◇少年Gの回想 ◇
カントー地方の夏特有の、湿気をまとった生ぬるい風が頬を撫でる。日もずいぶん落ちかけてきて、辺りは赤や橙に染まっている。
夕飯や石鹸の匂いがどこからか[[rb:漂 > ただよ]]い、「おうちにかえろ」と子どもらがすぐそばを駆け抜けていく。
同じく買い物帰りだろう[[rb:母子 > おやこ]]が向かいから歩いてくる。じっと見てくるものだから会釈でもしようかと思えば、向こうから「ジムリーダーさんもお帰りですか?」と声をかけられた。
オレは瞬時に笑顔をつくってみせ、少しだけ言葉を交わした。さっきまで機嫌良く歌っていた幼子は、母親の後ろに隠れてもじもじとこちらを[[rb:窺 > うかが]]っている。
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