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    ようよう

    @Zanzou_mdr

    翠千の表に載っけづらいやつや他cp(あれば)、後は進捗とかたまに

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    これは途中
    高峯が守沢のストーカーする話

     出会いは最悪と言っても過言ではなかったけど、少し気になってしまったんだ。こんなウザくて眩しい人が俺なんかを気にする理由を。

    本当にそれだけなんだ。

    「そこの身長のでかい君!今日からバスケ部としてよろしく!」
    「高峯!お前にはヒーローの素質がある!流星隊に入らないか?」
     なんて拒否権すら渡されない強い言葉で勝手に人生を決めてきた邪魔な人。あの人の弱みを握って脅してやろうかと企ててからは行動が早かった。同じクラスの鉄虎くんや同じ流星隊の仙石くんとかにも協力してもらって、あらゆる手段を使った。それなのに成果は何ひとつで、まるでアレには非の打ち所が無いと思っても可笑しくないほど真っ白だった。
     俺だってゆるキャラに時間を割きたいのに、好きでもない寧ろ嫌いな先輩のことをずっと考えなければいけない。

     誰もそうしろなんて言ってないのに変な話だけど。

    それからというもの先輩の揚げ足を取りたいがためだけに情報収集をしたり、先輩に盗聴器付きのゆるキャラのストラップをあげてみた。

    「先輩って家でもうるさいのかな…もしそうなら近所迷惑だって訴えてやろうか……」
    そんなことを思いながら盗聴器の内容を確認する。だが、不思議なことに声は何も聞こえない、必要最低限の生活音と一定のスピードで捲られる本の音だけが響き渡っていた。
    「先輩って本読むんだ…?意外、メモしとこう」
    (何の本読むんだろう、ヒーローとはいっても先輩だって高校生なんだし……いや、まさか……どうやって調べよう)
     それからというもの、先輩の動向が気になるからとリスクはあるがこっそりあとをつけるようになった。先輩は今、図書館へ向かっている。だから俺も仙石くんから教わった忍術を参考にしながら尾行している。これは決してストーカーではない。だって、好きじゃないから。
    好きだから尾行するなんてそんな狂ったこと俺がしたら鬱で死にたくなる。それこそ勘弁して欲しい。

     図書館へ着いた先輩は迷わず文学作品のコーナーへ向かい、読み終えるのにざっと3日はかかるようなものを数個手に取り席へ座った。その後俺は見たこと無い先輩を見ることになる。
    「守沢先輩が眼鏡をかけてる……!?」
     驚いて良いのかわからないけど、眼鏡をかけて落ち着いた雰囲気の守沢先輩に動揺が隠せなかった。そして、もちろん先輩にはバレないようシャッター音をオフにして写真も撮った。こんな可愛い姿を他の人に見られたくない、そんな気持ちが心に募っていった。
    (あれ、なんのためにここへ来たんだっけ……?まぁ、良いものが見れたしまた来ようっと……♪)

     放課後、練習中に守沢先輩はよく自分の嬉しかったことを本当に嬉しそうに話す。聞いているこっちまで幸せになりそうなほどに。そんな幸せの物語の登場人物に俺がいなくてもいいけど、俺の幸せの主役はあんたであってほしいと思うようになったから、あんたをもっと知りたいと思った。そんなこと考えるから練習なんて頭に入るわけもなく……先輩の話、出来事をお気に入りのゆるキャラのメモ帳に書き留めては口角を少し上げていた。
     どうせなら先輩の姿を一時も逃すこと無く網膜に焼き付けたくて小型カメラを仕込んだヒーローのフィギュアを先輩にあげた。疑われはしないはず、強いて言うなら俺が急に優しくなったことを疑う気がするけど……。

     なんでここまでするのか自分でもわからないけど守沢先輩の筆跡すら見れることが嬉しい、あの人を感じられるものすべてが欲しい。いっそのこともう止まるつもりはなくて。

    「守沢先輩おはようございます、昨日はすごく楽しそうでしたけどそんなに俺から貰ったフィギュア嬉しかったんスか?」
    「おはよう!挨拶ができて偉いぞ高峯〜!……俺が喜んでいることをどうして分かったんだ?」
    「……あんたがあまりにも分かりやすく態度に出すからじゃないですか?」
     少し攻めた言動をしたって小型カメラや盗聴器を仕込んでいることなんて分かるわけがない。ましてや、晩御飯が同じだったり使ってる文房具を揃えてることなんて言ってもバレない。

     ここ数日、守沢先輩の行動を見るようになってから先輩のことほとんど理解できた気がする。もうすぐで理想の先輩が俺の中で完成する。そしたら、ふたりきりの世界になれる。誰にも邪魔されない理想郷。
    ゆるキャラで溢れてたはずの部屋の中は先輩の私物や写真だらけでどこを見ても阻むものはない。それなのに満たされない。だって、俺の家の中の守沢先輩達は過去の虚像だから。それどころか、今の守沢先輩を知っても過去の守沢先輩を何も知らない。

    「あんたが俺を見てくれないから偽物で満足してあげてるのに……」
    「好きだと気付いてもらうにはどうすればいいんだろう……?」

     え……今俺は好きって言った……?おかしい……あの人の弱みを握ろうと尾行してただけなのに眩しさにやられ、優しさに溺れていつの間にか好きになってしまった……?今までの行動って俺からしたら愛情表現の一種ってこと……?

     自分に正直に生きたっていいよね、なんて余計な感情が頭に浮かんでしまったけどそれを否定はしない、出来なかった。

     それから俺は先輩にGPSがついてるアプリをどうにか理由付けして入れさせて先輩の家を特定した。八百屋の息子という立場があるから、お世話になっているからお礼に野菜を渡すくらいのことは普通にできる。先輩のお母さんはお話が大好きで流星隊の話をすると守沢先輩が先輩をしている事実に喜んでいた。
     どうやら昔は俺が知っている守沢先輩ではないみたい、それだけで興奮しそうだった。先輩には悪いけど、そんな守沢先輩を見て色々したくなってしまう。

     「守沢先輩のこと理解してるのはこれからは俺だけで充分だよね」
     と一言置いて先輩の家を後にした。
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