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    mmmori0314

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    mmmori0314

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    蒼真くんと有角さんがご飯食べてるだけの話。
    有角さんは半吸血鬼なので人間とはちょっと違う感覚で生きてるけど、そんなこと知らない蒼真くんから見るとやべー奴だよ。

    ##悪魔城ドラキュラ

    たまには貴方と食卓を 何でこうなったんだったかな、と蒼真はぼんやりと考えた。
     食欲をそそる匂いに満たされたカレー屋。いつもなら最高にわくわくするのだが、今日は微妙に居心地が悪い。
     ざわつく店内の一番隅の席で、周囲を見ないようにメニューに目を落とす。ちらちらと人の視線が向けられているよう感じるのは気のせいではないだろう。
     間違いなく、向かい側に座っている有角のせいだ。
     陶器のような滑らかな肌。切れ長の目と影を落とす長い睫毛。どこか陰りのある美貌と、高級そうな服に、優雅な所作。
     庶民的なカレー屋が死ぬほど似合っていない。高級レストランでフルコースでも食べているほうが似合うんじゃないだろうか。蒼真自身、生まれつきの髪色のせいで目立つ方だが、このちぐはぐ感の前では霞むと思う。多分。
     もっとも、有角本人はそんなことは欠片も気にしていないようだったが。不躾な視線も雑音も、気にかける必要もないとばかりに落ち着き払っている。
     気にしているのは蒼真ばかりで、何だか損をしたような気分だ。
     本当に、何でこうなった。どこで何を間違えた。
     現実逃避のように、蒼真はここに来るまでのことを思い返し始めた。



     きっかけは、たまたま有角に出くわしたことだった。
     今日の飯を調達しようと赴いたコンビニでの事、一人暮らしの大学生の食生活などいい加減なもので、カップラーメンで良いかと手に取ったところを見咎められた。
    「……お前、ちゃんとした食事は取っているのか?睡眠は?若いからといってあまり無茶な生活をするのは感心しない」
     いやなんなんだあんたは。
     この男は蒼真が魔王として覚醒しないよう見張っている監視役であったはずだ。蒼真の健康生活のお目付け役でもなければ、実家の親でもない。
     それが今やこれである。以前はもっと突き放した態度だったように思うのだが、会うたびに口うるさくなっている気がする。無愛想で冷たい雰囲気だけは相変わらずだが。いや過保護になるならそこはもう少し優しくなってくれ。
     ちなみにこの監視、あの日食の事件以前は細心の注意を払って蒼真を避けていたのだそうだ。一目見ただけでも忘れられない容姿である。蒼真がしょっちゅう入り浸っていた白馬神社に有角も出入りしていたはずなのに、すれ違った覚えさえなかったのは不思議だったが、そういうことだったらしい。
     それが一度会ってしまってからというものの、姿を隠す意味はないと判断したのかその辺に普通にいる。浮世離れした美貌は街中では完全に浮いていて、「コンビニとか行くんだ……」と思わず言ってしまったこともあったが、「コンビニくらい行くぞ。便利だからな」と当然のように返された。案外普通に生活しているらしい。
     それはさておき。
    「そもそもさ、そういうあんたこそちゃんと食べて寝てるのか?顔色悪いけど」
     コンビニを出た後、店の前の駐車場にて。外で立ち話もなんだったので、有角の車の中である。
     結局圧力に負けてカップラーメンは買えなかった。その不満を込めて有角の顔を見上げる。青白い顔とほっそりとした身体つきは美しいが、お世辞にも健康的とは言い難い。
     しかも、説教していた本人が購入していたのは大量の缶コーヒーである。無糖ブラック。睡眠時間を削ろうとしている気配がそこはかとなく漂っている。
     案の定、有角は虚を突かれたような顔をして、それから憮然とした顔で首を振った。
    「まぁ、碌に食べても寝てもいないが……仕方がないだろう。お前が起きる頃には起きねばならん。それにお前が寝た後にも仕事がある」
     出来るなら夕方まで眠っていたい、と言うあたり、本来は相当な夜型らしい。生憎とこちらは真面目に授業を受けてる大学生だ。朝は早い。早寝かと言われると、遊びたい盛りの若者にそんな爺さんみたいな生活は出来ないが、それでも昼夜逆転レベルで遅いわけではない。
     明らかに生活リズムが合っていない。しかも夕方まで寝るのが理想というなら、布団に入るのは明け方なんじゃないだろうか。それで朝早く起きるのは睡眠不足にも程がある。寝ろ。
    「あんたそのうち過労死するぞ……。休めよ、特に俺の監視のほう」
    「生憎と普通の人間より頑丈に出来ている。この程度では死ねない。あとどちらかといえば監視のほうが主な業務だ」
     出来れば放っておいて欲しい、という願望だだ漏れの提案はあっさり却下された。だがまあ多少は心配なのも本当だ。色々とアレな奴だとは思っているが、有角には恩がある。そんなことで身体を壊されても寝覚めが悪い。
    「……まあ、仕事が落ち着いたら少し休む。あんなことがあったばかりだからな。今は警戒しておきたい」
     あんなこと、と有角が言うのは、先立ってあったセリアの襲撃のことだろう。魔王を望む怪しい教団に白昼堂々、それも街中で命を狙われ、本拠地まで殴り込みに行ったのはまだ記憶に新しい。あの時は大変だった。
    「……首を突っ込むな、と言っても聞かんからな。お前の視界に入る前に、全て叩き潰しておくに限る」
     じとりとした目で睨まれた。確かに、深入りするなという有角の忠告を無視して単身乗り込んだのは事実だ。まだ根に持っていたらしい。
    「えっと……ごめん……」
     有角の視線の圧に押されて目を逸らす。
     渦中へ一人で飛び込んだものの、結局多くの人に助けられた。それはハマーでありヨーコでありユリウスであり、そして何より有角だった。
     深い絶望に堕ち、憎しみに支配されかけたあの時。引き留めてくれたのは有角だった。あの時彼が来てくれなかったら、蒼真はこの日常に帰ってくることは出来なかっただろう。それだけに耳に痛い。
    「別に責めるつもりはない。あの件については最良の結果に終わった。今後は俺が全て事前に排除すればいい」
    「あ、ああ……うん……ありがとう……?まあ、あんま根詰めんなよ。ちゃんと食って寝ろって」
    「そのうちな」
     返事は至って適当だ。改める気はあまり無さそうである。その主な原因が自分への信用のなさというところに、多少の罪悪感を覚えなくもない。いや、解決法が力技すぎる気もするが。
    「というかさ、飯食う暇もないのか?」
    「……。それは面倒だっただけだな」
     ……おい。おいこら。
     一瞬の思考停止を経て再起動、気を取り直して何ともいい加減な生活を白状した有角を睨み上げる。
    「説得力って言葉知ってるか?」
     いっそ清々しいほど、自分のことは棚上げである。負い目がある分、ちゃんと忠告を聞こうとしていた殊勝な気持ちが削られていく。それだけ寝食を蔑ろにしていて、どの面下げて他人に説教していたのか。
    「俺に注意する前に自分の生活改めろよな。あんたがちゃんと食うなら俺も食うよ」
     まあ、有角が自分の言うことを聞くとは思っていない。
     まったく心配していない訳ではないが、どちらかといえば一方的に言われるのが気に食わなかったというのが主だ。こう言っておけば口うるさい小言が少しは減らないだろうかという打算も多少あった。
    「そうか。なら今から食べに行くか」
    「へ?」
     そんな風に考えていたせいか、その提案に、思わず素っ頓狂な声が口から飛び出した。
     今から?食べに?誰と誰が?
     考えるまでもない。
     明確な食事のお誘いだ。疑問を差し挟む余地はない。言っているのが、この他人との交流なんぞに一切興味はございませんという顔をした男であるという一点以外は。
    「あ、あぁ……うん……」
    「何が食べたい?お前の好きなものでいいぞ。支払いは俺が持つ」
     曖昧な相槌を肯定ということにしたらしい。既に食べに行く方向で話がまとまっている。
     なんとも気まずい食事になりそうという気の重さと、この非日常の象徴みたいな男の日常生活への好奇心、他人の奢りという抗いがたい誘惑、諸々がとっ散らかって、蒼真の心中は混沌とした様相を呈している。
    「……何でもいいのか?」
    「構わない」
     有角は気前のいいことを言って、それから思案するように少し首を傾げ、ただし、と付け加える。
    「……そこらで食べられる範囲で、だが。猿の脳みそやら孵りかけのヒナやら、どこで食べられるのかわからんものは流石に困る」
     真顔である。冗談で言っているのか本気で言っているのかわかりづらい。多分冗談だろう。冗談ということにしておこう。本気だとしたらそんなゲテモノ食べると思われてるのかと問いただしたくなる。冗談とか言うんだこいつ。
    「そんなもの食わないって……なんだそれ人間の食べ物?」
    「一応人間の食べ物らしいぞ。何でも食べるものだな、人間」
    「マジかよ……」
     現時点で既にこの男とのコミュニケーションに不安がないわけではないのだが、それでも、固まりかけている話をわざわざ断るという選択肢は浮かんでこなかった。奢りというのは魅力的だ。学生というものは、時間は有り余っているが金はないのだ。昼食代が浮くならそれだけ遊ぶ金が増えるというものである。
    「なあこれ高級ステーキとか鰻とかふぐとか言ったら食わせてくれるのか?」
     ただまあ、何となく一方的に困惑しているのが癪だった。
     財布に優しくなさそうなものをいくつか挙げたのは、少し困らせてやりたいと思う悪戯心だ。それくらいは許して欲しい。
    「お前が食べたいならそれで良いぞ」
    「うぇ?!いや待って、待ってくれっ」
     だというのにこの男、あっさり承諾して近くに店がないかと検索し始めた。どういう金銭感覚をしているのだろうか。もしかしてすごい金持ちなのか。それはともかく。
    「冗談だって!カレー!カレーでいいよ!」
     何かのお祝いとかならともかく、ただの外食でそんな高級なものを奢って貰って平然としていられるほど蒼真の神経は図太くない。慌てて有角を引き留める。
    「カレーでいいのか?」
    「いいよ、そんな高いもの奢って貰っても悪いし」
    「別に値段を気にする必要はないが……」
     本気で言ってそうなあたり、多分蒼真とは違う世界に生きている。有角の所属している機関とやらは、よっぽど給料が高いらしい。それが仕事の内容に見合うのかは知らないが。
    「俺は気にするよ……」
     ともかく、分相応というものがある。そんな高い店で高いものを奢って貰っても落ち着かない気分になるだろう。学生の身分からすれば、別にいつものカレー屋でも奢ってもらえるならありがたい。
    「そうか。まあ、お前が良いなら構わんがな」
     シートベルトをするよう言われ、大人しく従う。それを確認して有角がアクセルを踏み込み、車を発進させた。色々と法を無視している部分がある気がするが、道路交通法は守るらしい。
     カレー屋までは、すぐだった。



     そういう訳で。カレー屋で有角と向かい合うとかいうシュールな光景が出来てしまったのである。せめて個室のある居酒屋とかにすればよかった。その方が人目を気にしなくて済んだだろうし、次はそうしよう。いや、次があるかはわからないが。
     店員を呼び止め、注文をする。なんとなく視線が刺さるような気がするのは気のせいだということにした。よく食べる定番のカレー。有角が野菜も食べろと宣うので、一緒にサラダも頼む。痛むのは自分の財布ではないので、ついでに自分一人の時は頼まないラッシーやら食後のアイスやらも追加した。せっかくの奢りだ。高級店で奢ってもらうのは気が引けるが、ここは庶民のカレー屋。これくらいは許されるだろう。
     有角はサラダとカレーだけだったが、一番辛いやつを頼んでいた。そんなもん食うのか。意外なような気もするし、イメージ通りなような気もする。
     考えてみれば、この男のことを何も知らない。まあ当たり前といえば当たり前で、蒼真は『仕事中の有角』しか見たことがない。むしろよく知らない相手であるはずなのに、こうして向かい合っていても、緊張や気後れといったものが全くがないのが不思議だった。なんだかしっくりくるような、あるべきものがあるべき所へ収まっているような奇妙な感覚がある。
     すぐに運ばれてきたサラダをいただきます、とつつきながら、ちらりと有角を盗み見る。白い指先が行儀よくフォークを動かして野菜を口元に運んでいく動きはなんとも上品で、育ちのよさを窺わせる。絵になる、と言いたいところだが、いつもの仏頂面なので食事風景としてはいまいちだ。
     霞を食って生きていると言われても信じそうな雰囲気があるが、案外普通のものを普通に食べるんだな、と思いながら見ていると、ぴたりと有角が手を止めた。
    「……蒼真」
     苦虫を噛み潰したような声。眉根を寄せた顔は整っているぶん妙な迫力があるが、これはどちらかといえば困っているだけだろう。それくらいはなんとなくわかる。
    「そう見られていると食べづらいのだが……何かおかしな事でもあるか?」
     こっそり見ていたつもりだったが、丸わかりだったらしい。それは落ち着かないだろう。少し悪い事をした。
    「いやほら……生きてるなって思って」
    「出会ってから今に至るまでずっと生きていたが?お前は俺をアンデッドか何かだと思っているのか」
     有角が呆れたように溜め息をつく。幽霊みたいな顔色だけどな、と言いかけたところで睨まれて、慌てて何でもない、と誤魔化す。
    「……悪かったって。ほらカレー来たし食べよう」
     そこで丁度良く店員がカレーを持ってきて、この話は有耶無耶になった。説教されながら飯を食うなんて拷問は免れそうだ。ナイスタイミングカレー。サンキューカレー。
     口に含むとスパイシーな香りが舌先から鼻へと抜けていく。濃厚な旨味が口いっぱいに広がり、ぴりりとした辛みが舌を刺す。自然と頬が緩む。うまい。
     有角もそこまで機嫌を損ねていた訳ではないのだろう。何も言わずにカレーを口に運び始める。だが表情がまったく変わらないので、口に合うのか合わないのかまったくわからない。カレー食ってるんだからもう少しリアクションしろ。
    「……うまい?」
     表情がまったく読めなかったので、本人に直接聞く。有角はスプーンを下ろすと、口元に手を当てて首を傾げた。ひどく難しい顔をしている。そんなに悩むことだろうか。もしかしてよっぽど口に合わなかったのか。
    「……まともに食事を摂るのが久々過ぎて味がよくわからん……。だが、まあ……辛い、か……?」
     駄目だこいつ。
     もはや不健康とかそれ以前の問題である。蒼真に必要なのが『健康的な生活』だとしたら、有角に必要なのは『人間らしい生活』だ。栄養バランスが悪くても良いからちゃんと食え。ついでにリズムが狂っていても良いからちゃんと寝ろ。
    「いやもう重症だよ。大丈夫か」
     流石にちょっと怖い。何が怖いって、こう言っても本人がちょっと何言ってるのかわからないって顔してるのが怖い。
    「別に生活に支障が出る程でもないし問題はない」
    「食事を楽しむくらいの余裕は持ったほうがいいと思うけどな……」
     呆れて溜め息をついたが、何を言っても無駄そうなのでカレーに戻る。美味しい。幸せだ。このカレーの素晴らしさがわからないなんて、とも思うが、あまり言うのも押し付けだろう。そういうのは駄目だ、鬱陶しい。
    「……お前は本当に幸せそうに食べるな」
     押し付けはしなかったものの、蒼真の感情自体は駄々漏れだったらしく、驚き半分、感心半分というように有角が言う。別の世界の生き物を見る目をしている気がする。
    「悪いかよ。うまいんだからしょうがないだろ」
    「そうだな、悪くない」
     うまいものがあれば機嫌が良くなる単純な奴、と言われた気がしてムッとして言い返すと、意外なほど穏やかな声が返ってきた。思わず顔を上げると、有角は目元を緩めてほんのりと口角を上げていて、その顔に視線が釘付けになる。
     いつも見ている愛想のない顔でも、眉を吊り上げている怒り顔でもないその表情に思考がフリーズする。その顔は初めて見た気がする。
    「お前が今そんな顔をしていられるなら、これまでの苦労の甲斐があったというものだ」
    「あ、ああ……そりゃ、よかったよ」
     思えばずっと、有角は蒼真が魔王にならないように、普通の人間として生きられるように、力を尽くしてくれていた。
     そうして蒼真が日常で生きられることを喜ばしいことだと言われて、どうすればいいかわからなくなって、また視線をカレーに戻す。なんとなく、照れくさい。
     何か言うべきかとも思ったが、働かない頭は何の言葉も生み出さず、ただカレーを運ぶ手と飲み込む口だけを動かしている。
     そうして、たいして会話もないまま食事をした。たまに口を開いても、有角は口数が少ないし、蒼真もそんな積極的に話題を振るほうでもない。
     だがまあ、話しかければちゃんと反応はしてくれるし、こうやって向かい合っていることは苦痛ではなかった。それどころか、沈黙を許容して緩やかに流れる時間は居心地が良いとさえ言える。
     カレーを食べ終えてデザートを食べ始める頃には、すっかり寛いだ気分になっていた。
     追加で頼んだ二人分のコーヒーの良い香りが漂う。カレーの辛味の後に、アイスの甘味がじんわりと効く。
     ちらりと視線を上げるとコーヒーのカップを傾ける有角の姿が目に入る。相変わらずの無表情だが、今こうして見ると、初めて会った頃よりずいぶん雰囲気が柔らかくなったようにも思う。
    「……うまい?」
     あえて、先程と同じ質問を繰り返した。
     有角も、先程と同じように口元に手を当てて首を傾げて見せる。それから、ふっと微笑んだ。
    「そうだな……監視中に流し込む缶コーヒーより余程美味いな」
    「程々にしろよ。カフェイン摂りすぎると中毒になるぞ」
    「そこまで飲んでいない」
     ほんとかよ、と言って笑う。なんだか少し楽しくなってきた。
     有角もそんな口を利いても怒っていない、というか、機嫌が良さそうだ。
    「……まあ、たまにはこういうのも悪くないな」
    「……そっか。また奢りなら付き合ってもいいけど?」
     他人の財布で飯が食えるならいつでも歓迎だ。それにまあ、有角と二人で食事なんて不安しかなかったが、案外悪くなかった。友人ではないけれど、一緒にいて決して不快ではなかった。
    「構わんぞ。その程度でお前が目の届く所に居てくれるなら、こちらとしても手間が省けるというものだ」
     まあ一緒にいればこそこそ監視する必要もないし、奢りならちゃんとした飯も食べるんだから小言を言う必要もない。
     監視者と監視対象としてはいささか奇妙な関係な気もするが、都合の良いことに利害は一致しているという訳だ。
    「次はもう少し落ち着けるとこにするよ。個室の居酒屋とか、カフェの隅の席とか」
    「そうしてくれると助かる」
     お互い少し笑って、コーヒーを飲み干した。
     ほろ苦い味はけれど舌に心地よく、じわりと温かかった。

     たまには二人で食卓を。
     一緒にいる理由もわからない、名前のつかない関係でも。
     それはきっと、悪くない時間だろう。
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