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    mocarain

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    mocarain

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    去年途中まで書いてた現パロのリョイを発掘したので供養します。
    学生時代に幼馴染とAV見たせいで道を踏み外しかけたのが怖くなって逃げるように故郷を出た坂本が10年後くらいに都会で親友と偶然再会してしまって、あれは若気の至りだからきっともう大丈夫だろうと思って飲みに行ったのに結局無理で、そのままホテルに連れ込む流れになってなんやかんや…という話の本当に冒頭部分のみ。

    人生は何が起こるかわからない、とはよく言うけれど。
    その瞬間のことを、龍馬はおそらくこの先一生忘れられないだろう。
    柄にもなく「運命」なんて陳腐な言葉が脳裏に浮かぶほどの衝撃だった。
    多くの人が行き交う雑踏の中、ふと振り返った先できらめいた満月のような色。見覚えのあるそれに自然と視線を吸い寄せられ、目と目が合った瞬間に、自分の呼吸も、そして時間すらも止まってしまったような気がした。
    「……以蔵、さん?」
    「っ、龍馬……?」
    零れ落ちるようにして茫然と呟いたのは、長らく会っていなかった幼馴染の名前。おおよそ十年ぶりに訪れた再会はあまりにも突然で、鮮烈で、思いもよらないものだった。


    幼馴染こと岡田以蔵と坂本龍馬は読んで字のごとく、幼いころからの友人同士である。二つの年の差こそあるものの、もともとがご近所同士、家族ぐるみで親しかったこともあって物心つく頃には当然のように生活の中にお互いがいた。
    そのまま小中高と同じ学校に通い、同じ部活に打ち込んだ二人は親友と――場合によっては悪友とも――呼べる間柄だった。少なくとも龍馬はそう思っている。いや、そう思っていたはずだった、と言うべきか。
    決して悪くなかったはずの二人の関係に変化が生じたのは、龍馬が高校三年生の時。年が明けたばかりで、特に冷え込んだ日だったことを今でもよく覚えている。その日は親戚への挨拶回りだとか、正月旅行だとかで互いの家族は皆出払っており、家に残ったのは受験を控えていた龍馬と、部活の予定が入っていた以蔵だけだった。
    家人のいない家は、年頃の男子高校生にとってはある種絶好の息抜きの場となる。それらしい理由をつけて留守番役を買って出た二人は、それぞれの用事を済ませた後は龍馬の部屋に集まってだらだらとした時間を過ごしていた。自分たち以外には誰もいない家、しかも明日も明後日も休みとくれば、夜更かしをしない理由がない。
    どこか浮ついた空気の中、さて今夜は以蔵と何をして遊ぼうかと思いを巡らせた矢先だった。
    「にゃあ龍馬、今日は、あー、その、えいもんがあるき、」
    なぜか歯切れ悪く言いながら、以蔵が持参したバッグに手を突っ込んでごそごそと中を漁り始める。ずいぶんもったいぶった言い方をするものだなと不思議に思いつつも、そこから出てくるのはいつもと同じ対戦ゲームか、はたまた最近流行りの漫画の新刊あたりだろうと思っていたのに。
    「え、以蔵さんそれ、って」
    「……ひひ、どうせおまんも嫌いやないろ」
    中からするりと姿を現したのは、やけに肌色の面積が大きい長方形のパッケージ。
    目を惹く派手なピンクのフォントで書かれたタイトルをわざわざ読み上げるまでもない。
    「いやいや、どうしたのそんなの、以蔵さんまだ十六にもなってないだろ」
    「ああ? AVらあて今時普通に回ってくるもんちや」
    にやりと笑う以蔵の手に収まっていたのは、紛れもなくアダルトビデオと呼ばれる代物だった。まだまだ幼さの抜けきらない友人の顔と、卑猥なパッケージとのギャップになんだか頭がくらりとする。
    確かに龍馬たちの年頃ならそういうものに興味があって当然だ。むしろない方が不健全ではなかろうか。高校生にもなれば様々な伝手から様々な形で回されてくることもあるだろう。龍馬にだってもちろん身に覚えはあって、同級生たちの下世話な会話や、こっそり貸し借りする現場を教室で部室で何度も目にしてきた。動画や本の中身を一度も見たことがないとも言えない。がしかし。これを今から? ここで?
    「以蔵さんと……?」
    「なんじゃ、なんぞ問題でもあるがか」
    「そういうわけではない、けど」
    「ならえいやいか。せっかくおかやんたちもおらんきに、チャンスじゃ、チャンス。音も出してゆっくり見れるぜよ」
    「うーん……」
    果たして本当にこのまま二人で見て平気だろうか。以蔵は乗り気ではあるものの、どうやらまだこの手のことにはあまり慣れていないらしい。見るからにそわそわとしていて、早くも頬が期待に紅潮し始めていた。急いた手つきでディスクをセットする横顔を見ているだけで、龍馬もつられて落ち着かない気分になってくる。
    再生が始まってしばらく経ってもそれは変わらないどころか、シーンが進むごとに焦燥感はますますひどくなっていった。画面の中の女性が男に派手に揺さぶられるたび、豊満な体が揺れてあんあんと煽情的な声が上がる。演技だろうとわかっていてもその響きに男としては煽られるものがある、が、それ以上に隣にいる以蔵の反応が気になって仕方がない。先ほどから食い入るように画面を見つめる横顔はやはり赤く、瞳はとろりと潤んでいて、時折つばを飲み込むこくりという音が喉元から聞こえてくる。あえかな女性の声などよりも、以蔵が息をのむ音、もぞりと膝をこすり合わせる音、はあ、と吐かれる熱い吐息、そんなものを聞き逃すまいと必死になっている自分がいることに、龍馬はじわじわとした焦りを感じていた。
    やっぱり、二人でこんなものを見るんじゃなかった。家の中に自分たち以外誰もいないという状況すら、龍馬を追い詰めていくようだ。
    大切な友達相手に向けるべきではない衝動が、ぐわりと体の奥からこみあげそうになっている。
    「……、」
    ふー、と龍馬はたまらず息を吐いた。どうにか少しでも熱を逃したくてこぼしたそれだが、間の悪いことに以蔵の注意を引いてしまったらしい。
    「お? ひひ、どういた龍馬ぁ、おまんもしかしてもう限界なが、か」
    にやにやとからかうようにわらいながら、以蔵がこちらを振り返る。ああ、だめだよ。そう言いたくてももう遅い。興奮にうるんだ金色の瞳と目が合ったときには、すでに無意識のうちに体が動いていて。
    「な、んじゃ、こん手……、おい、りょうま……?」
    至近距離から不思議そうに見上げてくる表情にはっとする。すぐ隣にあった以蔵の手に手を重ね、引き寄せるようにして距離が縮まっていた。以蔵の手は――いや、龍馬の手も、どちらもひどく熱くてじんわりと汗で湿っている。肌同士が吸い付くような感触にぐうっと腰が重たくなるのを感じ、慌てて離しながら弁解の言葉を探した。
    「あ、……ご、ごめん。ええと、何でもないんだ。以蔵さんこそさっきからきつそうだから、ちょっと心配になったというか」
    「はあ? 何言いゆう、どう見てもおまんの方がきつそうやいか」
    わしはまだまだ平気じゃあと強がる幼馴染の顔を見ていられなくなって、とうとううつむく。こっちは動画じゃなくて以蔵さんのせいでこうなってるんだけどな……。そうは思っても言えるはずもなく、龍馬が床に視線を落とす間も画面の中では問答無用で行為が進んでいる。いやらしい水音と嬌声がますます激しくなっていく中、どうやら以蔵はまだこちらを見ているらしい。
    「龍馬……? おまんさっきからほんにどういたがよ」
    「あのさ、以蔵さんは……抜き合いって興味ある?」
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    mocarain

    MOURNING去年途中まで書いてた現パロのリョイを発掘したので供養します。
    学生時代に幼馴染とAV見たせいで道を踏み外しかけたのが怖くなって逃げるように故郷を出た坂本が10年後くらいに都会で親友と偶然再会してしまって、あれは若気の至りだからきっともう大丈夫だろうと思って飲みに行ったのに結局無理で、そのままホテルに連れ込む流れになってなんやかんや…という話の本当に冒頭部分のみ。
    人生は何が起こるかわからない、とはよく言うけれど。
    その瞬間のことを、龍馬はおそらくこの先一生忘れられないだろう。
    柄にもなく「運命」なんて陳腐な言葉が脳裏に浮かぶほどの衝撃だった。
    多くの人が行き交う雑踏の中、ふと振り返った先できらめいた満月のような色。見覚えのあるそれに自然と視線を吸い寄せられ、目と目が合った瞬間に、自分の呼吸も、そして時間すらも止まってしまったような気がした。
    「……以蔵、さん?」
    「っ、龍馬……?」
    零れ落ちるようにして茫然と呟いたのは、長らく会っていなかった幼馴染の名前。おおよそ十年ぶりに訪れた再会はあまりにも突然で、鮮烈で、思いもよらないものだった。


    幼馴染こと岡田以蔵と坂本龍馬は読んで字のごとく、幼いころからの友人同士である。二つの年の差こそあるものの、もともとがご近所同士、家族ぐるみで親しかったこともあって物心つく頃には当然のように生活の中にお互いがいた。
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    ariakenri

    MOURNING「きっと、ぜんぶ、夏のせい」「それも、だから、夏のせい」の二編を収録した『SUMMER HEART OVERDRIVE』という本につけていたおまけペーパーの再録です。刑部姫視点の話。リョイです。「それも、だから、夏のせい」(ルルハワの方の話)を読んでから見てもらえるとフフッとできるかも。発行から3年ほど経つのでさすがにいいかなと思い、載せておきます!
    なるほど、これが、夏のせい!


     思うに、同人誌作りにおいて、萌えの鮮度というやつはもっとも重要な要素のうちのひとつだ。
     自分の内側から燃えあがる情熱、どこかに吐き出さなければ溺れ死にかねないという強い幻覚。
     煮詰めた萌えの旨みもいいけれど、煮詰まりすぎては食卓にあがる前に腐ってしまう。
     萌えを萌えたままに昇華するにはタイミングを逃さないことが必要で、霞のように儚く消えてしまいそうな妄想のしっぽをいかにして捉えられるかに、全部がかかってると言っても過言じゃない。
     つい数時間前まで、話の辻褄を合わせようと何度もこねくりまわすうち、すっかりと萌えの鮮度を失って絶望感に浸っていたわたし――こと、刑部姫は、そういうわけで、唐突に降って湧いた新たな萌えの数々に頭を抱えながら、同時にめちゃくちゃに焦っている最中だった。
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