心に仮面を被せて 魚を釣って戻ってきたシエルは、予想外の来客を前に棒立ちになった。
銀狼の許に押し掛け弟子入りを志願して数日、彼は眼前に業深き者を見出す。仮面Xを名乗るブレーダー――黒須エクスはこのとき、人目に触れる屋外にて素顔を晒していた。銀狼と何やら話し込んでいたところに出くわしシエルは呆然とする。来客はエクス以外にバードと侍姿の少女が居たが、少年は驚きのあまり二人を意識の外に追いやった。
シエルの脳にエクスのみが強烈に刻みつけられる。正体を隠しているはずの子供は理由は不明だが仮面を脱ぎ、眩い笑みを振り撒いていた。明るく無邪気な、悪意というものを持ち合わせていないと言いたげな表情だ。しかしシエルは黒須エクスが一人の人間を狂わせた事実を知っていた。
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