ソーンズ/アークナイツ 黒い手袋をつけた手。ピンと伸びた人差し指がソーンズの頭部を差し示す。
「寝癖を直して」
ウィーディはいつものように丁寧に指摘した。言われた通り、彼は自分の固い髪を撫でつけた。ぴょこんと飛び出したひと房を見つけ、髪留めのゴムの中に無理矢理しまい込む。
彼女は頷いて納得を示した。指先は迷いを知らないように直線を描いて下を向く。
「あと、裾が捲れてる」
ソーンズは言われるままに、くるぶしが剥き出しになっていたズボンを直した。ついでとばかりにいていた糸くずを摘まんでポケットにしまう。感心したようにウィーディは頷いた。
「今日は素直だね」
「……目的のためだ」
ソーンズは端的に答えた。ため息交じりのそれを聞きつけた彼女の眉間に皺が寄ったことには気づかないふりをする。
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