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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    おわり

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    キミは始まりのミーティア 後編 2(1)

     アズールが送ってくれたフェリーのチケットをフロントクラークに見せれば、何故か奥から「お待ちしておりました」とスマートな出で立ちの男性が現れ、ボクたちの荷物を持ち、客室まで案内してくれた。
     隣の国まで行く船だ、カジュアルな客船を想像していたら、ボクたちが乗ったアンフィトゥリーテ号は思った以上に豪華な内装をしていた。
     五階から七階まで三層吹き抜けのエントランスは白とブルーサファイヤカラーで統一され、繊細な彫刻が施され美しく、初めて船に乗るアスターやサミュエルは「すごーい!」と目をキラキラさせて飛び跳ねた。
    「他のお客さんに迷惑になるような事はしちゃだめだよ」
     はしゃぐ二人に釘を刺すと、二人はそれ以上大声でしゃぐことはしなかったが、それでも初めて見る世界に胸を高鳴らせていた。
     ボクたちが二日間宿泊する部屋に案内されると、部屋扉に張り付けられたゴールドのプレートには、ロイヤルスイートルームと刻印されており、ベルパーソンの手によってドアが開けられると、あまりにも美しい内装に、二人がはしゃいで部屋の中に突撃し探検を初めた。
     二人を止めようとするボクに、ベルパーソンの男性は「お気になさらないで下さい」と返し、ボクの了承を得て荷物を入り口横のクローゼットの手前に置いた。
    「このお部屋は、我々アンフィトゥリーテ号最上級のお部屋となっております。船首前方に位置し、北側の窓を開けていただくと美しい陽光の国の海を一望していただけます。それと、アーシェングロット様より、奥方様方へプレゼントをお預かりしております」
     彼に奥方様と呼ばれ、ボクは一瞬思考が停止した。この奥方とはボクの事で間違いなんだろうけど、そんな呼ばれ方を今まで一度もしたことがなかったのでどうしても慣れない。
     眉間に皺を寄せていると、アスターとサミュエルが「プレゼントってコレ!?」とテーブルに積まれた箱を指差す。
    「はい、そちらがそうです。また、本日は十九時からメインダイニングにてディナーのご予約もいただいておりますが、お子様もいらっしゃいますし、お部屋にお運びしましょうか?」
     ボクが迷っていると、二人がレストランに行きたいと騒ぎ、ベルパーソンは笑顔で了承した。
    「お部屋の冷蔵庫に入っているドリンクやご注文くださる軽食は全て無料となっております。また、何かございましたらそちらの電話から及びいただければ、アーシェングロット様専属をさせていただきます私めが、ご用を承ります」
     背をピシリと曲げて部屋から出ていく彼がドアをパタリと閉め、ボクはやっと息付くことができた。
    「「かあさん! とうさんからのプレゼント開けてもいい?」」
    「いいよ、ただし包装紙をビリビリに破いちゃいけないよ」
    「「はーい!」」と元気に返事した二人は、ボクが見ても分かるハイブランド店の包みを剥がし、中から現れた白い箱の蓋を開けた。中に入っていたのは、子供サイズのフォーマルなスーツだった。
    「なにこれ凄い! おじいちゃんが着てるやつだ!!」
    「おとなの服だ!! かっこいい!!!」
     差し色に紫の入ったグレーと、黄色の差し色のブルーの二着のチェックのスーツは、ジャケットとベスト、シャツに蝶ネクタイ、そしてポケットチーフまで全て揃っていた。別の箱にはスーツに合わせたピカピカの革靴が入っており、二人は服を広げて「かあさんコレ着たい!」とボクにお願いしてきた。
    「それは夕飯の前にね、今は箱に戻して、おばあちゃんが渡してくれたサンドイッチを食べよう?」
     提案すると、お義母様のサンドイッチと聞いた二人は、すぐさま服を箱に戻し、サンドイッチを食べるべく手を洗いに行った。
     ボクは、二人にサンドイッチを渡して「仲良く分けるんだよ?」と言い、服を汚さないようにベッドルームに移動した。二人のスーツをハンガーにかけて、ボクも自分宛ての包みを開けると、そこには紫のオーガンジーを重ねた、Aラインの膝丈のイブニングドレスが入っていた。デコルテの大きく開いたドレスは、パフスリーブの部分は白のオーガンジーで、キラキラとした小粒のパールが品良く縫い付けられている。他にもシルバーのアクセサリーやポインテッドトゥの銀のエナメルが美しいミュール、ビジューのついた華やかなバッグ、そして止めにドレス用の下着やタイツまで入っていてボクは頭を抱えた。二人がこの箱を間違えて開けなくて本当に良かった。
     今ここにアズールがいたら「キミは一体、何を考えてコレを選んだんだ!」と怒鳴りそうなぐらいに腹が立って恥ずかしかったが、レストランのドレスコードを考えれば、このイブニングドレスを着ないわけにはいかない。
     これでもこの五年弱、アルマのワンピースに袖を通してきたおかげか、昔ほど女装への抵抗も薄くなっているボクは、仕方ないとドレスをハンガーにかけてリビングルームに戻れば、アスターとサミュエルが最後の一切れのハムとタマゴのサンドイッチをどちらが食べるかで揉めていて、ボクはいつもの様に二人の間に割って入った。

     海が茜色に染まった頃、ボクはアズールが送って寄越したイブニングドレスに着替え、フォーマルな場に合わせ髪を編み込み、アルマに待たされていた化粧品でナイトレイブンカレッジ以来のメイクを顔に施す。これで少しは女性に見えればいいのだけれど。
     着替えを終えてリビングに向かうと、先に着替えをさせた二人がボクの姿を見てわっと声を上げる。
    「かあさんキレイ!」「お姫さまみたい!!」
     本当は男のボクが、女装して綺麗と褒められるのは複雑だ。しかもそれが自分の子となるとどう反応するのが正解なのかわからない。とりあえず「ありがとう」とお礼を言って、ボクは二人の手を繋ぎ部屋を出た。
     スーツに合わせて、いつもは好き放題跳ねた髪を撫で付けてあげれば、二人の幼い顔は、アズールとフロイドの面影が強く顔に出る。こんな時、本当に彼らとボクとの子なんだと思い知らされた。
     二人は初めて着る服装に緊張しているのか、なんだか歩き方がぎこちない。アスターは「動きがブリキのロボットみたい」とサミュエルに指差して笑われ、サミュエルは手と足を同時に出して歩くもんだから、アスターがお腹を抱えて「サミーだってロボットみたいだ!」と笑っていた。笑っちゃダメだよと嗜めてみたが、満面の笑顔で楽しそうに無邪気に笑う二人が本当に可愛らしくて、ボクの心臓がギュッとなる。本当に、ボクの二人は自慢したくなるぐらいかわいい。

     メインダイニングに着いて予約の名前を聞かれ「アーシェングロットです」と答えれば、にこやかに案内されたのは景色がよく見える個室だった。
     イヴァーノやフレドから、ここを離れてからもanathemaの警戒を怠るなと言われていた。そんなボクたちが人の目に触れないように配慮してくれたのだろうか? それ以前に、ボクは二人にこういった場での本格的なテーブルマナーを教えたことがない。きっと個室じゃなかったら二人も緊張して食事を楽しむことは無理だったろう。個室を選んでくれたアズールに感謝して、ボクたちはフルコースのディナーを楽しんだ。
     アズールが選んだだけあって、ここの料理は素晴らしかった。船の所有が輝石の国だけあって、初めて見るメニューに二人は驚いて「かあさんのご飯ともアルばぁの料理ともちがう!」「でもおいしい!」「おいしいねー!」と楽しげに食事していた。二人のプレートは、子供用に味付けを変えてあるのか、可愛らしい子供用のプレートに乗せて運ばれてくる。
     個室付きのギャルソンが、料理を運ぶ度にお礼を言う二人ににこにこ笑いかける。
    「ねぇねぇ、このお肉おいしいね」「このお花は食べれるの?」
     二人の質問に、嫌な顔せず答えてくれるギャルソンは、一つ一つ丁寧に二人にわかりやすく説明してくれた。
     デザートまできっちり食べ終えた二人は、本当に満足そうで、最後にギャルソンにお礼を言えば、おみやげにどうぞとマドレーヌが入った紙袋を渡してくれた。
     二人は、ボクがお礼を言うんだよと言う前に、満面の笑みでギャルソンにお礼を言えば「明日もお待ちしております」と返事を返された。
     アズールはどうやら、ここにいる間の食事の手配も全て行ってくれたようだ。
     部屋に帰り、二人をお風呂に入れ、いつもよりふわふわのバスタオルで身体を拭けば、二人はきゃっきゃと騒いで、そして疲れたのかすぐさまベッドで寝てしまった。
     ボクも今日は朝から色々あって疲れた。今日は早く寝てしまおうとベッドに潜り込むと、ゴソゴソと布擦れの音がして、二人が目をこすりながらボクの眠るベッドに潜り込んできた。
    「「かあさん、いっしょに寝てもいい?」」
    「いいよ」
     フカフカの羽布団を持ち上げ空間を作ると、二人は左右から潜り込みボクに密着した。
    「えへへ、かあさんすき」「おれも、かあさんすきー!」
     密着してボクの手を握る二人は、ぺたんこになったボクの胸にグリグリと頭を擦り付ける。その甘える仕草がかわいらしい。
    「ボクも二人が大好きだよ」
     そう、全てを捨てても良いとさえ思えるほど、ボクは二人が大好きだ。かわいいボクの宝物。今晩も良い夢が見れるようにと、ボクは二人の額にキスをして。暖かい体温に挟まれて眠った。
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    おわり

    PAST今現在、恋愛感情なんか微塵もないアズリドとフロリドの未来の子供がやってきてなんやかんやのクソ冒頭
    並行世界チャイルド それは、授業中の出来事だった。
     グラウンドの上。辺りが急に暗くなり、さらに大きな穴が空いた。雷鳴轟かせる穴。その口から吐き出された二つの塊が、このとんでもない事件の発端になるとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。

     * * *

     授業中、慌てたゴーストがリドルを教室まで呼びに来た。緊急だと言われ、急いで学園長室まで向かうと、その扉の前でアズールとフロイドと出会った。
     苦手な同級生と、胡散臭い同級生兼同じ寮長である二人を見て、リドルは自然と眉を顰めた。
    「あー! 金魚ちゃんだぁ〜!! なになに、金魚ちゃんもマンタせんせぇに呼ばれたの?」
    「僕たちも先ほど緊急の知らせを受けて来たんです」
     この組み合わせなら自分ではなくジェイドが呼ばれるべきなのでは? とリドルは思った。どう考えても、二人と一緒に呼ばれた理由が分からない。こんな所で立っていても仕方ない、コンコンとドアをノックすれば、学園長室からバタバタと走り回る音が聞こえた。中からは、やめなさい! と言う声や、甲高い子供の声と泣き喚く声が聞こえた。
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