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    ノマエン宇宙革命後のレムラキ 浮気の話

    浮ついても浮つかない ディスプレイからふと目を離し、しまった、とレムナンは少し呆然とした。本来シャワーを浴びる予定の時間から少しはみ出したゲームは、いつもよりは上出来の戦果を上げたところだ。急いでシャットダウンして、ゲーム用の眼鏡を机の上に置く。シャワーを浴びるのが少し遅くなったところで明日に差し障りがあるわけではないが、パートナーシップ契約を結んだばかりの相手は本人の弁を借りるなら、そろそろおネム、のはずだ。
    「君も僕と一緒にいて長いし、どうせ一緒にいるんだから公的な契約を結んでおいた方が赤の他人のままでいるより都合がいいからね。今のグリーゼであっても、今の君は僕の居候でしかないわけだし。まあでも、ははっ、旧体制のころと違って周囲から不審者と思われてないだけマシなのかな?」
     数ヶ月前、あの人らしい合理的な、そして一言多い理由で結ばれた契約は、だからこそ自分の中であたたかな繋がりと感じている。この新しいグリーゼでただの一市民としてこれからも2人で生きていく、そう決めてくれたのが、今でもとても嬉しいし、浮き足立ってもいる。
     そんなラキオに1人で寝られてしまっては、また夜更かししただのなんだのと明朝に揶揄されるのが目に見えている。自分と違って朝に強いその人は、朝からフルスロットルでその頭を回すことも厭わないらしく、寝起きにぼんやりしがちな自分には効果てきめんだ。いや、まだ間に合う、いつもより急ぎ目で浴びればなんとかなる、とレムナンはいつもより慌ただしく部屋を出た。
     寝る前だから趣味の研究もしてないだろうし、シャワーを浴びた後はリビングで思索にでもふけっているだろうと思っていたラキオは、確かにリビングにいた。が、その表情は想像していたものよりもやや険しい。出会ったころよりもいくぶんか大人びたその顔の前にはディスプレイが浮かんでいる。どうやらニュースを見ている、正確には選んだニュースについての情報を概念伝達で入手しているようだ。もしや、グリーゼ近辺の諸国で何かよくない話でもあるのだろうか。革命のちはそれまでと比較して、周辺の星々と正当な形で協力体制を結ぶことも増えた。が、その結果としてどうしても、グリーゼの国力は弱体化したのでは、という憶測もたまに耳にする。もちろん技術力としても政治体制としてもそんなことはないのだが、悪意を持つ人というのはつけ入る隙を狙うものだ。そんな予兆のある話を見つけたのかもしれない。革命の推進者として、この国の発展を願う市民の1人として、ラキオはものを見ることに熱心だった。
    「ラキオさん」
    「……ああ、レムナン。今日はずいぶん熱中してたね。上々で何よりだよ」
    「う、すいません……それ、どうしたんですか」
     レムナンが声をかけると、伏せられていた大きな目がそちらを向いた。見る限りでは、どうやらそこまで深刻ではないらしい。むしろ、ディスプレイに青白く照されたその表情は、どちらかというと呆れの方が多そうだ。
    「ああ、これ? すぐ近くにある小さな星の政治体制がひっくり返ったって話さ。その原因が、トップの人間の浮気、具体的には正妻がいるのに好き好んで他の人間を囲っていたのが暴露された、ということらしい。トップはそのまま国民の信頼を失って亡命し、国はというと、かねてから国民が望んでいた擬知体政治になる予定、なンだと。よくもまあ、そんな知性もない人間が国を治めていたものだと感心する反面、そのトップの浮気程度で国がひっくり返ることもあるんだなと思ってね。逆に嘆かわしいよ、僕達はあんなに苦労したのに。まあそれだけグリーゼが強固な国だったという話だけど」
     まだシャワーからそこまで時間が経っていないのか、やや上気した顔がわかりやすく侮蔑の顔になる。平常通りよく回った口からの感想を咀嚼しつつ、ラキオのその気持ちもわからなくもない、とレムナンは内心で同意した。今でこそこうして2人でのんびり過ごしてはいるが、それこそ一番抗争が激化していたころは、ラキオがいつ政府軍の弾の餌食になってしまうか気が気ではない夜もあったのだ。とはいえ、ラキオや回りのメンバーからは、自分の方がそうなる確率が高いと踏んでいた、というのは当時ちょくちょく伝えられていたが。「リーダーが無事にこの任務を完了して帰還される確率は……計算上高いとは到底言えません。が、これまでの経験上、きっと帰ってくると思わずにはいられないのです、不思議なことに」とメンバーに小言のようなことを零されたのを思い出す。
     しかし、浮気、であればそういう物騒な話にはなっていない、のだろう。レムナンは愛情の果てに相手へ暴行を加える人物に心当たりはあるが、ああいう人がそこらじゅうにいてもらっては困る。であれば確かに、国家転覆の様はグリーゼとはかなり異なる様相だったに違いない。
    「でも、浮気だって個人からしたら結構なスキャンダル、なんじゃ、ないですか」
    「別に誰と色恋沙汰をしていようと政治手腕には関係ないだろうに。そこの国民は気にするのかもしれないけど、それなら尚の事、国民の不信を買うような芽を自分から出すべきではないね。そんなことで国を失うなんて馬鹿らしい。まあ、その国民から擬知体政治への移行を求められてるンだ、そもそも大した腕じゃなかったのかもね。実際、内政も外交も大した成果は出してなかったようだし。人間の政治に嫌気が差して擬知体に任せたくなるのもむべなるかな、っていう状態だったンじゃない?」
     信頼されていなければ、その相手への攻撃なんて些細なきっかけで始まるものだ。そう考えて1つの考えを出してみたものの、超階級国家で生まれ育った人にはあまりピンときていないようだ。いくら自分達が主導して転覆させたとはいえ、レムナンのように余所者でもない、まして愛国の念と、それと同じくらい憂慮を国に抱いていたラキオにとっては、旧グリーゼが「国」の基準なのだ、少なくともまだ今は。浮気という「人間」の誤ちで国が簡単にひっくり返る、という事態を理解はしているが、同時に不可解だ、とでも言いたげな目をしている。まるでおとぎ話でも聞かされたかのようだ。が、同じ「人間の政治」に不満を抱いた身として、人間の政治では自分達の目指す国にならないだろう、とその星の国民が判断したことには同意しているのは間違いなさそうだった。
     実際、旧政府を打ち倒した後、レムナンとラキオがまずとりかかったのは擬知体政治への移行だ。最初こそラキオ主体で政をし、レムナンが「引き継ぎ先」の擬知体の整備を担当していたが、数年かかってようやく擬知体による政治が実現した。国政を担う擬知体と自分が関わることになるとは、深宇宙でルーティーンを繰り返していた、いや、いつの過去の自分にも思いもよらなかったことだ。
     それもこれも、ラキオと一緒にあの船を降りたことがきっかけだ。もしあの時、この人の手を取らなければ、そのまま軍基地に行って、……そこから先は考えたくもない。共にこの国に降り立ち、革命をやり遂げ、こうして一緒に住んで、しかもパートナーシップ契約を結んだ今が、確かな現実であると感じると同時に、どこか気持ちがそわそわするような、不快ではない落ち着かなさがあった。
     だから、やはりちょっと浮ついていたのだ。なので、絶対にありえないこと、という前提の上で振った話だった。
    「じゃあ、もし僕が浮気したら、ラキオさんはどうしますか?」
     ほんの冗談のつもりだった。
    「ふむ、君が、ね」
     しかし、予想に反して、ラキオの視線がすうっと細められる。あれ? とレムナンが内心動揺する前で、「まず、だ」とラキオはその細い指で3の数字を表した。赤みの強い紫のマットなネイルが、光量が控えられた室内灯を反射してあわく光る。
    「その浮気というのが発生する要因として、考えられるのは3つ。1つ目は、君が誰かにそういう関係を強制された場合。2つ目は君の出来心、例えば誰かの性的な魅力に惹かれて浮気と判定されるだろう行為をしてしまったという場合。ああ、浮気をしたという判定を如何にして行うのか、という定義については、特段それによって原因とその対処が変わるわけでもないし、詳細は詰めないでおくよ。そして最後3つ目は、君の好意という感情を一番強く向ける相手が僕ではない他の誰かになった、それこそ僕とのパートナーシップ契約を破棄して、その誰かと結びたいと君が考えた場合だ」
     あ、まずいことをした、とレムナンは悟った。これは本気で思考実験をしている目だ。眼前に置かれた課題に本気で取り組んでいる目。まだ反政府活動をしていたころ、相手の出方、場の状況など、あらゆる変数を元にして、どうすれば自分達が勝利を掴めるのかのシミュレーションをしていた時の目と似ている。日付を跨ぐ少し前のリビングであるこの場所は、あの時ほどピリついた空気でないが、その時とはまた違った緊迫感があった。
    「1つ目の場合は、その関係を強制した人間を排除するなりして、君がそうせざるを得なかった理由を解決すればいい。どうやるかは状況によるけど、目的そのものは明確だ。2つ目は、これまでの経験と君から聞いた過去から、君にそういう出来心はほぼ発生しないと断定してもいいだろう。よって今回は除外する。それに、やることは次の場合と同じだろうしね」
    「いや、あの、そもそも僕」
    「何? 君が振ってきたんだから最後まで付き合いなよ。それで3つ目だけど、いくら君が執念深いとはいえ、まず前提として人間の感情に変化はつきものだから、ある意味今の日常ではもっとも起こりうるンじゃない? 僕ですら誰かとパートナーシップ契約を結ぶなんて、それこそ君と出会った頃には考えもつかなかったからね。あと、君はこれまでの人生において心を休められる状態で人と接することも少なかったみたいだし、とすると今のほうが他人への情動に正直になりやすいとも言えるだろう」
    「……は、い」
     頷くしかできないのがまた悩ましい。いま淀みなく喋っているその人にこそ、その正直なものを一番見せているつもりなのだから。
    「で、その場合だけど、君は僕じゃなく別の人と一緒にいたい状態だ。そんな君と僕が生活を共にするメリットがない。いやむしろ僕からすれば、君やその相手に悪意を向けられる可能性すらある。となると、まずはこの関係の解消をするべきだ。はは、役所の擬知体も、この国の立役者ふたりがそんなことの為に出向いてきたら流石に動転するだろうね。で、それが済んだら次は居住地の変更とかになるンじゃない? つまり僕等の関係を以前の状態、赤の他人に戻すのが目的になるね。その後は各々好きにやれば良いンじゃない? もう他人なンだから。せいぜいその新しい相手との時間を大切にするといい。あ、フードプリンターとかの君しか使ってない家電は引き取ってよね、僕には不要だから。ああせっかくだから新しい機材をそこに置いてもいいかもな。君の部屋も空くし、今やっている研究のためにできることの幅も広がるかもしれない」
    「……うう、いや、あの、……はい」
    「異論があるなら言いなよ」
    「いや、大、丈夫……です」
     現実に起きたら卒倒しそうなことが、ぽんぽんとつっかえることなくラキオの口から出てきて、レムナンはべそをかきたくなった。いやすでにちょっと滲んできている。こんな気持ちで泣きたくなったのは、もしかしたら初めてかもしれない。ラキオに向けているやわらかい気持ちを、他の人に向けて、この生活を手放すなど、今のレムナンからしたら唾棄してもいいくらいの話だ。
     しかし、この状況は、完全に自分の落ち度のせいだ。「君がそんなことするはずないだろう」、などという、こちらの気持ちを勝手に決め付ける優しい言葉を、この人が持っていないのは知っていたはずだ。色々とやかましく暴言じみた発言はするものの、他人の考えを感情で否定せず、全てを机上に上げる。そこから何が把握できるか、あるいは何が破綻しているかを理論で導出していくのがこの人だ。楽観も悲観もしない、存在する物事を見ない振りしたところで何も変わらない、考えるべきは他にある、と。
     とはいえ、今回は本当に存在しない感情なのだが、特に理由もなくその思考実験の場を与えた自分に、ラキオの思考を止める権利はない。きっとラキオも、本当に自分のパートナーが浮気するなどとは考えてはいないはずだ、たぶん。だからこそこんなに気楽に、パートナーの心を乱す事を答えてくるのだ。先ほどの軽はずみな自分を、レムナンは呪わずにはいられなかった。
    「さて、じゃあちょっとしたテストといこうか。この僕の話を遂行するために、浮気をしてしまった君が最初にすべきことがあるんだけど、なんだと思う?」
    「え、っ、……ラキオさんに謝る、とか?」
     すべきこと、というのの論拠について、おそらくラキオは論理的なものを求めているだろうが、レムナンが返したのは本人の意志からのものだった。その状況に――万が一にもならないのだが――なってしまったとして、自分がやるべきことと言えば謝罪以外にないのではないか。しかしやはり間違いだったようで、ラキオの片方の口角が愉快そうに持ち上がる。
    「ははっ、不正解だよ。確かに契約不履行に当たるけど、グリーゼのパートナーシップ契約には契約解消の手続きだって決めてあるだろう? つまりこの制度において契約が満たせないことは想定の範囲内だから、それについて謝罪の必要なんてない。だいたい、僕がそンなものを求めてると思ったの? もっと簡潔でいい。答えは、『僕は浮気をしました』と僕に報告することだ」
    「報告」
     まるで仕事の話のような単語だ。ぽかんと呆けたレムナンに、ラキオは口調を変えずに続けた。
    「そう。考えてごらんよ、僕の見立て通りに遂行する場合、まず君の浮気について僕が把握している必要があるだろう? つまり、……例えば、僕に隠れて君が他の人間と逢瀬を重ねているような状態じゃ、開始地点にすら立てないンだ。契約破棄に気が重いだろうけど、どうせ君のことだからいつか感情が保たなくなって妙なことをしでかすんだから、わかった段階で早く報告した方がお互いにとってメリットがある、これぐらいは君にもわかるよね?」
     信用されているようなされていないような言だが、何ひとつ否定できないレムナンは、ただ素直に首を縦に振った。
    「……はい」
    「というわけで君の最初の問に戻るけど、僕としては君の報告を待った上で、この関係の解消に動き出す、が答えかな」
     言い切って満足げなラキオに、「……質問、いいですか」と手を挙げる。
    「何?」
    「ラキオさんが、僕……と、一緒に住みたいから、困る……とかは、ないんですか」
     続けて、これは契約なのだから、自分の感情だけでなくラキオの意思も尊重すべきでは、という旨をレムナンは伝えた。ただ、これはほとんど建前だ。この冷静な汎性から自分に向けた情というものを、感じたことがないわけではない。むしろそれがあるからこそ、自分と一緒にいてくれているのだろうと信じている。だから今、自分の心の隅の方で小さく、チリチリとささくれ立つ感情がいる。今回のその場面では、その情は全くないのだろうか、と。自分に何か言うことがないのだろうかと。
     ぱちり、と一瞬ラキオの新橋色の瞳が瞼に覆われて、すぐに元通りにレムナンを見た。
    「……僕もこの生活は気に入っているから、その感情があるのも否定はしないけど。わざわざパートナーシップ契約まで結んでるんだからね。ただ、その契約も、お互いにこの生活を好んでいる状態、というのが大前提だ。契約した時にも言ったと思うけど、僕達のこの契約なんて、他人ではないという関係を他の人間にも納得させるのが主目的で、あとはおまけみたいなものだ。だから、お互いの感情が離れている状態で、ただの契約にすがりついて君に執着するなんて事はしないよ」
     それは、僕の感情で君の自由を奪うのと同義だからね。
     ぱちぱち、とレムナンの白い睫毛が上下にまたたくのを、ラキオはまっすぐ見ていた。ちょっと不満げに形のいい唇をへの時に曲げて。やっぱり、この人は良い人だ。自分を対等に見てくれるこの瞳が、とても好きだ。自分達は他人ではない、一緒にいたいからいるのだ、ずっと前から。そうしていようと言ってくれるのに、やっぱり、浮気など、できるはずもない。
    「わかり、ました。でも……僕、浮気しないです、から」
     その思いを言葉に乗せれば、目の前の相手はからりと笑った。
    「ま、そうだろうね。君に僕と離れるような蛮勇があるとは思えないからね!」
    「そう、ですね」
    「うわっ」
     ラキオが驚いた声を上げたのは、レムナンの両腕に抱き寄せられたからだ。ぎゅうぎゅうとしがみつくように抱き締められるが、苦しさがないのはラキオの余裕のある文句からもわかる。
    「何? まさかこのままソファで寝るつもりじゃないだろうね」
    「ラキオさんも、しないで、くださいね、浮気」
    「あン? 僕がそんな不合理なことするわけないだろう。どこぞの政治家じゃあるまいし。大体、この生活が気に入ってるってさっき言ったの、もう忘れたのかな? ほら、その物事を忘れがちな頭をとっととシャワーで洗ってくることだ。じゃないと先に寝させてもらうよ。久々にベッドで広々と寝れるから僕はそれでも構わないけどね」
    「……ふふ」
     本格的に拗ねられてしまう前に、とは思うが、ちょっとだけ。レムナンはパートナーの胸元に少し熱くなった頬を擦り寄せた。
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    I__B_gno

    DOODLEいちゃついたレムラキが見たかったので書いたレムラキ ノマエン革命後 ざっくり書いただけなので後で手を入れるかも
    観察結果を発表します レムナンが目を開けると、自分が起床した瞬間に見るものとしては珍しい表情がそこにあった。相手はまだ寝ているようで、体をこちらに向け、長い睫毛は伏せられたまま、すうすうと寝息を立てている。ブラインドの隙間から入る光の角度を見るに、おそらく朝というにはやや遅い時刻、だろう。グリーゼの人工太陽はいつでも同じように周期を重ねている。
     昨日は何があったのだったか、とレムナンはまだ半分寝ている頭で記憶をたどる。どうも最近進めている研究が佳境らしく、きっと作業の手を止められなかった、のだろう。いつもは自分よりもかなり早く床についているのに、昨日は自分が寝室に赴くタイミングでやっと部屋から出てきて。うつらうつらと眼をこすりながらシャワー室に向かい、半分目を閉じた状態で寝室に入ってきて、まだ湯の温かさの残る体でベッドマットと毛布の隙間、自分のすぐ横に滑り込んで、完全に瞼を下ろした。「おやすみ」ぐらいは交したが、あの様子だとそれも覚えているだろうか。普段の生活リズムを守らないとパフォーマンスが落ちる、とは本人がよく言っているが、定刻になっても起きないのを見るとそれも納得できる話だった。きっと全裸で寝なかっただけマシなのだろう。こちらも、何もまとっていない状態の恋人の隣で寝るのは流石に気を使う。もっとも、疲れているところにあれこれするような趣味は自分にはない。ので、短い言葉のやりとりの後、そのまま自分も寝入って、今に至る。
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