今際のきわまで 大学時代の恩師が急逝した、という連絡を受けたのは、勤務先である小学校の夏休みを使って新潟まで扉を探しに来ていたときのことだった。黄昏時を過ぎ、ひぐらしの鳴き声も聞こえなくなった山中の道路(とも呼べないような粗末なものだ)の隅で、俺はゼミの同期からの電話を受けた。おそらくその地点がようやっと電波が繋がる場所だったのだろう、電話に応答するとすぐに「宗像! 良かった、やっと繋がった」とほっとしたような同期の声が耳に飛び込んできた。
『橋爪先生、脳出血で倒れて亡くなったって。まだ若いのに残念だよな』
そうなのか、と短く相槌を打つ。退官のときの最終講義に行ったのは確か三年前なので、まだ68歳かそこらのはずだ。これからは妻とのんびり旅行でもして過ごすよ、と笑っていた顔を思い出す。
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