「ナァ」
暮れ行く陽を窓越しに眺めているときだった。
授業は終わり教室には誰もいない。人の子たちは忙しなく生きておりその日の授業が終われば留まることなく教室から去っていく。
マレウスはそれが少し苦手であった。
何かに駆られるといった感情を思い出せなくなって随分と経つ。最後にそういった感情に襲われたのはいつだっただろうか。いや、そもそもそのような感情を抱いたことなどあったか。
何にも駆られない心は凪いでいて気が付けばいつも教室で一人立っている。
だから背後から掛けられた声にすぐに反応することができなかった。
「ナァ、無視かよ」
「……僕に話しかけているのか」
一体誰だろうかと振り返った先にはレオナ・キングスカラーがいた。西日のせいか顔がはっきりとしないが確かにレオナ・キングスカラーであった。
3352