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    @owari33_fin

    基本的にアズリド/フロリド同軸🆚
    ここに上げたお話は、大幅に加筆してpixivに置いてます→pixiv https://www.pixiv.net/users/31202925

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    ミーティア4️⃣前編-2『新しい日常②』

     今日の昼食は、トマトのツナ詰めに、ペンネボロネーゼ、そして今朝焼いた食パンだ。アスターとサミュエルはいつもの様に三度と少しおかわりして、その豪快な食べっぷりでフェデーレさんを楽しませていた。
    「リーチ家のお子は、人一倍よく食べる方が多かったですが、いやはや坊っちゃん方も本当に良いっ食べっぷりだ」
     見ていて気持ちがいいと笑うフェデーレさんのお皿も空になっていて、今回も口に合ったようで良かったと、ボクはホッと胸を撫で下ろした。
    「奥様、今日の料理も大変美味しゅうございました」
    「ありがとうございます」と、取扱説明書を隅から隅まで読んだおかげで、今ではアズールより取り扱いに慣れた彼のスタイリッシュなコーヒーメーカーで煎れたコーヒーをフェデーレさんに出した。ボクは苦いコーヒーは苦手で、ミルクと砂糖を多めに入れなければ飲めないコーヒーも、知った人は皆ブラックのまま飲んでいてなんだかくやしい。もちろん、フェデーレさんもブラックのまま飲んでいる。
     アスターとサミュエルは、少し冷ましたルイボスティーだ。これはアズールがまだ夕焼けの草原で働いていた時に、同僚の方に勧められ送ってきてくれてから、二人がずっと飲んでいるお茶だ。首都である暁光の都から南部に位置する山脈に囲まれた一帯、そこでのみ栽培されているこのルイボスティーは、王宮御用達のマークが入っていた。二人はそれに口を付けて飲もうと頑張っているが、半分ぐらい飲んだ所でうつらうつらと船を漕いでいる。
    「今日もよく遊ばれていましたからね」
    「ボクじゃもう二人の体力についていけないので、フェデーレさんが遊んでくださってとても助かっています」
    「いえいえ、これくらいどうって事ありません。フロイド坊っちゃんやジェイド坊っちゃん……それに首領も昔は大変やんちゃで、ご両親の言いつけもお聞きにならず、私もずいぶんと手を焼きました。が、坊っちゃん方は奥様の教育が行き届いていらっしゃる」
    「フロイドたちはそんなに凄かったんですか?」
     興味本位で聞いてみれば、フェデーレさんの目が昔を思い出してほんの少し険しい顔になる。
    「凄いなんてもんじゃありませんでした。なんでも簡単にこなしてしまうフロイド坊っちゃんに、熱しやすく冷めやすいジェイド坊っちゃん……二人して常に暇で暇で仕方ないと、毎日の様に暇つぶしできる何かをお探しになっては、屋敷にある五億マドル近くする彫刻を粉々になされたり、兄弟喧嘩で屋敷の壁や窓、調度品や美術品を壊し……それはもう、ご両親も大奥様も大変頭を悩ませておられました」
     ボクから聞いてみたものの、思った以上の凄さに言葉を失ってしまった。ボクに個人資産から一〇〇億マドル出せる彼が屋敷に置くとなれば、きっと全てが一流のものばかりだろう。ボクだって、ベッドメリーが頻繁に壊れた時に相当に頭を抱えた。それ以上の唯一無二の芸術品を毎日のように壊されては、彼もリーチ夫人も、二人して当時は相当頭を悩ませたろう。
    「しかし、そんな坊っちゃん方がミドルスクールに入学なされ、ある日、顔面に青あざをいくつも作ってお帰りになられましてね。それはもう、周りは大層焦っているのに、お二人は本当にずっと楽しそうで……ミドルスクールで初めて自分たち以外の人魚に興味を持たれ、その方とご友人になり、果てはご友人と陸の学校に向かわれてからも楽しそうで、本当に安心いたしました」
     フェデーレさんの話に、思い浮かぶのはオクタヴィネルで悪巧みを企てていた頃のアズールの姿だ。あの頃は、ボクの寮生も彼の口車に乗せられてイソギンチャクを頭に生やされたり、何も考えず契約書にサインしては、モストロ・ラウンジで対価を支払うために働かされていたりといった姿を思い出す。
     さすがに、寮の当番や学業に差し支えた時は、ボクが直々に出向いてシフトを変更させたりしたが、悪いことを考えている時の彼らはいつだって楽しそうで輝いていて、三人揃って同じ表情で笑っていた。確かに悪どい顔ではあったけれど、ボクなりに彼らの信頼関係を見て取れる瞬間でもあった。
     しかし、そんな三人は決して、自分たちのそれを友情だとは言わなかった。腐れ縁……幼馴染……悪友、とそんな言葉で表現していたくせに、フェデーレさんの話を聞けば、やっぱり大切な友人だったんじゃないかと、ボクは小さく微笑んで、今どうしているかわからないボクの大切な友人の顔を思い出す。
    「ナイトレイブンカレッジでの彼らは、ボクの目から見ても毎日本当に生き生きとしていました。もちろん、人を陥れるような悪巧みは感心しませんけれど」
    「はっはは! それは手厳しい。アスター坊っちゃんとサミュエル坊ちゃん、二人が楽しそうに遊んでいらっしゃる姿は、あの時の事を思い出して、私の心を大層昔へと戻してくださる」
     フェデーレさんは、フロイド達のお祖父様の代からファミリーを支えてきたと話していた。この歳まで結婚もせず、その生涯をリーチファミリーに捧げる彼は、フロイドたちを見るその目には、子や孫を見つめるような愛しさが籠もっていた。
     そんな彼が仕えるリーチファミリーに、ボクの中の裏稼業への悪印象が少し緩むほどには、ボクはフェデーレさんを信頼していた。
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