涼 梅雨明けの空はどこまでも青くて、飛行機雲が長く残って空の上の湿気を表していた。
「くっそあっちぃなー」
「燐音君がそんなこと言うからもっと暑くなるっすー」
グルメ番組で南国ロケまではよかった、が、朝から気温は急上昇してすでに35度を超えて、とろけそう。自分たちが、普通に楽しい番組に出演できるわけがなく。
「だぁー秘密の食材って何なんだよ、どこにあるんだよ」
「地元の人にきいたらこの辺りにあるっている話なんっすけどね」
灼ける日差しを避けるように、ひっそりと自生する幻のハーブを求めて島中歩き回っているのだ。
ちなみに、年下2人はゲームで勝利したためリゾート満喫のご褒美なのだ。
「燐音君があんな賭けをするからー」
「あんくらいのことをしねぇと盛り上がらないだろ」
「盛り上がらなくてもいいっす、お腹すいて倒れそう」
「ニキ―死ぬな」
こちらはスタッフもつかず、ハンディカメラで互い撮りというやるせなさなのに。
グダグダいいながら歩く道すがら
スーッ
「あ、なんか涼しい風が」
「こっちみたいだな」
「あー燐音君おいていっちゃだめー」
花木に囲まれたそこは、しめ縄で仕切られて、明らかに聖地として区別された泉だった、冷たい水がコンコンと湧き、その岸辺に目的のものが揺れている。
「これは勝手に採れないっすね」
「だな」
管理人がいると思しき建物に声をかけ、別の場所から必要な分だけ譲ってもらうことができた。
「こちらもどうぞ」
空っぽになった水筒に湧水を分けてもらい、飲みながら帰る。
「こっちのほうがずっと贅沢ってかんじっすね」