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    おわり

    @owari33_fin

    基本的にアズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣後編-4 『前進①』

     ふわふわと揺蕩う意識の中、なんだか懐かしい声が聞こえる。その声に導かれるようにゆっくりと目を開けると、ここ半年で見慣れてしまった天井の下、見覚えのある顔が、ボクの顔を覗き込んでいた。
    「リデル、起きたかい?」
     目の前の半年ぶりに見るイヴァーノの顔に目をパチパチと瞬かせる。横を向くと、フレドが口をへの字にして、隣のアルマは眉を顰め、細い指でボクの額を撫でた。
     このアズール達と暮らす家に三人がいるのが、なんだか不思議でたまらない。
    「体の調子はどうだ?」
     調子……と聞かれ思い出したのは、激昂して怒り任せに魔法を使ったアスターとサミュエルの事だ。
    「あの子達は……無事ですか?」
     ボクが自分のことよりも二人の安否を心配すれば、フレドが盛大にため息を付いた。
    「オマエ、丸二日寝てたんだぞ。リーチんとこの黒服がオレを呼びにきたんだ、お前が大怪我したからってよ……リーチのボスは精神的な圧と腕の薄皮一枚引っ掻く程度だったが、あのチビどもの癇癪での怪我のが酷かった」
     フレドが言うには、リーチ夫人の前に立ったボクに瓦礫が当たる寸前、二人が魔法で威力を殺したんだろうとの事だった。でなければボクは、とっくに死んでいただろうと言われ、二人にそんな罪を背負わせなくて本当に良かったと心底ホッとした。
    「二人は?」
    「今は泣き疲れて、リーチの奥方にあやされてるよ。ベッラも心配して、今こっちに向かってる」
     二人の様子を見に行こうと起き上がれば、「まだ寝てなきゃいけないよ」とアルマに背を支えられた。
    「アズールとリーチの子息に聞いたけれど、柱をえぐって破壊するほどの衝撃を体に直接受けたんだ。それでなくとも、あのリーチのボスの圧を魔力のない体で受けた疲労は凄まじかっただろう?」
     お願いだから、もうこんな心配をかけさせないでおくれと、イヴァーノが本当に心配した表情で、大きなガーゼが当てられたボクの頭に労るように手をおいた。
    「打撲に内出血、亀裂骨折、切創、挫創による皮膚損傷……致命傷や傷の方はあらかた治したが、完治とまでいってない、あとは無理せず飯食って寝てさっさと治せ」
    「お養父様……フレドもアルマも、ボクのために、仕事を置いてまで来てくれてありがとう」
     お礼を言うと、インターフォンの音が家の中に響く。ベッラかもしれないと、イヴァーノが寝室を出ていった。
    「フレドもアルマも、病院の方はいいの?」
    「あぁ? 一日二日休んだ所で、簡単に死ぬようなヤツはあの辺にゃいねぇよ。ちょうど旅行もしたかった、うまい魚を食うついでってやつだ」
     ガハハと笑うフレドに、横に立ったアルマが「嘘おいしゃい」と呆れていた。
    「この人はあんたが大怪我を負って意識不明だって聞いて、迷うこと無くここに来たんだよ。私だって心配したさ。私達はこれでも、あんたのことは、孫か何かだと思ってるんだから」
     こんな無茶、もうしないでおくれねと、アルマがボクのガーゼが貼られていない方の頬を撫でた。あのビルに来た当初、不安ばかりが募るボクを見守ってくれた二人のことを、ボクだって、本当のお祖父様やお祖母様の様に思ってしまっている。その二人に掛け値なしにそう言われ、ありがとうと微笑み感謝を伝えた。
     そうこうしている間に、部屋の外、階段を駆け上がる音が聞こえ、バタン! と大きな音を響かせてアズールのお母様が部屋に突入してきた。
    「リデルさん、心配したのよ! アスターもサミュエルも、みんな無事でよかったわ!!」
     アズールのお母様が、ボクの首に抱きついた。ボクのことを相当心配してくれたのか、いつもは綺麗に編んで背中に流した髪が乱れていて、どれほど心配を掛けてしまったかが分かった。
    「お義母様にも、ご心配をおかけしました」
    「詳しいことは、この人もアズールも教えてくれなかったから、本当に本当に、リデルさんの顔を見るまでずっと心配で……本当に無事で良かったわ……」
     アズールのお義母様には、ボクのお母様から得られなかった愛情を、こうやって随分、もらってしまったように思える。
     ボクは確かに、リドル・ローズハートの全てを捨ててしまったが、それと同時にかけがえのないものと出会うことが出来た。それは、ボクの宝物であるアスターとサミュエルに始まり、ボクに与えられた偽の戸籍で養父となったイヴァーノ、呪われた上に男のボクの出産や育児を手伝ってくれたフレドにアルマ、アズールのお母様とお祖母様にも随分と気を使ってもらった。失っても、大切だと思えるものに出会えた掛け替えのない幸福に、ボクはひたすら感謝するしかなかった。
    「ところで、リビングに待たせてあるんだけれど、どうする?」と、お義母様に抱きしめられたボクに、イヴァーノがひやりとする表情でボクに問いかけた。
    「またせてあるって?」
    「リーチのボスのことさ」
     ボスと言われて、ボクは目を見開いた。この家に、フロイド達のお父様が来ているのか?
    「リデルが嫌なら、今すぐに追い返して、司法の場で彼を罰してみせようか?」
     ニヤリと笑うその顔に、アズールの表情が重なる。この顔をする時のアズールは、基本的に碌な事を考えていない。もし、イヴァーノもそうならば、フロイド達の父親をどうするかなんて想像したくもなかった。
    「お義父様、これはボクの問題です、手出しはしないでください」
    「えぇ〜、私だって娘を怪我させられて怒っているんだよ?」
    「それでも、ボクがどうにかします!」
     いい切ってリビングに行けば、ソファーにどかりと座った男がこちらを見た。
    「もう体は大丈夫なのか?」
     ボクが何かを言う前に、イヴァーノがボクの身体を彼の視線から遮って隠した。
    「私の娘は繊細でね、あなたに傷つけられた傷が深くて、未だに痛みが酷いと言っているよ」
     嘘だ、フレドのお陰で痛みなんてもうこれぽっちも無い。目の前の彼もそれが分かっているのだろう「じゃあ、てめぇの知り合いのジジイの腕が悪いってこったろ」と返され、イヴァーノがニコリと嘘くさい笑みを深くする。
     そんなイヴァーノの身体を押し退け一歩前に出ると、ボクの頭をぐるりと巻いた包帯や、頬に貼られたままの大きなガーゼに、一瞬少し分が悪そうな表情を見せた。
     近くのソファーを指さして、座れと言われ、ボクはソファーに座った。それを部屋の隅に立たされたフロイドとアズールが、あの時と同じく心配そうに見つめている。
     少し身構えるボクに「もうガキを連れてこうなんざしねぇから安心しろ」と彼がため息交じりにそう言った。
    「今回の件で、俺の息子が両方とも馬鹿なことは判明した。おかげに惚れた相手もダチも、その周囲の奴らもみんな馬鹿だ。その馬鹿の原因は、お前だって理解してるか? この馬鹿どもは、お前に惚れて、お前を守るために必死になってる。ほんと、巻き込まれた俺からしたらクソ迷惑でしかねぇ」
     人を馬鹿だなんて、なんて人だと文句のひとつも言いたくなる。がそれでもと続く言葉に、ボクは怒りを飲み込んだ。
    「それでも、こうなった原因に俺の血が混じってねぇとも言い切れねぇ。本当に、他は全然似てねぇのに、こんなとこだけ似るなんて、親不孝もいいとこだ」
     スッと片手を上げた彼が「ジェイド、あれをコイツに」と言えば、父親の後ろに控えていたジェイドが、ボクの目の前、机の上に、あの時とは違う金額の書かれた署名入りの小切手を置いた。
    「俺の個人資産から、一〇〇億マドルを貸してやる」
     そのとんでもない額に、ボクだけじゃなくその場にいた全員が驚きざわついた。
    「これだけの額があれば『anathema』内での発言に対し、かなりの効力が出る立場になれるはずだ。もちろん、来年には二倍にして返せ」
    「ハハッ! その辺の闇金も目を剥く利子じゃないか!」
    「あぁ!? テメェのオツムのいいって評判のガキは、自分の嫁の為に一年後倍にして返すこともできねぇ無能なのか?」
     そう言われたイヴァーノが、見たこともない表情で彼を見つめていたが、金額を確かめに近づいたアズールは、興奮気味にボクの背後から小切手を覗き込んだ。
    「これだけの額があれば、anathemaと真っ向から戦える。リドルさん、この交渉が無事済めば、あなたも子供たちも、隠れ棲むこともなくなりますよ!!」
    「ただ、一つ条件がある。フロイド、お前ちゃんと俺の跡を継げ。仕事の合間にガキに会いに来ることを止めろとはもう言わねぇ代わりに、きっちりファミリーを守れるなら、俺はもう何も言わねぇよ」
    「いいよ、くだんねぇファミリーも、オレが継いだらちょっとは面白くしてやるよ」
     ヘラリと笑ってそう言うフロイドに、ジェイドは楽しげに「期待してますねフロイド」と言って「お前はもっと真面目にしろ!!」と怒られていた。
    「後は……当面の警備に、リドル・ローズハートにつけていた監視分の人数までなら、護衛につけてもいい。俺からできるのはこれが全てだ」
     これほどの譲歩は無いだろう破格の条件だと、アズールもフロイドも、ボクの知らない間に〝この先〟の事をずっと考えていてくれたようだ。
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