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    I__B_gno

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    I__B_gno

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    年末の座談会? の質問で出てきた話と水そうめん見てたら思いついたので書いた主セツ主未満の何か
    ・くっついてない
    ・ループ中
    ・主人公は原作準拠ややギャグ寄り(一人称自分、名前・見た目の設定なし)

    とある別の因果 目を開けると、そこは自室だった。目の前にはセツもいる。どうやら今回は珍しく、セツと2人きりの自室にてループが始まったようだ。こういう時は大抵、ループやグノーシアについて、あるいは今回の役職についての情報をセツと交換する。自分とセツには、自分の陣営が勝つ以外の目的もあるからだ。議論に臨む前に、できるだけ準備はしておきたい。
     ただ――今回のセツは、そのいつもの情報交換の時とはまた違った、しかし神妙な顔をしていた。
    「これはもしかしたら、君に共有する必要はないのかもしれない。ただ、新しい事柄ではあるんだ。あのループには他にも特殊な点があったし、念の為にも話しておこうと思って」
     セツが真面目に切り出したのはそんな前提からだ。いつもよりも、少しだけ歯切れが悪い。疲れているのだろうかとも思ったが、いつかのループで2人で遊んだ時のような、沈んだ表情ではないのでおそらく違うだろう。
     ごほん、とセツが妙にわざとらしい咳をする。そしてこちらの目をしかと見すえて、こう言った。
    「君は、恋という感情は知っている?」
     一瞬、思考が止まった。恋? いや、恋という感情の存在自体は知ってはいるが、セツの口からそんな単語が飛び出してくるとは思わなかった。軍人という職業上、またSQやしげみちとの雑談からも、セツはそもそも色恋沙汰とは無縁だったのだろうと勝手に推察していたのだ。目を丸くして固まっていると、「あ、す、すまない、混乱させてしまって」とセツはしゅんと眉尻を下げて二の句を継いだ。
    「私には、その、恋と呼べるような思い出はないんだ。でも、以前のループで、これは恋というのでは、という閃き……いや、確信、のようなものを感じたことがあった。あんなことは今までなかったし、もしかしたらループの解決に繋がるのでは、と思って」
     以前のループで? セツにそのような考えが生まれる事件などあっただろうか? いや、お互いのループの順序が違うため、まだ自分が経験していないだけの可能性も多いにありうる。聞いていいのかわからないが、どのような確信なのか教えてほしい、と質問すると、セツは首肯した。
    「わかった、順を追って話そう。まずグノーシアは2体、エンジニア、守護天使、バグのいるループだった。1日目の議論でステラがエンジニアとして名乗り出た。他に名乗り出た乗員はいなかったから、ステラが本物のエンジニアだったはずだ。その日はラキオがコールドスリープして、2日目、しげみちと沙明が消滅していた。バグのいる宇宙だったし、どちらかがエンジニアに調査され消えたバグだ、とその時は考えた。ここまではいいんだ、ただ――どうしたの? 顔色が悪くなったように見えるけど」
     もしかして体調が悪いの? とこちらを心配するセツに、「大丈夫だから続けてほしい」と返す。とてつもなく嫌な予感がするが、まだわからない。いや、わからないままであってほしい。
    「うん、もし悪化するようならすぐに教えてほしい。で、続きだったね。夜のうちに2人が消えた。どちらかはバグだ。そしてエンジニアがステラである以上、2人のどちらかをステラが調べたはずだったんだ」
     でも、とセツは口元に手をやり、うつむいた。
    「ステラは私を調査していたんだ。おかしいだろう? ならバグはどうやって消えた? いや、そもそもバグではなく乗員が消えたのかもしれない。その場合、原因はグノーシアからの襲撃以外でということになる。例えば、あまり考えたくはないけど、誰かが誰かを殺めた、とか。とにかく、こんなことは今までなかったから、一旦議論を止めようとした。その時だ」
     セツはそこで声を区切り、顔を上げた。視線がしかと合う。その赤い瞳は、汚染者の時のようなある種の禍々しさはなかったが、どこか清流の煌めきのような輝きが見えた。
    「脳内に、突然イメージが沸いたんだ。それは貝だった。そう、その貝が、思考を伝える管のようなものが私の頭の中にあって、でもそれは何かしらの罪を犯していると吹聴していた。ふふ、今になると、自分でも何を言ってるんだろうと思うけど、その時は本当にそんなものが見えていたんだ。でね、その時の私は、それを恋だと思ったんだ」
     セツの顔に微笑が浮かぶ。
    「そう、おそらく恋とは、そんな風に思考を伝える何かが、まるで罪を犯したような許されない状態になって、自分でもわかるのに、止められないものなんだ。そんな考えがなぜか、『これは絶対に正しい』という確証をもって私の頭に浮かんだんだ。本当は許されないのなら裁かれるべきだと思う。けど、私はそれを悪いものとは思えなかったんだ。奇妙な感覚ではあったけど、拒絶するものでもないような……えっ!? ほ、本当に大丈夫!?」
     思わず呻いて抱えた頭の上から、セツの慌てた声が振ってくる。しかし「大丈夫」とも返せない。なぜなら、犯人は自分だからだ。
     始まりは、ステラがエンジニアとして騙った時に、自分が本物である、という宣言をうっかり忘れたことだった。自分がエンジニアである、という設定で始めたのにも関わらず。だが、後から「実は自分がエンジニアです」と名乗り出られるような空気でもなく、そのままラキオがコールドスリープすることになって議論は終わった。
     そして名乗らなかったからといってエンジニア権限が剥奪されるわけでもなく、こうなったらせめてバグを消したい、そう思って、議論で多少の票が集っていた沙明をその夜に調べた。すると、その沙明こそがバグだったのだ。自分は運がいい、と当時こそ思った。が、翌日2人が消えた議席にて、ステラが調査結果を話した後、おかしなことが起こった。
    「んーと、これって八千二百京のぐりぐりってコト?」
     SQのその荒唐無稽な、いやそもそも何を言いたいのかわからない質問のようなものを皮切りに、皆が口々におかしなことを喋り始め、LeViも妙なことをアナウンスし、挙句眠っているはずのラキオが出てきて増殖して――宇宙が強制終了された。
     変な夢でも見ていたのかもしれない、強制終了された後の銀の鍵にはめぼしい変化はなかったから、少なくとも、あれがループ解決の糸口には繋がらないだろう。そう結論付けて忘れようとしていたが、現実だったようだ。自分だけが体験者ではないことを証明されては、もはや認めざるを得ない。いっそ八千二百京回ぐりぐりされたい。
     それはともかく、きっと原因は、自分がエンジニアであることの名乗り忘れだろう。それだけで宇宙が壊れるとは思いたくないが、銀の鍵にはわからないことも多いし、バグという存在もある以上、何がきっかけで宇宙が壊れるかは未知数だ。もっと注意するべきだったのだ。ループ数も増えてきて、疲れではなく弛みが出てきたのかもしれない。
     だが、今この場で解決すべき問題はセツだろう。あの宇宙でセツがどのような感情を抱いていたのか、についてはセツ自身の話から類推するしかないが、おそらく、恋というのはそういうものではない。近いものである可能性もないことはないが、少なくとも、「強制終了される宇宙の瀬戸際で得た感情」が唯一の正解、ということもないはずだ。原因が自分である以上、自分には訂正の義務があるはずだし、そんなものがなくても、自分がセツを導ける部分がもしあるのなら、そうしたいと思う。
    「やはり、まず医務室に行こう。議論は少しぐらいなら」
     何か言い募ろうとしたセツを手で制止する。そしてまっすぐ視線を合わせ、「自分の知っている恋とは少し違うようだ」と平静を装って告げた。
    「えっ……そうなの?」
     目を見開いたセツに、なんと説明をしようか逡巡する。しかし言い出してはみたものの、記憶喪失の身の上であるため、自分もそこまで恋愛感情に詳しいわけではない、が、今ここで他の乗員たちに助けを求めては余計に場が混乱するに違いない。人によっては混乱どころでは済まないだろう。とにかく、何か、恋とは何かの説明をしなければ。そう腹をくくったのが功を奏したのか、ふいに過去のループでの雑談が思い起こされた。そうだ、以前のループで、セツ自身が言っていたじゃないか。

     恋とは、誰か自分以外の他人に心を開いて、預けたくなるような、そんな感情だ、と。

     ぱちぱち、とセツの睫毛が上下に揺れる。まるで自分が伝えた「恋」の定義を咀嚼しているかのようだった。
    「そう……なんだ」
     心を預ける。と、ぽそりと呟いて、セツは急にぱっと表情を明るくした。
    「あ、それならもしかして――いや、ごめん、やっぱりやめておくよ」
     ついさっきまで勘違いしていたから、これも合っているかわからないからね。そう言うセツの顔は、少し困ったような、気まずそうな笑顔だった。どうしたの、そう尋ねようとしたところで、ポーン、と電子音が響く。
    「他の乗員の皆様は全員、メインコンソールに集合しております。おふたりもそろそろ向かわれた方がよろしいかと存じますが……」
    「あ、ああ、すまないLeVi。すっかり話し込んでしまっていたね。行こうか」
     弾かれたように立ってドアへ向かうセツに続けて、自分も立ち上がってその後ろに続く。そしてこっそりと息をついた。最後、セツが何を考えていたのかはわからないが、少なくともあの奇妙な宇宙での記憶を元に、これから出会うかもしれない恋を考えなくてよかった、と。
     ただ、まだ気を抜くのは早かったらしい。
    「でも、じゃああれはなんだったんだろう? 不思議な感覚だったな」
     メインコンソールへの道中、ふいに呟いたセツに、「あれは多分、取り返しのつかないことが起きた宇宙だった」と、自分でもよくわからない説明をする羽目になったからだ。こんなに冷や汗をかいていたら、議論で真っ先に疑われそうだ。セツには早く忘れてほしい。とにかく、今後は名乗り出るのを忘れないようにしよう、そう誓った。
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    I__B_gno

    DOODLEいちゃついたレムラキが見たかったので書いたレムラキ ノマエン革命後 ざっくり書いただけなので後で手を入れるかも
    観察結果を発表します レムナンが目を開けると、自分が起床した瞬間に見るものとしては珍しい表情がそこにあった。相手はまだ寝ているようで、体をこちらに向け、長い睫毛は伏せられたまま、すうすうと寝息を立てている。ブラインドの隙間から入る光の角度を見るに、おそらく朝というにはやや遅い時刻、だろう。グリーゼの人工太陽はいつでも同じように周期を重ねている。
     昨日は何があったのだったか、とレムナンはまだ半分寝ている頭で記憶をたどる。どうも最近進めている研究が佳境らしく、きっと作業の手を止められなかった、のだろう。いつもは自分よりもかなり早く床についているのに、昨日は自分が寝室に赴くタイミングでやっと部屋から出てきて。うつらうつらと眼をこすりながらシャワー室に向かい、半分目を閉じた状態で寝室に入ってきて、まだ湯の温かさの残る体でベッドマットと毛布の隙間、自分のすぐ横に滑り込んで、完全に瞼を下ろした。「おやすみ」ぐらいは交したが、あの様子だとそれも覚えているだろうか。普段の生活リズムを守らないとパフォーマンスが落ちる、とは本人がよく言っているが、定刻になっても起きないのを見るとそれも納得できる話だった。きっと全裸で寝なかっただけマシなのだろう。こちらも、何もまとっていない状態の恋人の隣で寝るのは流石に気を使う。もっとも、疲れているところにあれこれするような趣味は自分にはない。ので、短い言葉のやりとりの後、そのまま自分も寝入って、今に至る。
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