『君に頼みがあるんだ、一緒に来て欲しい』
その言葉に他ならぬ相棒の頼みだから、と一も二もなく頷いた穹が連れて来られたのは、雲石の天宮の片隅だった。
口数少なく真剣な表情のファイノンに、穹は何か真面目な話なのだと思い、気を引き締める。
そして小さなアゴラに辿り着き、ファイノンが足を止めた。
その視線の先を穹も見てみると、一人の女性がぼんやりと景色を眺めていた。
「アカンサス」
ファイノンが優しい声で名前を呼ぶ。
それが彼女の名前なのだろう、亜麻色の髪をふわりと揺らしながら振り向いた彼女は19か20といった年頃の女性で、ハッとするほど美しかった。
このオクヘイマにおいて、浪漫の半神たるアグライアに【美】でかなうものはいない。
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