うさぎの日「うさぎって寂しいと死んじゃうって、知ってる?」
今日はたまたま終わりが一緒で、帰宅するなり、真斗は一直線で家事をこなし始めた。今は洗濯物を畳んでいる。もちろんありがたいのだが、今を時めくアイドルにとって、一緒にいられる時間は貴重なのだ。洗濯物くらい放置してもいいのではないかと思う。
そんな真斗を背後から抱きしめて囁くと、手が止まった。
「あ、ああ……聞いたことがあるな」
「あれ、ウソなんだって」
真斗が首を傾げる。頭の上にクエスチョンマークが見えそうだ。
「そうなのか。だが、それがどうしたのだ。邪魔をするでない。ほら神宮寺、お前も畳め」
しっしっ、とレンを払うように手を振る。その素っ気ない仕打ちに、思わずレンの口元がへの字に歪んだ。
「でも、オレは寂しいと死んじゃうかも」
「!?」
そう言って、かぷりと耳たぶに齧り付くと、真斗の頸から耳まで真っ赤に染まる。
「しっ、死ぬわけがあるか!」
「なんで? なんでわかるの? 聖川はいいの? オレをほっといて、オレが寂しくて死んじゃっても」
「……よくはないが、下らないことを言うでない。手伝わぬのなら、先に風呂に入れ」
再びせっせと洗濯物を畳み始める真斗に、レンは「つれないなぁ」とため息を吐いた。
「俺とて……」
「なに?」
「俺とて、一刻も早く二人の時間を作るために急いでこなしているのだ」
「……!」
真っ赤なままの、真斗の言葉。
レンは背中から離れて向き合うと、洗濯物を手に取った。
「そういうことなら、さっさと終わらせてしまおう」
「まったく、調子のいい」
「終わったら、まずは一緒にお風呂から入ろうね」