赤い実はじけた「結婚を申し込まれた」
少しは驚かれるかという予想に反して、セテスはそうかと頷いただけだった。ベレトの補佐を務めるうちに多少のことでは動じなくなったのかもしれない。頼もしい限りである。
「…うん?だが国王陛下からの書簡は三日前に届いたばかりでは?」
「なんでディミトリが出てくるんだ?」
疑問を素直に口にしてベレトが首を傾げると、とたんにセテスの顔つきが厳しいものに変わった。眉間の皺がいつもよりも一本多い。取れなくなるぞと指摘してしまうと、誰のせいだと責められるのが分かっているので見て見ぬふりをする。
「…いったい誰に、求婚されたのかね」
常よりも低い声に問われてガルグ=マクにほど近い領土を治める若き侯爵の名を告げれば、眉間の皺がさらに一本追加された。
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