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    zamaaaho4

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    zamaaaho4

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    小渋巫律の断片的なやつ

     

     「あったか〜い」を求めてわざわざ自販機まで来たものの、世は未だ「つめた〜い」らしい。
     涼やかな飲み物のサンプルが整列する様にはっと短く息を吐き、小渋は寒さで粟立つ腕を摩った。

     ファッキンコールド、本日雨天なり。

     燦々と照る太陽は昨日までこの世の生き物全てを焼き殺そうとしていただろうに、日を跨いだ途端気が変わったのか顔ひとつ見せやしない。
     まだ秋だ。いけるだろうと身に纏った薄手のシャツとベストは雨に濡れ、お気持ち程度の温かみしか提供してくれなかった。

    (……いや、これはたまたま今日、着てっちゃっただけだし。別に季節感が無いわけじゃない)
     特に誰から責められたわけでもないのに、頭の中で言い訳をする精神。
     かじかむ指先でポケットに突っ込み、中をまさぐってみる。熱い煙で肺を満たして、暖を取ろうという算段だ。
     青いパッケージから一本を引き抜いて、薄い唇でそれを咥える。
     そういえばこの頃、ようやくヤニを吸っていても視線を気にすることがなくなった。
     というのも、巫律はどうにも顔も薄っぺらなつくりをしているようで。垢抜けなく、背だってあまり高くないものだから、よく訝しげに見られたのだった。いやまぁ、見られていると思い込んでいたのかもしれないが。この自意識過剰め。どうせ誰も見ちゃいないぞ。
     脳内で咎める陰険な声たちに眉根を寄せつつ、ライターを手に取り、火を灯す。
    「ん?」
     冷えた指先で着火レバーを何度かカチカチ押すものの、安物のそれは火花を散らして弱々しく煙を吐くだけだった。

    「はぁ……」

     百円ライター、お前もか。

    ────────────────────────


    神代はこうやってよく人を褒めるんだろう。
     そうだとしても、なんだか騙しているみたいで申し訳ない気持ちになる。巫律は神代が言うほど良いやつでは全くないのだ。
     怠惰で、心底恥ずかしいやつなのだ。
     早く死んでしまいたい、いやウソ。
     死ぬなんて大層なことできやしない。
     ことあるごとによぎる希死念慮の軽口は、心の中で留めておこう。かすり傷だけで泣き出すような弱い人間だと思われたくない、そんなこと口に出したら生きてて申し訳ない。
     いや、むしろ言わせてしまっているのか?気を遣わせている?
     ありえるありえる。だって、小渋は空気が読めない。中途半端に読めているつもりだからこそ、余計苦しい。自分が話した直後に会話が途切れるLINEとか、自分が口を挟むことでテンポが悪くなる会話とか。身に覚えのある証拠の記憶たちが一斉に起き上がり、シナプスを駆け巡ってぞろぞろと成立し始めた。


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    recommended works

    和花🌼

    DONE夏祭りワードパレットを使用したリクエスト
    7 原作
    ・帰り道
    ・歩調を落として
    ・特別
    ・あっという間
    ・忘れられない

    暑苦しいほど仲良しな二人を楽しんでいただけたら嬉しいです。
    夏祭り 7(原作) 夏祭りといえば浴衣を着て、友人や家族、それに恋人なんかと団扇で顔を仰ぎつつ、露店を横目で見ながら、そぞろ歩きするのが醍醐味というものだ。それに花火も加われば、もう言うことはない。
     だが、それは祭りに客として参加している場合は、である。
     出店の営業を終え、銀時が借りてきたライトバンを運転して依頼主のところに売り上げ金や余った品を届け、やっと三人揃って万事屋の玄関先に辿り着いた時には、神楽はもう半分寝ていたし、新八も玄関の上がり框の段差分も足を上げたくないといった様子で神楽の隣に突っ伏した。そんな二人に「せめて部屋に入んな」と声をかけた銀時の声にも疲れが滲む。暑いなか、ずっと外にいたのだ。それだけでも疲れるというのに、出店していた位置が良かったのか、今日は客が絶え間なく訪れ、目がまわるような忙しさだった。実際のところ、目が回るような感覚になったのは、暑さと疲労のせいだったのだが、そんな事を冷静に考えている暇もなかった。
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