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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    ミーティア3️⃣ Az-4 『別』

    「アズール……ありがとう。キミがいなければ、僕はまだベッドの中で絶望したままだった。本当に感謝してもしきれないよ」
    「今生の別の様な事、言わないでください。今後簡単にはやり取りができなくなりますが、子供が産まれたときには、タイミングを見て必ず会いに行きます……」
     そう言葉を交わしてリドルは、僕の義父であるイヴァーノの車に乗って、これから名前も性別も変え、人魚の養女として暮らす事になる場所に向かってしまった。
     僕は車が見えなくなるまで、名残惜しいリドルの姿をずっと追うように見つめた。
     
     リドルを学園から陽光の国まで連れ出したのは、この男にリドルを匿わせるためだ。
     リドルと契約した後一番、この男に連絡して僕は初めての屈辱的な〝お願い〟をこの男にすることになった。母があのクソ親父と離婚して、次の再婚相手に選んだのはあの男とは見た目も中身も真逆の男だった。
     まるであの男と結婚したこと全てが失敗だったと言わんばかりに選んだ次の夫は、なんだかやけに存在自体が癪に障った。人魚としてはカースト上位の見た目と中身の男は、母と並んでも遜色なく、小洒落たアクセサリーを嫌味なくつけるタイプだ。しかも簡単に腹の中も見せない、実にやり手弁護士といった性格で、のくせ普段は軟派で軽薄さすら感じる。それだけなら母に「こんな男はやめておけ」と言えたかもしれないが、母の前ではやけに優しい顔になるせいで文句を言えない事が余計気に入らなかった。
     まぁでも、この男が義父という立場に収まって、僕はずいぶん勉強させてもらった。商売相手と対峙した時、どう振る舞えばいいか、どんな表情で、どんな言葉を使えば相手を誘導できるのか……そして、見た目に関しても、締まりの無い体系にダサいとさえ思える見た目だったあの男とは違い、陸に上がって一番、この義父のセンスは大いに参考になった。
     こんな事、一生言ってやるつもりはないけど……
     何よりこの男のバックには、あの馬鹿ウツボの父親が頭が上がらないマフィアのボスが付いている。だからきっとリドルが新しく住む場所も安全なはずだ。
     あの一夜から二週間。リドルの腹の中で本当に受精したばかりの子供は、まだ僕かフロイドどちらの子供かなんて分からない。それでもどうか、僕の子であってくれと祈りながら、もう視界には無い車の後ろ姿を、最後に見たリドルの姿、身体の弾力、そしてあの甘い唇の記憶を噛み締め、僕は後ろ髪引かれながらもと来た道のりを引き返した。

     明け方、学園にやっと戻れた頃、子供の様に癇癪を起こして学園から逃げ出したフロイドが、連れ戻したジェイドとともに戻っていた。
    「リドルさんから頂いた手紙を読んで、ずいぶんと後悔していましたよ」
     僕が「そうか」とだけ一言、ジェイドは特に何も言わず部屋に戻っていった。
     ジェイドには、リドルが僕と行為に至った経緯だけを掻い摘んで話した。それをフロイドが聞いてどうするのかはアイツ自身が決めることだと、僕はそれ以上フロイドにもジェイドにも何も言わなかった。
     ただ翌日、目を真っ赤に腫らしたフロイドが「オレ、金魚ちゃんの寮に転寮する」とだけ言いに来た。
     この双子の馬鹿ウツボとは、エレメンタリースクールから顔だけは知っていて、つるむようになったのはミドルスクールからだが、出会いから現在まで思い出してみても、フロイドのこんな顔は初めて見た。そして、コイツがリドルに向けていた思いの強さを改めて僕は知った。
    「オレぇ……金魚ちゃんを諦める気ねぇから」
    「そうですか、それは奇遇だ……僕もリドルさんを諦める気はない」
     言い返せば、フロイドは腫れた赤い目で僕をじっと見つめ、やがてそれにも飽きたのか「それだけぇ、じゃあね」と、踵を返し部屋に戻っていった。
     これが僕とフロイドの縁の切れ目になるかもしれない。そう考えながら、僕はフロイドにオクタヴィネル寮長として、自分の寮生への最後の仕事をした。
     転寮に必要な書類や儀式の手順が書かれたプリントを手渡し、「リドルさんの寮生から恨まれてるお前には生きにくい環境だぞ」「転寮してみたものの、嫌だから戻ってきたいと言っても簡単には戻れないからな」と言ってはみたが、僕はフロイドがオクタヴィネルにはもう帰ってこないことが分かっていた。
     めんどくさがりのくせに、こうと決めたら梃子でも動かない、アイツは出会ったときからそんな性格をしていた。だからきっと、次に廊下ですれ違う時は、リドルと同じハーツラビュルのあの赤い腕章を付けていることだろう。想像すると余りの似合わなさに笑いそうになった。
     ただ、これがいままで腐れ縁で、僕の計画に乗ってきたフロイドへの最後の軽口とばかりに、いつもと変わらない会話の流れで繁忙期のモストロ・ラウンジへのバイトを持ちかければ、「ん〜考えとく」といつもの調子でへらりと笑って手を振りその場を後にした。
     これ以降、卒業しあの再会まで、僕はフロイドと学園内で話す事はなかった。
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