割引チョコと少年少女ザトウマーケットはいつも通り人混みとそこから生まれる喧騒で溢れかえっていた。様々な種族が多様な商品を眺めているカラフルな通りを、一人のインクリングの少女がずんずんと歩いていた。
このガール、ツチノコは今日の食事を探しているようだ。狙いの割引された惣菜は特に競争率が高い。急がねばならない。
幼子がお菓子をねだって泣き叫ぶ声に一瞬、そちらを見た。そして、その奥に目を奪われる。数々のチョコが並ぶ棚にかなり大きな割引を知らせるポップがついていたのだ。
ふと、その時喧騒の中から「バレンタインデー」という単語が聞こえていた。そうか、彼女は思い出す。先日はバレンタインデーだ。ガールが意中のボーイにチョコを送り、思いを伝えるイベントだが、最近では友人に感謝をこめて送ったり、自分へのご褒美にチョコを買うことも多い、そんなイベントだったはず。
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