タイトル未定 ファウストは努めてグリーンフラワーを採取する仕事に夢中になった。萼を潰してしまわないように指先でやさしくつまみ、ゆっくりと剥がすように摘み取っていく。グリーンフラワーは花弁に傷がつくと傷むのが早くなってしまうため、ファウストはいつだってこの繊細な小花に注意深く接した。摘み取ったそばから青く瑞々しい香りが鼻腔に入り込んでくるのを肺腑に染み込ませながら、黙々と小さな花を摘み取る作業に没頭する。気まぐれにいくつか口に放り込むと甘くてしっとりとしていた。緑の萌える豊かな気配があたりを埋め尽くして、清浄な空気に満ちている。明るい日差しが木々のあいだをすり抜けて降り注ぎ、すこし暑く感じるほどだ。空は青く澄んで、遠くに雲がたなびいているのが見える。しばらく雨が降っていないので、東の国にしてはすこし埃っぽく感じるほどだった。
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