ベースは深い濃紺。メインは笹をイメージした白のフェイクツリー。オブジェはシルバー多めに差し色でゴールド。シンプルだけど、華やかに飾られた玄関に七ツ森は既視感を覚えた。
風真も七ツ森もまだ高校生だった頃、風真がバイト先のディスプレイについて相談してきた事があった。
「懐かし…」
そっとフェイクツリーをなぞる。当時を思い出して、胸が軋むような切なさが指先から伝って、ジンっと体を満たしていく。あの頃は、風真はあのコに夢中で七ツ森は完全に片思いだった。
だから、思いもしなかったのだ。風真と一緒にすんでいて、七夕に家を飾ってくれて、エプロンつけて迎えてくれるような未来があるなんて。
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