入学直後1年春五 五津河久にとって春日井光孝は光そのものだった。
はじめは光孝の大きな声やにこやかな表情に敵意すら覚えて敬遠していたのに、気がつけばこの6年間ずっと寄り添って生きてきた。
同室の絆、と同じ年の先輩たちは言うけど、河久にとっての光孝は「同室だから特別な友達」という訳ではない。河久は接点があるからと他人に容易に気を許すタイプではないからだ。
それなのにどうしてこんなにも光孝を心地よいと感じるのだろう。それは賢い河久にもよく分からない事柄の一つだった。
思えば入学当初から光孝と密に接している訳ではなかった。それこそ最初なんて本当にただのクラスメイト兼同室の男でしかなくて、互いに文句を言いあっていたような記憶もある。その理由はほとんど身一つで入学した光孝に対して、河久が大量の書物と共にやってきたからだ。しばらくはその山積みの紙束に光孝が眉をひそめていたので、河久は早々に部屋の一辺を埋め尽くすサイズの棚を購入し、部屋に持ち込んだ。その後が問題だった。
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