世界で一番大切なもの「一番大切な物は、しっかり鍵をかけて管理しなさい」
初めて自分たちで戦利品を手に入れた日、レイリーさんから宝箱を渡された。
「お前の宝箱、ガラクタと食い物ばっかだな!ギャハハハ!」
バギーが俺の宝箱を覗き込み、馬鹿にするように笑った。いつものことなので、適当に笑って流す。お宝に興味がないおれは、価値のありそうな物を全部バギーに譲っていたのだ。
ヒトの宝箱のお菓子をひょいとつまみ上げ、楽しそうに頬張るバギーを見ながら、おれは静かに呟いた。
「本当に大切なモノはここに入りきらねェからな…」
それは、特別な意味を込めた言葉。胡坐をかいた上にすっぽりと納まる大きさの宝箱をパタンと閉じ、バギーの瞳を真剣に見つめた。おれの言葉に、菓子を舌で転がすのを止め、バギーは目をまん丸にする。頬は興奮からか紅潮していた。
『綺麗だなぁ』
自分の影だけが映る空色の瞳に見惚れ、おれは緩みそうになる顔を必死に引き締めた。自分の気持ちを自覚してからは、より一層キラキラと、宝石のように輝いて見えた。
「なんだって!?入りきらねェだと!?何時の間にそんなお宝手に入れやがった!出せ!見せやがれ!」
ちょっとだけ返事を期待してしまっていたおれは、バギーの言葉に落胆した。襟を掴まれ揺さぶられるが、抵抗する元気もない。
『バギーの鈍ちん。おれの気持ちには気づかねェで』
「出せっての!」
なんだかムカついてきて、ぎゃあぎゃあと喚く口を強引に塞いでやった。
「ッ‼」
ちゅっと音を立てて離れると、バギーは耳まで真っ赤にして目を泳がせ、固まっていた。
「な、に、すんだよ シャンクスッ」
ゴクリと音を立てて薄い喉仏が上下する。さっきまで頬で転がしていた飴を飲み込んでしまったようだ。
「ッンニ、考えてんだヨ!」
まるで信じられない物を見たような顔をして。動揺からか裏返る声。
「バギー…」
『世界で一番大切なモノはお前なんだよ、バギー』
心の中で呟いて、おれはバギーの反応を楽しむ。バギーに触れた自分の唇をぺろりと舐めると、ほのかにブドウの香りがした。