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    @owari33_fin

    基本的にアズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア3️⃣後編-5 『前進②』

    「「かあさん!」」
     リビングの入口、二人の声に振り向けば、リーチ夫人とアズールのお母様、フレドとアルマに連れられて、目を真っ赤に腫らしたアスターとサミュエルが走ってきた。
    「二人とも怪我はなかったかい?」
    「だいじょうぶ、かあさんのほうが、ケガして……ごめんなさい、かあさん、ごめんなさい」
    「やくそくも、やぶって、おれ、ごめん、ごめんね、かあさん」
    「いいんだよ、二人とも……間違っても謝って、二度としなければもういいんだ」
     大粒の涙を流し、ボクの膝に顔を埋める二人の頭を撫でれば、二人のお腹がグ〜〜〜と大きく鳴り、リーチ夫人が「そうだわ!」と声を上げる。
    「もうお夕飯の時間ですもの、せっかくこれだけの方が集まっているのだから、『un plato rico』のアドリアでも呼んで、皆でパーティーしましょうか?」
    「「『un plato rico』!? あの、世界一予約の取れないレストランの、あのオーナーシェフのアドリア!?」」
    『un plato rico』と聞いて、アズールとお義母様が、母子揃って目を輝かせる。お義母様は、珊瑚の海一番のリストランテを営んでいらっしゃるが、それと同等のレストランとなれば、二人揃って興味津々のようだ。
    「母さん、それもいいですが。流石に彼を今から直接呼ぶとなると少なくとも最低でも三時間は用意に掛かってしまうかもしれません。みなさんもお腹が空いて待てないでしょうから、今日はデリバリーして貰うのはどうでしょう?」
     ジェイドがお腹を鳴らしながら提案する姿に、フロイドが「ジェイドが腹減ってるだけじゃん」とツッコミをいれる。
    「あら? 気づかなくてごめんなさい、じゃあジェイドさん、お願いできるかしら? パーティーですもの、みんなで楽しく食べられるお食事がいいわね!」
     夫人の希望通り、ものの一時間もせず、その世界一予約の取れないというレストランの料理が届き、リビングやダイニングテーブルの上に広げられた。
     前菜にメインの魚と肉料理が数十種類並び、美しい見た目をしたそれを一口頬張れば、みな興奮して口々に美味しいと声をあげる。大人は皆、一瓶いくらになるかわからない年代物の高級な白の辛口ワインを、作法なんて忘れてグビグビと飲み、上機嫌だ。アズールとお義母様は、『un plato rico』の料理を写真に収め、料理の見た目や味についての感想をノートに書き連ねていた。
    「余興の一つぐらいなんかやってみろや」
     美味しい料理に上機嫌になったフレドがそう言えば、子供たちがせがんで、リビングのインテリアに飾ってあった黒いミニサイズのグランドピアノを持ってきた。
    「「とうさんひいて!」」
     ニコニコと子供達にリクエストされれば断ることも出来ず、アズールが聞いたことのあるクラシック音楽をジャズアップした曲を奏でれば、それに合わせるようにフロイドとジェイドが食器や家具を叩いてドラムパートを奏でた。そこに、フロイドはでたらめな歌詞を乗せて歌い、みんなもそれに合わせて手拍子したりと楽しげだ。
     その光景を眺めていると、ふとフロイドとジェイドのお父様が部屋にいない事に気づく。先ほどまで部屋の隅からこの光景を眺めていたのに、もしかして帰られたのかと急いで外に出れば、先日乗ったあの黒塗りの車に乗り込もうとされていた。
    「帰られるんですか?」
    「んぁ? あぁ、お前らみたいなヒマ人と違って、こちとら仕事が山積みなんだよ。アイツはまだガキ共と話し足りねぇだろう、お前がガキを産んで、それが馬鹿息子そっくりだった時から、ずっと構いたがっていたから……悪いが今は好きにさせてやってくれ」
    「それは、もちろん……ただ、あなたの息子さんはバカなんかじゃありません」
    「旦那がいる身で他の男の話か?」
     ニタリと意地悪く笑われ、ボクは咄嗟に否定した。
    「ちが! そうじゃなくて……フロイドは、あなたの息子さんは、優しい人魚です」
    「はっ! お前がそう感じるなら、あの馬鹿が相当お前に入れ込んでるってだけだ。俺は誰にでも慈悲深く接しろなんて、そんな風にガキを育てた覚えもない、本当にほしい獲物は、一発で仕留めろとそう教え育ててきた。まぁ、お前があの馬鹿を少しでも気に入ってるなら、今後も稚魚の一匹や二匹、組を継げるまともなやつを産んでくれ」
    「ボクは自分の子供を真っ当な職以外に就かせようとは思いません」
    「そりゃイイ考えだ」
     ははっと素で笑った顔が、ずいぶんと年若い少年にも見える様な顔をしていてボクは少し驚いてしまった。その顔は、ナイトレイブンカレッジで、時にアズールやジェイドと悪巧みが成功して笑ったり。放課後の部活、体育館を通り過ぎた時、エースやジャミルと部活で楽しげに笑っていたフロイドの顔に重なった。
    「……本当に、ありがとうございました。あなたのおかげできっと、ボクの宝物は幸せになれる」
     あの小切手の額、あれがあればanathemaが子供達に手出しできなくなるとアズール達が言っていた。子供達が隠れ住む事もなく、自由に生きれるなんて想像もしなかった。その未来を与えてくれた彼には、心から感謝しかなかった。頭を下げて礼を言えば、「礼を言うのはこっちだ」と彼が真摯な表情を向ける。
    「アイツを助けてくれて、本当に感謝してる……俺は、惚れた女のために、アイツが誰にも傷つけられない様に、それだけの為に生きてきた……お前があの時、咄嗟にアイツを庇ってくれていなければ、俺自身がどうなっていたのか分からない」
     気が狂ってその場にいた全員を殺しかねなかったと言う彼は、奥方の無事と自分が息子や孫、その友人やボクの事を手にかけなくてよかったと真底ホッとしていた。
    「ボクもあの子たちに辛い思いを、罪を負わせなくて良かったと思っています」
     それに、サミュエルだけでなくアスターの事まで孫だと思い優しくしてくれる彼女を助ける事ができて本当によかった。
     ボクがそう言えば、目の前の彼がまた厳しい表情を顔に貼り付ける。
    「お前なぁ……かなり考え無しすぎるだろ! ったく……アイツらの中には、その宝物とやらの中にオマエも入ってるんだ。感謝するならもっと自分の身の安全も含め、周りの意識を自覚しろ」
    「そう、ですね……ありがとうございます」
     本当に分かってるのかと言う視線を向ける彼は、ボクがどう言おうと疑いは取れないようだ。
     今度こそクルマに乗り込もうとする彼に、「また遊びに来てください、今度はあの子達の祖父として。ご馳走も用意してお待ちしています」と言えば、「俺はまだジジイになる気はねぇよ……まぁ、飯ぐらいはそのうち食いにきてやる」
     長話はこれで終だと、車に乗り込むペコリと頭を下げると、それに気づいた彼がボクに向かってヒラリと片手を上げた。
     そうして、田舎町に似合わない車に乗り込んだ彼を、車が見えなくなるまで見送って、ボクは家に入った。
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