ワンライ『君の産まれた日』(2023/05/17) カチ、カチ、と時を刻む音だけが鳴り響く。
数時間前までそんな音には気づくことの出来ないような程に賑やかな空間にいたおかげか、湯に浸かり夕食を食べガレージへと戻ってきた今もどこか気分が浮ついていた。
本日の主役が見せてくれた笑顔を思い浮かべながら、もう少しだけ『今日』の余韻に浸るべくソファに横になる。
まるでその時を待っていたかのように振動した端末の画面を表示すると、そこには今まさに顔を思い浮かべていた彼の名前が浮かび上がっていた。
『この後セカイへ来てくれないか』という端的な内容が表示されていたため、断る理由もなく承諾の旨を送信すると『待っている』と返ってきた。
「すまないな、夜分遅くに」
「気にしないでくれ。他ならぬ司くんからのお誘いだからね」
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