「転生者が三人揃ったらなんかバグって悪役令息が隠しキャラを攻略してしまったんだが？」俺の名前は、レイ・ファブニル。アズライト王国の騎士見習いである。
父は騎士団団長であり、つい先日までは第二王子のライト殿下の側近をしていた。過去形なのはつい先日クビになったからである。
理由は恥ずかしいが、殿下と俺の婚約者が恋仲になってしまい、そのことが理由で殿下と決闘をしてしまったためだ。
本来なら横恋慕をした殿下の方が責められる話だが、元を正せば俺が婚約者であったアリスに対して普通の婚約者らしく接することができなかったことが原因なのだ…。
そもそも殿下に刃を向けたのもこれで二度目。一度目はその後学園の休暇中に謹慎処分を受けていた。その際に騎士団の尊敬する先輩に相談したところ、俺自身の価値観がおかしいことに気づき、さらには価値観を変えるために先輩の紹介で教えてくれる人がいる場所にも行き、無事自分の価値観がおかしかったことに気づくことができた。

だがしかし、その結果俺は真の意味で恋というものを知ってしまった。だからこそ、アリスの気持ちも理解し殿下と二人の恋路を応援しようという覚悟もできた。しかしだ、俺には新しい恋の悩みができてしまったのだ…！
ずっとアリスのことを苦しめた挙句に婚約破棄もした直後に、このような真似は彼女への裏切りではないのか。そもそもついこの間まで価値観がおかしかった俺がきちんとお付き合いなんてできるのだろうか。いや、その前に大きな問題がある。

俺が今恋している相手は同性であり、隣国の貴族であるクライヴ・オーキッド殿であるということだ…！！！
なんでこんなことになってしまったのだろうか……！？








わたくしの名前はエレノア・オータムスター。アズライト王国の侯爵令嬢。しかしその正体は現代日本からの転生者であり、この世界は転生前にプレイしていた乙女ゲーム「海と空の愛情物語」の舞台であり、わたくしが転生したのはその中の登場人物…悪役令嬢のエレノアだったことも知っている。

エレノアは第二王子の婚約者の座を狙う令嬢の一人であり、その筆頭だった。しかし、第二王子がヒロインと恋に落ちたことをきっかけに悪事を働き、最終的には死ぬ。この世界にいる魔王とその配下と契約して悪魔になって死ぬ。
正直に言えばわたくしはモブキャラだった第一王子目当てでプレイしてたのもあり、ヒロインたちとの恋路は邪魔せず、第一王子の幸福を第一としてここまでやってきた。
第一王子、アイス様は病弱で王座にはあと一歩が届かないと言われていたが、知略は王国随一であり誰よりも先に魔王復活の予兆を感じ取った結果呪われて病弱になってしまった…と攻略本の解説欄にあった。そのため魔王が力をつけるほどに弱まり、最終的にはヒロインと第二王子に全てを託して死ぬ……それだけは阻止してみせる。

そのためにはわたくしの悪堕ち以外に阻止せねばならない悪堕ち要因がいる。それこそ悪役令息のレイ・ファブニル。「海と空の愛情物語」(以下うみそら)において私よりもメインの悪役キャラ…それもそのはず。わたくしは第二王子が関わるルートでしか敵対しないが、彼はヒロインの婚約者として彼女を縛り続け全てのルートで敵対し、なんだったら彼の身体を依代に魔王が復活するのだから…。

そのためにわたくしもできることはしようと暗躍していたけれど…変わったところと言えば休暇前のイベント後彼が謹慎処分を受ける際に行く土地を魔王が眠ってる教会がある海辺の街ではなく普通に彼の実家の領地にした程度……この程度で何が変わったのかと頭を抱えていたのに……

なんで休暇明けたらレイくんが隠しキャラのクライヴルート入ってるの？？？？？？？
は？？？？？？何故？？？？？？？しかもコソコソ様子を見てるとかなり攻略が進んでいる……！？
本当になんでこうなった……………！？







私の名前はアリス・コメットブルー。私には誰にも言えない秘密が二つある。
一つはいわゆる転生者ってやつで、ここは私が昔やりこんだ乙女ゲーム「うみそら」の世界で私は主人公のアリスに転生したってこと。
もう一つは私は前世から今世までしっかりどっぷり腐っているということ。

「うみそら」もそういう目線で楽しんでいた。このゲームはいわゆるハーレムエンドというものがあるだけではなく、攻略対象同士の絡みが多いことで有名なゲームだった。私はそれを楽しむために何十週も周り、攻略者同士のCP本も描いた。
今世の最大の目的は、そんな攻略対象たちの…イケメンたちの絡みを生で楽しみ、かつハーレムエンドを迎えることで逆大奥を体現し、イケメンたちのハーレムを楽しむ壁になりたいが為だ。

欲望まっしぐらで何が悪い。前世で早死にしたんだその分幸福になってやる……！！
そうしてがっつり前世の知識をフル活用してイケメンたちを攻略して行った。第二王子ルートで出てくる悪役令嬢が関わってこない違和感はあったが、邪魔が入らないならそれでいい。唯一の悲しみは、悪役令息であるレイたんはどうあがいても救えない…！レイたんはハーレムエンド達成条件である魔王討伐を達成するためには必須…！彼以外に適性者はおらず、魔王討伐を攻略対象全員で達成することで全員の間に絆が芽生えて、ようやくハーレムが完成するのだ……！

だというのに……！なんということだ……！
夏休み中に出会イベントが発生するクライヴ様のイベントが起きなかった違和感はあったが、まさかレイたんがクライヴ様を攻略してるとか誰が想像しただろうか……？
正直レイたんの相手には第二王子で幼馴染のライトくんと異母兄弟のアルフレッドきゅん以外はないと思っていたのに……！！
いやでも実際に見るとめっちゃ萌えるやばい、どうしよう。クライヴ様攻略しないとハーレムエンド入らないのに……！レイたん幸せになってほしい…………！！！！どうしよう………！！！！？？？？






俺の名前はアキラ。今はアズライト王国の騎士団に所属している。
ここだけの話、俺はこの世界の住人ではない。
俺は現代日本で「アズライトブルー」という名前のMMORPGのプレイヤーだった。しかしある時目覚めるとその「アズライトブルー」の世界に入り込んでしまっていた。
まぁ、やりこんでいただけあって無一文でもなんとかやっていくことができ、冒険者として名をあげていた。そんな中、王国の騎士としてスカウトされ安定した生活のために就職することにした。

そこで仲良くなった騎士見習いの青年、レイくんは騎士団長の息子というだけあって才能に溢れた後輩だ。だというのに真面目で、俺みたいな先輩でも慕ってくれるいい子だ。
そんなレイくんが婚約者のいざこざで謹慎処分になってしまったと聞き、相談に乗ったところ、どうやらレイくんは家庭環境が原因で恋愛についてかなり偏った認識をしていることを知った。
流石にこの認識では今後も生きていくのに不便だろう……
俺たちが教えてもいいが、いっそのこと荒治療もいいだろうとほかの騎士たちとも意見が一致し、俺や副隊長行きつけの会員制のクラブに招待し、知り合いのマダムに女性との付き合い方を教えてもらうことにした。

だがしかし、俺たちが気づいた時にはおそかった。
レイくんは俺たちが声をかけていたマダムたちよりも先に声をかけていた不埒者の手にかかり、まんまと弄ばれていた……！
まぁ、レイくんの価値観は想定通り修正はされたが、相手が問題だ……。

相手は男……しかも遊び人として悪名高いオーキッド兄弟の兄の方、クライヴだったのだ……！！！！
俺たちが軽い気持ちであんなクラブに送ってしまったせいだ……！責任を持ってクライヴの野郎が純粋なレイくんを弄んだら殺す……そのつもりでレイくんが普段通っている学園にも見守りにきたんだが……
………なんか、別ゲー混ざってない？？