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    pandatunamogu

    降新文をポイポイします

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    pandatunamogu

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    仔猫期間(幼少期)の甘えん坊でれーくんしゅきしゅきな猫しんちゃんのお話はここまで!
    れーくんがふるぬい作ってしんちゃんにプレゼントします。
    次からは思春期しんちゃん、ツンデレ期です✨

    ##降新
    ##人間×獣人

    さびしんぼ、あまえんぼ編    2.さびしんぼ、あまえんぼ


     猫の新一と暮らすようになって一ヶ月。好奇心旺盛で有り余る探究心の塊である新一は、随分言葉を覚えた。と言ってもまだ人間の年齢にするとまだ三歳〜五歳と幼いため、猫語と幼児語がミックスされたような言葉づかいになるのだが、それがまたとんでもなく可愛いので、是非ともしばらくの間はこの拙い日本語のままで居てくれと切に願う。
     猫というのは家につくと言われるが、新一は仔猫であることも手伝ってか、まるで犬のように甘えん坊で寂しがり屋だ。俺が学校に行く日は、仕方がないと分かっているので引き止めはしないものの、寂しそうに耳をヘニャリと寝かせて元気なく「にゃいにゃい」と玄関先で送り出してくれる。何とも寂しそうな表情が切なくて、俺はあるものを作ることを決意した。ちょっとどころではなく小っ恥ずかしいのだが、自分をデフォルメした小さなぬいぐるみを作ってやり、俺の匂いがする毛布や部屋着を置いておいてやれば、少しは寂しさも緩和されるんじゃないかと思ったからだ。
     だが、残念なことにあまり裁縫の才能がない俺は、恥を忍んで親友に相談することにした。

    「え? ぬいぐるみを作りたいけど何をどうすればいいか分からない?」
    「ああ」

     ある日の放課後、親友のヒロにそう相談をもちかけると、うーん、と考えた後、面倒見が良く手先も器用なヒロは二つ返事でOKしてくれた。帰りがけにホビーショップに連れて行ってもらい、ぬいぐるみに必要な材料を色々と教えて貰いながら買い揃え、そのままヒロの家で型紙起こしからスタートした。
     六時過ぎに帰宅すると、寂しがりの新一は半べそをかきながら玄関に飛んでくる。たまに猫の姿に戻っていることもあるが、今日は人型のままだった。

    「れしゃん! おかえにゃ!」
    「ああ、ただいま。遅くなってごめんな。寂しかったか?」

     ひょいと抱き上げてやれば、まるで自分の匂いを俺に付けようとするかのように頭や体を擦り付けてくる。破壊的に可愛い。きっと本能でそうしているんだろう。グスグスと鼻を鳴らしながら「ちゃみちぃ……」と連呼する新一を三十分ほど構い倒して甘やかしてやれば、あまりに嬉しかったのか完全な猫に戻って俺の膝の上でひっくり返ってお腹を見せてくる。絶対的な信頼の表れだろう。
     そのフニフニもふもふとした腹を見せられると、どうしても本能に抗えず、その腹に顔を思い切り埋め、存分に猫吸いを堪能した。肌に当たるフワフワとした毛並みの心地良さに思わず顔を擦り付けて堪能していると、不意にポンッと人型に戻り、幼児の腹に顔を擦り付けてスーハーする危ない男の図になってしまった。

     夕飯を食べさせてから早速型おこしをしたぬいぐるみをパーツごとに切り揃え、ヒロの教えどおりに縫い合わせていく。集中してやっていたらいつの間にか十時を回っており、いつの間に居たのか、気づくと新一が猫の姿で俺の膝に乗り上げ、丸まって眠っていた。せめてキリのいい所までやってしまいたくて十時半までひたすら縫っていたら、ずしっと膝の上の重みが増して、人型になった新一がムニムニと目を擦りながら俺を見上げると、クンクンとスウェットの裾を引っ張ってくる。

    「ん? どうした?」
    「れしゃ、ねんね、しよ?」
    「ああ、もうちょっと待ってくれないか? それとも先に寝てるか?」
    「んにゃ。れしゃんとねんね、しゅゆ。しんにゃ、まちゅ」
    「ゔ……っ」

     頼むからいちいち可愛いことを言うのをやめて頂きたい。もう今日はここまでだと裁縫をやめて、新一の歯を磨いて寝支度を整えると、そのまま抱っこをして布団に連れていく。布団に潜り込むと、グリグリと俺の胸に顔を擦り付けてくる新一の頭を撫でやりながら、明日は早めに起きてなるべく早めに仕上げてしまおうと考えながら目を閉じた。

     翌日。しっかりと俺にしがみつくようにして長いしっぽも俺の体に巻き付けてぷぅぷぅと眠る新一を布団に残して起き上がると、早めの朝食を済ませてからぬいぐるみ作成の作業を再開させた。今日は土曜日なので好きなだけ新一を構ってやれるし、ぬいぐるみも作れる。
     小一時間ほどすると背後からぎゅうぎゅうと抱きしめられて、子ども体温の新一が起き出してきたことを知ると、そのまま膝に乗せてやる。

    「おはよう、しんいち」
    「んにゃ。おはよ。れしゃ、なにしてぅにゃ?」
    「ああ、出来てからのお楽しみだよ。それより今日と明日は学校休みだからずっと一緒に居られるぞ」
    「んにゃ! いっしょ!? れしゃんとしんにゃ、いっしょ?」
    「ああ。今日と明日はいっしょだ」
    「ンなぁ」

     心底嬉しそうに鳴いて体を擦りつけてくる新一の頭を撫で、そう言えばそろそろ食材を買い足さないと心許ないことを思い出した。

    「昼ごはん食べたら、いっしょに買い物行くか?」
    「! しんにゃ、おしょと?」
    「ああ。俺と一緒なら大丈夫だから。行ってみる?」
    「いくっ! れしゃんとおしょと、いく!」
    「ははっ。分かった分かった。分かったからちょっと落ち着けって。ははっ、こら、そんな顔舐めんなって、痛い痛い」

     ザリザリとした猫の舌で舐められてヒリヒリする頬を押さえながら笑うと、ぺろぺろと舐めるのは止めたが、それでも喜びを表現したくて堪らないのだろう。グリグリと頭を俺の胸に押し付け、可愛い鳴き声をひっきりなしにあげている。うん。間違いなくウチの猫がいちばんかわいい。

     昼食前までひたすら縫っていたお陰で、後は顔と胴体部分を縫合する作業だけになった。残りは今夜にでも済ませて、今からの時間は目いっぱい新一と遊ぼうと作業をやめた。
     昼食を済ませてから新一に黒い猫耳がついたパーカーを着せて、チャコールグレーのハーフパンツと黒靴下に猫の肉球が刺繍されたものを履かせ、靴も猫の足の形をしたブーツを履かせた。これならば黒く長いしっぽが出ていても、不審には思われないだろう。猫耳のパーカーを頭から被せ、はぐれてしまわないように白猫のぬいぐるみ型のハーネスを背負わせて買い出しと散歩のために外に出た。
     今まで人型で外に出たことがないのか、見るもの全てが新鮮に映るのだろう。あの、ただでさえキラキラとして青く美しい双眸を更に五割増でキラキラとさせてあちこちを見回し、物珍しいものがあるたびに、繋いだ俺の手をクンクンと引っ張って「れしゃん! ありぇ、ありぇ! しゅごいねぇ! くるくる、しゅんごいねぇ!」と理容室のサインポールを指さしながら訴えてくるのが可愛くて可愛くてたまらない。

    「うん。あれはな、サインポールって言うんだ。床屋さんの印だな」
    「とこやしゃ?」
    「そう。髪切るところ」
    「かみ? ふぅん。ん? ん? いいにおい! れしゃ! いいにおいにゃ!」
    「ああ、パン屋の前だから焼きたてパンの匂いしてるんだろうな。いい匂いだな」

     終始こんな調子の新一は見た目には猫のコスプレをしている幼児だ。通行人が皆ニコニコとしながら、口々に「あの子かわいい」「美形兄弟!」「カワイイーっ。黒猫さんのコスかな? ところどころにゃって言ってて可愛すぎん?」と新一を褒めてくるので、こちらとしても親バカながら当然悪い気がしない。もっと見てくれ、ウチの子可愛いだろう? と思い切り全世界に向かってドヤ顔したいぐらい誇らしかった。
     目的地のスーパーでも、新一はそれはそれは可愛かった。特に魚コーナーに差し掛かってからの新一の目の輝きと興奮は凄まじく、キラキラとした眼差しに負けて立派なアジを大量に買ってしまった。
     家に帰りついてから食材をしまう作業をしていると、ポテポテとやってきた新一も手伝ってくれた。
     あまり口には出さないものの、やはり学校やバイトに行っている間は寂しくて堪らなかったのだろう。土日まるまる一緒に居て構い倒してやると、ニィニィと寂しそうに鳴くことが無くなっていた。
     日曜の夜に新一を先に寝かせてから布団から抜け出し、明け方までひたすらぬいぐるみの作成を続けた甲斐あって、新一が起き出してきた頃には俺を模したぬいぐるみができあがっていた。

    「んに? れしゃ?」

     ムニムニと目を擦りながらやってきた新一の面前に、ぬっとぬいぐるみを差し出してやると、パチパチと瞬きをしたあと、見る見るうちにその目は輝き始めた。

    「んにゃ!? れしゃ! れしゃっ! れしゃんの、ぬい?」
    「ああ。俺が学校行ったりバイト行ってる間、いつも新一ひとりぼっちで寂しいだろ? だから寂しくないようにな。それと、ほらコレ」

     ぬいぐるみを持たせてから、俺が普段使っている柔らかい毛布でそっと包んでやると、ふにゃぁ……と嬉しそうに破顔した。何だこの世界一可愛い子。もう一生離さない。
     新一は嬉しそうに俺のぬいぐるみをぎゅむぎゅむと抱きしめて顔をスリスリとぬいぐるみに擦り付け、俺の匂いが染み付いた毛布をきゅっと掴むとへにゃへにゃと笑った。

    「れしゃ、れしゃっ! あーとっ! ありあとにゃ! しんにゃ、れーぬいと、いいこいいこしてゅ! いいこいいこして、れーしゃかえってくゅの、まってぅね!」
    「ああ。気に入ってくれて何より。なるべく早く帰ってくるから。また休みの日に散歩行こうな」
    「んにゃ! おしゃんぽ、いく!」
    「ははっ。土曜になったらな」

     ぴょんぴょんと軽やかにその場で飛び上がって喜ぶ新一に朝食を食べさせ、朝の支度を整えてから玄関先まで見送ってくれる今日の新一は、しっかりと左手でぬいぐるみを抱きしめ、右手に毛布を引きずって「にゃいにゃい」と笑顔で送ってくれた。

     学校とバイトを終えて帰宅すると、いつもならば泣きべそをかいて飛んでくる塊が今日はいない。一体どうしたのかと部屋に上がると、布団の上でこっぽりと俺の匂いが染み付いた毛布に包まり、その両手でぎゅうぎゅうとぬいぐるみを抱きしめてぷぅぷぅと眠る新一がいた。

    「はは。良かった。少しは寂しさも紛れたかな?」

     そう思ったのも束の間、俺はバッチリと見てしまった。その目に溜まった涙のつぶを。やっぱり寂しいのには変わりがないのだなと、そっと指先で溜まった涙を拭い、その猫耳にそっと囁いた。

    「ただいま、しんいち。今日もいい子でおるすばんできて、エラいぞ」

     すると、寝ながらも俺の囁きが聞き取れたのか、ふにゃ……と破顔して「れしゃん、らいちゅき……」と最高に可愛い寝言を漏らすので、その場で声を殺して悶絶したのは、ナイショだ。



        さびしんぼ、あまえんぼ・完

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