無題少し前に引退した大御所俳優の訃報が流れた。
テレビはこぞって若かった頃の活躍がこんなに凄かった、世界の名俳優だったと何度も何度も繰り返していた。チャンネルを変えても、変えても、会った筈の無い、けれど見た事のある気がする男の白黒映像が流れている。 葬儀は、明日だ。
「僕が代表で行きます」
壮五が真っ先に声をあげた。ならば私も、と一織が続く。マスコミ対応も私と逢坂さんがしますので大丈夫です、と一織がマネージャーと話している。あともう一人、誰かと言われて、三月は手を上げた。 目線の先のドアは、未だに開かない。
「本来ならばワタシも行くべきなのでしょうが…今回だけは、」
彼の傍に居たいのです。固い声で呟いてドアを見つめるナギに、マネージャーが大丈夫ですと声をかけた。
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