いといとし いとのさき 1
腕がダメなら足を縛ってもいいですか、と言うと彼はあからさまに眉を顰めた。
午前零時十五分。ほの暗い寝室の広いベッドの上。夜の暗がりにも鮮やかな赤い髪が四方に散っている。濡れ髪をそのままにベッドに横たわる彼に跨り、組み敷いて、俺はまた同じ言葉を紡いで続けた。
「腕は嫌なんでしょう? だったら足首でもいいですから。ね、縛ってもいいですか?」
「良いワケないだロ。寝言は寝てから言エ、このクソモジャ」
「もちろん。起きてますから寝言なんかじゃぁないですよ?」
「…………だったラなお悪いヨ」
馬鹿なこと言ってないでさっさと退いテ。重いんだかラ、と身体を押し退けられて、仕方なく彼の隣に身体を横たえた。ぎしり、とベッドが軋む。
4444