紅い世界の夢を見るそれは、割といつもの事だ、突然、アゼムのなんで病が発動しただけである。
ありとあらゆる事を、彼はどうして、と聞きたがり、納得のいく答えをいつだって探している。
「草食動物は、肉食動物に捕食される時、恍惚とした顔をするって聞いたんだけど、どうしてなんだろ、自分が死んじゃうのに。」
ちなみに今日のなんで、はこれだった。
そう見えるのはあくまで人間の主観なのであり、故に真相を確かめる術はなく、どうしたものかと、ヒュトロダエウスは考えあぐねていた。
「うーん、今日のは難しいな。…ワタシ達人間も、嫌な事があれば現実逃避をするよね。それと一緒だと思うんだけど。」
「自らの死を悦びと誤認する事で正当化する…ってこと?」
「うん、そこまで難しい事を出来るかは分からないけど、でもその偽りの悦びが、顔に出てるなら…アゼムのいう恍惚とした顔、ていうのも納得出来ない?」
9493