がっていた。クラスメイトが談笑し、授業の準備をしている。

    (何も変わりませんね……)

    安堵するような、拍子抜けしたような気持ちで席に着く。ホームルームが始まるまではまだ時間があるので、本を読んで時間を潰すことにした。本を開くが、内容はあまり頭に入ってこない。昨日と同じように春のことが気になっていた。

    「ねえ、クリスちゃん」

    不意に声をかけられ、びくりとする。声の主は隣の席の女子生徒だった。

    「な、なんでしょう?」
    「元気なさそうだけど、大丈夫? 体調が悪いとか?」
    「えっと、ちょっと心配事があって……でも、大丈夫です。今日解決するはずです」
    「そうなの。良かった。そうだ、もし悩み事があるなら相談に乗るよ」
    「ありがとうございます。でも……」
    「あっ、先生が来た」

    タイミング悪く、担任の教師が入ってきた。彼女は自分の席へと戻っていった。教師の話を聞きながら、クリスは昨日のことを振り返る。春と別れた後、彼女はそのまま帰宅した。しかし、夜になっても春からは何の連絡もなかった。不安な気持ちを抱えたまま、彼女は床に就いたのだった。

    ***

    午前の授業が終わった。春の姿を探したが見当たらず、昼休みになってしまった。昼食を摂るため、彼女は食堂へと向かう。普段であれば春と一緒に食べるのだが、彼はまだ姿を見せていなかった。一人で食事をするのは味気なく感じる。

    (これを食べたら春さんに会いに行きましょう)

    そう決めて、食事を終えたクリスは中庭へ向かう。しかし、そこに春はいなかった。念のため、校舎内を探してみることにする。階段を上ろうとしたところで、上の階から降りてきた人物に気づいた。

    「あっ」

    思わず口から言葉が漏れた。視線を向けると、そこには春がいた。しかし、その表情はどこか暗いように見える。

    「こんにちは、春さん。……元気がないようですが、なにかありましたか?」
    「……ごめんね、なんでもないんです」
    「……」
    「じゃあ」
    「待ってください!」

    歩き出そうとする春の袖を掴む。

    「教えてください! 私、春さんのことが知りたいんです」
    「……ごめん、今日は」
    「春さん…」
    「……」
    「……すみません、困らせてしまいましたね」
    「ごめんね」
    「謝らないでください」
    「うん」
    「……」
    「……」
    「一昨日のことを話したい、です」
    「一昨日?」
    「はい。私、嬉しかったんですよ。春さんにだ、抱きしめられて、すごくドキドキしました。またああいうことしてほしいって思っています。だから、避けたりしないでほしいんです」
    「嫌じゃなかったですか?」
    「い、嫌だったらこうして探したりしません」
    「探してくれていたんですね」

    春がくすりと微笑み、クリスは顔を赤らめる。そこで予鈴が鳴った。

    「…それじゃあ」
    「ま、待ってください、放課後にまた話したいです。いっしょに、帰りたいです」
    「わかりました」
    「図書室のいつもの場所で、待ち合わせしていいですか?」
    「ええ、そうしましょう」春はそう言うとその場から去っていった。クリスはその場に立ち尽くしていた。
    (言ってしまいました……)

    顔から火が出そうだった。

    (春さんはどう思ったでしょうか?)

    それは想像できなかったが、悪い結果にはならないはずだ。そんな予感を抱きつつ、クリスは午後の授業を受けた。

    ***

    その日の授業が全て終わった。クリスは約束通り、図書室へと向かった。閲覧席を見渡すが、彼の姿はない。少し待つことにして、彼女は読みかけの小説を開いた。しばらくすると、ドアの開く音が聞こえ、春が姿を現した。彼はまっすぐこちらに向かってくる。

    「春さん」クリスが小さく声をかける。
    「待たせてごめんなさい。行きましょうか」
    「はい」

    二人は並んで廊下を歩く。その途中、ふとクリスはあることに気づいた。

    (あれ? 手……)

    春の手が自分の手に重なっているのだ。彼の方をちらと見ると、春はすまなそうな顔で言った。

    「今日だけ、許してもらえますか?」
    「……はい、もちろんです。でも、どうして手を繋いでいるんですか?」
    「なんというか、離したくなくて」
    「……」

    クリスは何も言わず、そっと握り返した。すると、春の手がわずかに震えているのがわかった。

    「春さん、緊張していますか?」
    「わかりますか?」
    「はい、とても伝わってきます。……私も、緊張しています」

    手に汗をかいていないか、クリスは心配する。しかし、不思議と嫌な気持ちはなかった。
    昇降口を出て校門に向かう。その間、会話はほとんどなかったが、二人の間に流れる空気はとても穏やかだった。やがて、分かれ道に差し掛かった。

    「ここでお別れですね」

    春が名残惜しそうに呟く。

    「あの、春さん。どうしても伝えたいことが」そう言って、春の袖を掴む。
    「春さんのことが大好きです。ずっと一緒にいたいって思います。……春さんも、そう思ってくれていますか…?」
    「私も、クリスちゃんのことが好きですよ」
    「春さん……」

    クリスの目頭が熱くなる。

    「あ、あのっ、お、お付き合いしてくださいっ」
    「……本当は、私が昨日言おうと思ったんですけれど」

    クリスの言葉に春は驚いた顔をし、バツが悪そうに首をさすった。

    「いいえ、私から言います。春さんのこと大好きですから。……それで、お返事は…?」
    「こちらこそ、よろしくお願いします。クリスちゃん」

    春に差し出された手を握る。お互いにもう、震えはなくなっていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works