ある休日。ダンデはキバナと自宅で他地方のバトル資料鑑賞会をするべくパタパタと朝から忙しく走り回っていた。
久しぶりの休日。しかも自宅デートとなれば普段のお出かけデートよりもイチャイチャできる筈とワクワクしながらちらりと時計を見れば約束の時間はもう間も無くで、これは急がねば!とダンデはさらに忙しく準備を再開した。
そうして暫くたったころ
ピンポーン
インターホンがなった。
パタパタと足音を立てモニターを見ればそこには待っていたキバナがいる。
「あぁキバナ待っていたぜ!今」
鍵を開けるからなそうダンデが言葉を発しようとするのを遮り「ダンデ来たよ鍵開けて」碧い瞳がモニターのレンズを覗き込んで、ゆっくりと弧を描いた。笑みを浮かべたキバナの涙袋が下まぶたのしたに影を作り、優しげな雰囲気を作り出す。
穏やかで、温かい俺だけに向けられるこの笑みがダンデは大好きだった。
だからこの笑みを見るとダンデはキバナのお願いを何でも聞いてやりたくなるし、実際にお願いを叶えるためにいつもならすぐに行動を起こしていた。
だけど今ダンデはその笑顔をみて、キバナが「開けて」とお願いをしているというのに全く動けないままでいた。
何故だろう?インターホンが鳴ってキバナの姿が見えた時は早く会いたくてたまらなくてすぐに鍵を開けようとしていたのに、声を聞いて、笑みをみた瞬間何故か動けなくなった。
何故だろう?自分でもわけが分からなくてダンデは首を傾げる。
「ダンデ?早く開けてよ」
再びキバナの声がモニターから聞こえてくる。
「……あ、あぁ……」
そう答えたもののオートロックを解除するためのモニターのボタンを押すために伸ばした指はぴくりとも動かない。動かせない。
まるでなにかに阻まれているかのように動かない指先にダンデが戸惑っていると
「なぁ……ダンデがなにやってんの?早くしてくれない?」少しイラついたようなキバナの声が聞こえて来て気が焦る。だけどやっぱり指が動かない。
どうしよう。どうしようキバナが困っている……どうしよう…………ゆらゆらと指先が宙を彷徨ってダンデが途方に暮れた瞬間ダンデの背後でスマホロトムがケテーと鳴いた。
「キバナからロト」
「え?」
ロトムの言葉に驚いて振りかえればキバナからの着信を知らせる画面を表示したロトルがこちらに向かってくるところで、まさか待ちきれなくなったキバナが埒が明かないと電話をしてきたのかと思いモニターに再び視線をやるが以前モニターの向こうのキバナは碧い瞳を歪ませてこちらを見つめているだけで、スマホを手にしている様子なんて一切なかった。
「…………は?」吐息をこぼしてスマホの画面とモニターを交互に見つめる。
状況が分かっていないロト厶が「でないロト?」と不思議そうにしているがそんなことに構ってる場合じゃなない。
「ダンデまだ?」
また、モニターからキバナの声がする。
「あれ?キバナロト?」
モニターから聞こえてくる声にロトルが目を丸くする。
ふよふよとこちらに寄ってきながらモニターを覗き込みそして
「………………ダンデ、これ誰ロト?」と言った。
「え、誰ってキバ……」
「絶対違うロト。キバナはこんなもやじゃないロト」
「え、でも」
パリパリと電磁波をまとって臨戦態勢に入ったロトムがモニターとダンデの間に割って入り「目をつぶるロト!」と鋭く叫んだ。
ダンデが目を閉じた瞬間目蓋を閉じていても尚目映い閃光が炸裂した。
「ギャッ」
短い悲鳴がモニターから聞こえ目蓋の向こうが暗くなる。
「もう大丈夫ロトよ~」
そんな言葉に恐る恐る目を開ければもうモニターの向こうには誰もいなくて、ただなにも無いいつもどおりの景色が広がっていた。
ほっとしてため息をついてへたりとその場に座り込む。
「危なかったロトね~」そういって自分の周りを飛ぶロトムをガシッと捕まえ「今のは何だったんだ?」と問うても「しらなくて大丈夫ロト。寧ろ知らない方がいいこともあるロトよ」と言われ何なのかは結局教えてはくれなかった。
その後約束に少し遅れる旨を電話したのにダンデが電話に出なかったことを心配したキバナが玄関ではなく窓から直接の侵入を試みてダンデにしかられるのはまた別の話。