構いたい勇利くん 重たい眠りからゆっくりと覚醒すれば、世界の輪郭がはっきりと見えてくる。目を開けばまず初めに視界に映るのは、何よりも愛しい愛する人の姿だ。
「おはよう、びくとる」
珍しく、おれよりも先に起きていたらしいアーモンド色の瞳が、瞬いて朝の光を弾く。まだ掠れた小さな声で、ささやくユウリ。
「おはよう、ユウリ。今日は、はや――」
今日は早いんだね、と。
告げようとしたおれの唇は、あまりにも唐突な恋人のキスによって封じられてしまった。小さな水音。触れるだけのバードキス。不意を食らって思わず目を見開いたおれの顔を見て、まるでいたずらが成功した子どものように、無邪気にユウリは笑った。
「驚いた? ヴィクトル」
つられて、おれも笑ってしまった。
1702