人生は何が起こるかわからない、とはよく言うけれど。
その瞬間のことを、龍馬はおそらくこの先一生忘れられないだろう。
柄にもなく「運命」なんて陳腐な言葉が脳裏に浮かぶほどの衝撃だった。
多くの人が行き交う雑踏の中、ふと振り返った先できらめいた満月のような色。見覚えのあるそれに自然と視線を吸い寄せられ、目と目が合った瞬間に、自分の呼吸も、そして時間すらも止まってしまったような気がした。
「……以蔵、さん?」
「っ、龍馬……?」
零れ落ちるようにして茫然と呟いたのは、長らく会っていなかった幼馴染の名前。おおよそ十年ぶりに訪れた再会はあまりにも突然で、鮮烈で、思いもよらないものだった。
幼馴染こと岡田以蔵と坂本龍馬は読んで字のごとく、幼いころからの友人同士である。二つの年の差こそあるものの、もともとがご近所同士、家族ぐるみで親しかったこともあって物心つく頃には当然のように生活の中にお互いがいた。
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