碧空に黒歌鳥 ① 11月の終わり、あと数十分で12月になろうかという時、その知らせがエドワード・フィンチへ伝えられた。親友一家が何者かに襲撃されたという一報は、とても言葉では言い表せないほどの衝撃を彼に与えた。なぜ、今なのか。ふと目に入ったレースのカーテン越しの外は真っ暗闇。室内は明るいというのに、その闇の中に放り出された気分になる。呆然と立っていることしかできなかった。夫妻、そして弟は死亡、親友本人は重傷を負い手術中、出血が酷く生死を彷徨っているらしい。彼は改めて自分の背負う家門の重さに辟易した。今すぐに親友のいる病院へ駆けつけ、そばで無事を祈りたい。けれど、突然家門を背負うことになった身では、目の前の煩雑な諸問題を投げ出して行くことなど許されない。彼は家族間の関係を拗らせに拗らせたまま数週間前に急逝した先代を恨んだ。
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