スレッタとエランの呪いと祝福1. 4号の独白
どうせ明日死ぬのだ。身軽な方がいい。最大の荷物は大きな心残りだったが、なんとかそれを置いて行けるよう、4号は寮の自室から既に暗くなった窓の外を眺めつつ、静かに何かを描き始めた。
***
名も無い僕から君に届くことは無い手紙。
君に出会って、僕の隣に深淵が現れたと重った。
深淵を覗き込めば、深淵もまたこちらを覗き込んでいる、とはよく言った言葉だと思った。
僕には何も無かったんだ。
名前も、過去も未来も、何一つ。
社会的に存在すらしていない。
僕の人生に価値なんて無い。
学園に初めて来た日、ここにいるのはエランケレスであって僕ではない、僕は存在していない、そう実感した。
その時から僕は自分が死ぬまで透明人間として呪われたんだと自覚した。
12154